第8話 2024年7月 文披月31題
2024年7月 文披月31題まとめ
7月の文披月のお題を毎日読んで下さってありがとうございました。
続きが気になるとか、もっと長めの小説で読んでみたい話などありましたら、お伝えいただくと励みになります。
(長編化の参考にしたいのでぜひXでもここでも気軽にどうぞ^^)
夕涼み
働きすぎがたたり、俺は体を壊し田舎に戻ってきた。田んぼしかない山の中だ。暑さで寝れず夕涼みをしたくてもコンビニすらない。しかたなくあぜ道で煙草を燻らし座り込む。つと目の前を蛍の小さな光が飛んでは消えてゆく。#twnovel どこにいたって何者であっても、世界は生きにくく出来ている。
喫茶店
はじめて来た町で急な大雨。とにかくどこかで雨宿りをしようと、私が飛び込んだのは店かどうかも疑わしいようなさびれた路地裏の喫茶店。小さくジャズが流れる薄暗い店内で痩身のメガネの店主が軽く会釈をする。 #twnovel メニューも見ずに頼んだ珈琲と共に差し出されたタオル。柔らかさが心にしみた。
飛ぶ
『飛ぶんだろ?お前の翼はお飾りか?』意地悪く挑発したのは運命の神。黒く硬い両翼そんな力はなかったが、答える義理はない。僕はいつか飛ぶ、仲間のために。そう心に決めている。ーFirst Penguin その日その瞬間、僕は氷壁を蹴り空を飛び、海を翔る。#twnovel 神にだって意気地なしとは言わせない。
アクアリウム
水泳部の君はいつも青いプールの中。銀の水飛沫を上げながら、体は太陽を浴び黄金に輝く。いつまでも泳ぎ続けるあなたは、まるでイルカのようね。ずっと見つめていたい。#twnovel フェンスの格子越しに眺める景色は私だけのアクアリウム。大輪のヒマワリは何も語らず、静かに揺れて微笑んだ。
琥珀糖
君は嘘という白い結晶を身に纏い、冷たい氷の令嬢のフリをする。貴族の社交は美しさだけでは戦えない。ずる賢さという武器を持たない君は、偽ることで必死に身を守ってるんだね。#twnovel ああなんて愛しい悪役令嬢。涼やかで甘い琥珀糖のようだ。このまま密やかにシャリリと僕の物にしてしまおうか?
呼吸
僕は息を止めてみた。僕が消えたら、世界は失くなるかもしれないし、戦争も終わるかもしれない。だって人間の命は地球よりも重いんでしょ?#twnovel 幼い頃に呼吸を止めても世界は変わらなかった。今や僕も兵士だ。胸に空いた穴から、青い血液が流れる。ああ人間のまがい物の僕だからダメだったのか?
ラブレター
大人になれなかった僕は安定した未来を描くことができず君から逃げ出した。世界を自由に飛びまわる仕事がしたかった。#twnovel なのになぜ?すべてを手にしたと思ったとき、その喜びを分かち合いたい君は隣にいなかった。今更だけど異国の風景写真をラブレターにし、君への想いを託すよ。I love you
雷雨
夏期講習の帰り道に突然の雷雨。髪も服も靴の中までぐずぶぬれだ。風邪をひいたら受験に支障が出る?はっ?もうここまで濡れたらそんなの運次第だろ?#twnovel 僕は水溜まりに飛び込み駆け出す。なぜか大声で笑ってしまう。将来のことを心配するのは大人のすることだ。僕はまだ子供でいたいんだ。
ぱちぱち
冷えたグラスにはキラキラの雫。戴く冠はバニラアイスと赤いサクランボ。中ではエメラルドグリーンのソーダ水がぱちぱちと弾け小さな声で夏を賛美する。#twnovel 私はそれをカランとかき混ぜ一人で乾杯。大人には夏休みなんてないけれど、蝉時雨にもプールにも負けない。夏の楽しみがここにある。
散った
君に駆け寄ろうと僕は転んだ。手にあった水風船は弾け散った。もう水跡しか残ってない。僕は情けなくて泣いてしまう。#twnovel 「ほらこれをあげるから泣かないで」お姉さんのように言う君。違うんだ。欲しかったんじゃなくてあげたかったんだ。今はもうない僕の水風船が、君の好きな色だったから。
錬金術
私は偉大な錬金術士。私にかかれば石ころだって金に変わるわ。だからあなたの願いをなんでも叶えてあげる。あめ玉を宝石に、路地裏の物乞いを傾国の美女に、氷の王子の心を恋で熱く燃やすことだって私にはできるわ。#twnovel さあ私の恩人のお嬢さん。あなたの願いはなぁに?
チョコミント
チョコレートは好きじゃない。甘やかすだけ甘やかし、私を虜にした挙げ句あっという間に口の中で溶けて消えてしまう。何て罪深いのでしょう。チョコミントはもっと嫌い。チョコのフリをして近づいて、甘く冷たく私をゆさぶり溺れさせる。#twnovel そして私はズルいあなたのその味を何度でも確めたい。
定規
揺れるポニーテール。背中に定規でも入っているのかと思うほどピッと伸ばした背。そんなまぶしい君をいつも追いかけてた幼馴染みの僕。気がつけば僕は君より大きくなった。#twnovel けれど、まだ追い越せたとは思えないんだ。僕がつまずき立ち止まるとき、手を引いてくれるのは、いつだって君だから。
ささやかな
最近不運が続いてるですって?どんな?トイレットペーパーが切れてた。飲みたいコーヒー缶が売り切れてた。なにもないところでつまずいた。靴に中に小石が入ってた。ふうん偶然でしょ。#twnovel私はとぼけてニヤッと嗤う。気付かないなんてホント馬鹿ね。これは私のささやかな復讐にすぎないの。
さやかな
暑い夏の日。級友と近くの山に探検に行った。ケンちゃんがおいしい湧水の場所を教えてくれると言う。汗をぬぐいながら山を登るとこんこんと水が湧いている場所にたどり着く。#twnovel 転校してきたばかりの僕に秘密の場所を教えるのは仲間の証らしい。冷たい水を飲むと体にさやかな調べが広がった。
岬
岬の先に船が見えた。鮮やかな大漁旗はバサバサと風をはらみひるがえる。誇らしいのは漁師だけではない。その船を迎える港もまた喜びにワッと湧く。#twnovel 旗が示すとおり、身の肥えた活きのいい魚が次々に水揚げされる。けれどそれよりも、大漁旗を見てうれしいのは家族の無事の証だからだ。
窓越し
俺は大会前に膝を壊し入院した。本当なら今ごろコートを駆け回りシュートを決めていたはずだ。『来年は一緒に大会に出よう!』と励ますチームメイトに空元気で「おう」と返す。けれどまた走れるようになるのか?#twnovel 病室の窓越しに花火が上った。束の間でもいい俺はもう一度コートに戻るんだ!
半年
息を切らして教室飛び込む男子に、眼鏡の委員長(男)が水を差し出す。「ぷは生き返る」「お前は世話が焼けるな」汗がきらめき火照る頬。それを見つめる眼鏡の奥の目線も熱い。…半年後に恋人になる2人である。#twnovel なんて展開ないかなぁ?と隣の席の腐女子の私はムフフと妄想して楽しんでいる。
蚊取り線香
電車を乗り継ぎ山奥にたどり着く。喧騒のない場所へ行きたかった。目を閉じても耳をふさいでも、僕を責めるような声ばかり聞えたから…。#twnovel 『こんなところで何してんだべ?熊が出っぞい?』蚊取り線香を腰にぶら下げた爺さんに声をかけられ妙にホッとする。ああ、僕は人恋しかったのか。
トマト
ピザにパスタ、ラタトゥイユ。トマト料理は大好物だ。けれど競争社会の中、孤独な俺はもう何を食べても美味しいと感じない。#twnovel 田舎に帰った先輩が農業を始めた。遊びに行って驚く。「トマトは赤いのに花は黄色いんですね…」『お前に食べさせてやりたかった』日焼けした先輩の言葉に涙が出た。
摩天楼
魔天楼と言うのは空までそびえる建物の事だ。しかし目前にあるのどうだ?その先端は地中の闇に吸い込まれるように伸び、終わりが見えない。人工の構造物。摩『核』楼だ。その先端は本当に地球の地殻まで届いているのか……。#twnovel 君は知りたいのか?やめておいた方がいい。私は知りたくなかった。
自由研究
僕の自由研究は『灼熱化とヒト』だよ。耐熱シャトルで郊外学習に行ったときにおもしろそうだと思ってね。地上の廃墟ビル群から、砂塵がブワァと巻きあががって青い太陽が沈むのは本当に神秘的だったよ。地上向きに適化改造すれば良かったのにね。#twnovel 地下の闇でも見える金の目の少年は思った。
雨女
雨女を見たことがあるかい?女と言うよりあれは幼女だよ。タチアオイの花の赤いレインコート。ツインテールはキラキラの雨の雫のヘアクリップでとめている。それでいて無邪気にレタスを振ってカタツムリを乗り回しているんだ。梅雨にアジサイの葉の上によくいるから、目を凝らして見るといい。#twnovel
ストロー
ふうとストローを吹く。虹色のシャボン玉が次々にあらわれ空に上がる。「きれいだなぁ…」私は何も考えずにひたすらにシャボン玉を作り続ける。童心に戻り少し楽しい。#twnovel ため息をつきたいとき、私はこうしてベランダでシャボン玉製造機になる。嫌な気持ちは虹色に変わり遥か彼方へ消えてゆく。
朝凪
ブルーモーメント。蒼い静寂の後に朝日が昇る。その音をあなたは聞いたことはありますか?規則正しく力強い。揺るぎなく真っ直ぐに駆ける足音。それは私にいつも勇気と喜びを与えてくれる。#twnovel 朝凪の中、走る君は太陽のように眩しくて。手に入らなくても構わない。ただずっと眺めていたいの。
カラカラ
植物はいつも枯らしてしまう。水をやりすぎれば根腐れしやらなければ干上がってしまう。ちょうどいいができない私。#twnovel 脇目も振らずパソコンに向かっていると頬にミネラルウォーターをくっつけられる。「ひや!?」『根詰めすぎ休憩しろよ』カラカラに喉が渇いた私を見守ってくれる人がいた。
深夜二時
悪夢で目が覚める深夜二時。体は冷や汗でべたついていて気持ちが悪い。地震で押し潰される。化け物に追いかけられる。大事な人を失う…。不安は尽きない。#twnovel 『ただの夢よ。大丈夫』そうなだめくれた母はもういない。私は両肩をギュッと抱き闇に耐える。そうして大人になるんだと言い聞かせて。
鉱物
「わあ、この宝石くれるの?大切にするね!」宝石なんかじゃない。河原にあるちょっとキレイな何かの鉱物だ。そんなものしかあげられなかったのに、君は笑顔で淡い緑の石を受け取ってくれたね。#twnovel 転校した君はまだあの石を持っているだろうか?僕は君がくれた白い石をお守りにしているよ。
ヘッドフォン
雑音が多くて頭がごちゃごちゃする。毎日毎日、都会の生活は不快だった。家に帰っても上司の怒声や同僚の蔑みの声が耳について離れない。TVをつけても、ヘッドフォンをしてもそれは消えなかった。ある日、僕は通勤と逆に電車に乗った。#twnovel 海についたらすべて消え、波の音しか聞こえなかった。
焦がす
眠れ乙女は恋に焦がれ、眠れぬ社畜は夜な夜なパンケーキを焼く。鍋奉行ならぬパンケーキ奉行見参!生焼け、まるコゲ許さない。目を凝らしてひっくり返せば、正義の色はキツネ色。#twnovel もりもり生クリームに、はちみつをたらり。ナッツを散らせば出来上がり。パクリ!「うん。私、転職しよう!」
色相
色相なんて気にしない。パレットを広げればごちゃごちゃに絵具が駆け回ってる。まるでここはグラウンド。赤に青に緑色。好きな色を遊ばせて、あたしはあたしだけの絵を描く。#twnovel 整然としてない。枠なんて飛び越え汚れまくってる。でもそれでいい。あたしの絵は自由からしか生まれないんだから。
またね
またねと会う約束をしなくても、学校へ行けば毎日会えるのが当たり前だった。なのに君は転校してしまって、もういない。「君がいないと寂しいよ…」沈む夕日にそうつぶやいても返事はない。#twnovel しばらくすると淡い桜色の手紙が届いた。『夏休みに会いに行くよ』ああ僕の気持ちは届いてたんだね。
【140字小説】君の瞬きの音 天城らん @amagi_ran
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