異世界病、という言葉に惹かれて読み始めたお話です。
設定が深く作り込まれていて、文章もとても巧みで魅力的で、読んでいる内にどんどん話に没頭していきます。
サブタイトルも、読んだ後に見直してみるとなるほどと理解出来るようになっていたり、そういった所でも言葉の選び方が素敵だなと感じました。
キャラクターさん達も個性豊かな方が多いのですが、一面を知っただけではわからない、今まで生きてきた道筋やその想いの深さを、読んでいく内にゆっくりと知っていくのもとても魅力的に感じました。
絶望的で退廃的な世界の中でも、静かに前を向いて歩いていくような主人公達の行く末を、最後まで見守っていきたいと思えました。
是非一度読んでみて欲しい素敵なお話です。
異世界転生というものがある。現実世界への絶望か、それとも逃避か、人々はその衝動と願いのままに異世界を信じてその命を絶つ。その衝動は、異世界病と呼ばれた。
その異世界病が、生み出したものがある。
主人公は異世界病の蔓延する世界に絶望し、異世界への憧れなどではない理由で自ら死を選ぶ。
天使と、悪魔と、果たしてこれはファンタジーであるのか。ファンタジーであると信じる人々が作り上げたものではないのか。
この世界の真実はどこにあるのか、この謎には間違いなく引きずり込まれる。
読み進めていくほどに、この作品の重厚さと深さを知ることになるだろう。
灰を踏むとはどういうことか。異世界病者は何を作り上げてしまったのか。
ぜひご一読ください。
異世界病、ファンタジーに夢見た自殺衝動が生み出した『病気』
そんな『異常』が広がった現実世界、自ら死を選ぶことがとことん封じられたif世界。
はじまりは主人公、葛籠抜 芥が異世界病に溢れた現実世界に絶望し、死を選び飛ぶところからはじまる。
ただその死の間際、モノクロに染まる停止した時間の中で、芥は天使に出会う。
天使として現れた、かつて死んだ同級生との出会いこそが、芥を更なるファンタジーへと誘った。
異世界病に抗うため、再び生きることを選択した芥が連れていかれたのが、異世界病が作り出したという半界。
そこでは異世界を夢見た異世界病者、魔法使いを率いる悪魔陣営と天使陣営が戦いを繰り広げている。
戦う術を教えられ、刻景と呼ばれる生き残る術を利用して、仲間も得て、芥もまた戦いに身を投じることになる。
しかしそれもまた、一種のファンタジーでしかないのかもしれない。芥はその世界にある違和感、重大な秘密に気づいてしまうのだ。
たしかな重厚感、癖の強いキャラクター。
世界観に作り出された雰囲気が、灰を踏みしめる足跡をたしかに描いてくれる。
芥たちは何処へ向かうのか。異世界病とは、この世界は如何なるファンタジーであるのか。
まだまだ謎は深まる物語。真実――先を追いたくなる。オススメしたい!