第4話

「足裏には、健康な身体で 長生きをする秘訣があるッ!」

そういったのは、深夜の通販番組だったか?


「筋活よりも 足つぼッ!」

といったのは、どのYouTuberだったか?


俺は研究機関への転職を控え、毎日 “健康歩道” の上を歩き続けていた。

1日『10分』から『100分』へと

次第に活用する時間が増えていった。


「すると、どうでしょう………

 あれだけ薄かった髪の毛が、生えてきた では ありませんか」



鬼感激的! 笑ってこらえて ビフォー アフターッ!



驚くことに、握力も

35㌔から80㌔へと変化したではありませんか!


足つぼに刺激をおくるだけで、ここまで変わるモノでしょうか?

そうです。

50歳を過ぎて、ついに転生得点をゲットしたのです!

などと、前世で お世話になったテレビ番組ふうに ナレーターをしてみたが、虚しいだけだった。世界の終わりが、すぐそこまで迫っていた。


魔術都市 エーヴェル。


ここの研究機関への就職が決まっていたのだが、勝ち組になる前に、この星そのものが負け組入りをしてしまえば、なんの意味があるだろう?


いま俺が、本気で氷結魔法を使えば「北極」ほどの大きさの「氷の塊」を作ることが可能だろう。だが、宇宙空間には酸素がない。

つまりは、永遠には生きていけないのだ。


 ◇



そこで、俺は研究機関のお偉いさんに提案をしてみた。


「ご提案いたします!」

「君、無礼であろう?」


突然の訪問に、誰しもが驚いていたが構うものか。


「氷の塊を飛ばして、隕石を粉砕できたら ここの所長にしてください!」

「君の名は?」


お偉いさんの中でも、特に偉そうな サングラスを掛けたオッサンがきいてきた。


「忘れました!」


「ふっ。若いな。 良かろう。やってみたまえ。

 だが出来なかったときは、どうなるか 覚悟しておきたまえ」


直立不動の側近が、俺をにらむ。

同じくらいの年齢だろうか? ロマンスグレーの髪が似合う顔だな。

だが、俺のは黒髪だ!

悪いな。これも、毎日の “健康歩道” の賜物なんだよ。


俺が ニヤリと笑うと、その場にいたお偉いさん方からドヨメキが起きた。

良し。


「まずは、UFOの作り方を説明しよう―――」


「UFO? なんだそれは?」

「極大魔法か?!」

「ドラゴンか?!」

「まさか、生け贄が必要な黒魔術か?!」

「そうか、魔王だ! 魔王を蘇らせる気なのだな!」


などなど、様々な意見を頂きつつも、俺はUFOについて説明をした。

正式名称--未確認飛行物体--。


本来であれば、丸っこい円盤型なのだが、

「こんなもの飛ぶわけがねぇ…」


そこで、未来型の軽自動車を提案した。

もちろん、タイヤはオミット省略させていただきます。


( ぜったいに、不要だからな )


フロントは、風の抵抗を意識した流線形。

後部座席には燃料である 水素 を設置する。


カタパルトは、氷結魔法で作ればいいや。

そんなことを提案したら、サングラスのお偉いさんが、こう言った。


「発射台くらいは、研究員で作らせてくれ。

 君ひとりに、名誉も 名声も 独り占めされては困るからな」


「そうだな。それに、角度がズレると 明後日の方向に 飛んで行ってしまうからな」

「違いない」



はははははッ!! と 研究員たちは 笑いあった。


こうして、和気あいあいと

この星を救う準備を進めていったのである。



隕石衝突まで、あと『3日』!!!



  ◇

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る