エピソード5.花に詠う


先頭を歩く傑、足を怪我して膝をつく


藤「主様!大丈夫ですか!?…足が!」


藤宮、竜胆、駆け寄る


藤「主様/


/美「皆さーん!!!」


も「助けに来たわよ!!」


藤「木五倍子様…もあ様…片栗様まで…」


傑「みんな…?なぜ…」


美「なぜって、助けに来たんですよ!!私、まだ貴方に謝ってない…貴方と仲直りしないままお別れなんて嫌ですから!!」


藤「皆さん、どうやってここへ…?」


美「傑さんにGP/


美晴を押し退けて

/も「何がとは言わないけどいろいろ駆使したのよ!何がとは言わないけど!!」


美「もあちゃ/


/も「何言おうとしてるのよ馬鹿なんじゃないの…!?」


美「ひぇ…ご、ごめん…」


舞「さぁ、詳しいことはまた後でにして。帰ろう、六人で」


藤「で、ですが脱出方法なんて…」


舞「これを使えば帰れるから安心してくれていいよ」


傑「魔法具…?まだ、持ってたのか…」


舞「うん。まだ使えるのが残ってたんだ。…さ、早く」


藤「主様、行きましょう」


傑、歩き出そうとしない。


藤「主様、どうされました…?」


傑「行きなさい」


傑、皆がいる方へと藤宮と竜胆の背中を押す


藤「え」


傑「戻ったら屋敷を頼むよ。…紗希クン、キミのいれる紅茶はとても美味しいから、ぜひ美晴クンや舞宙にも振る舞ってやってくれ。ティーパーティーを開いてもいい」


藤「主様/


/傑「ほのかクン、キミが育てた花はとても美しいよ。それを見るのが、ボクだけじゃもったいなかった。これからは屋敷を出入り自由の花園にして、客を呼んだっていい」


竜胆、うつむいてスカートを握る


傑「二人とも掃除が丁寧で、屋敷の隅から隅までいつも綺麗だったね。ありがとう。お金は好きに使っていいから、これからは好きなことをしていい。自分の思うままに、誰にも縛られずに」


藤「主様、どうしてそのようなことを…」


も「そうですよ!スグル様は今からもあたちと一緒に帰るのに!」


美「傑さん…どうして…」


傑「どうしてって…もしボクが生きていることがバレたらどうする?今はまだバレなかったとしても、屋敷に帰ってからバレる可能性は十分にあるだろう。バレたらその時こそ終わりだ。紗希クンもほのかクンも確実に死ぬことになる。だったらここにボクが残って二人は皆と帰った方がいいじゃないか」


美「傑さん…貴方は、藤宮さんと竜胆さんを助けたいんですよね。……ねぇ、私貴方に初めて会った時、花を持っていたでしょ?」


傑、顔を上げる


美「貴方が気に入ったあの仏花…あれは、私の父のお墓に供えるためのものでした」


傑「え…」


美「父は、私を事故から守って亡くなりました。それは、今貴方がお二人にしようとしてることと似てますよね」


藤「主様…」


美「傑さんは、そうやって守った大切な人のこれから先のこと、考えたことありますか?残された側は…苦しいです。辛いし悔しいし涙もずっと止まらないし、あの時あぁしてたら、って後悔します。……助けてくれたこと、守ってくれたこと。それはすごく嬉しいんです。でも、恐らくお二人は後悔を引きずって生きていくことになると思います。そうなってほしいですか?」


傑「美晴クン…そんな言い方は…」


舞「…傑。同じく守られた側として言わせてもらうよ。…どうしたって解決策がないなら、その選択をとっても仕方ないと思うんだ。でも……今は、ここに解決できる選択肢があるだろ…!」


も「スグル様…もあは、でも、ただ生きていてほしいですっ…!もあはきっと、スグル様がいないと死んじゃう。それ、くらい、スグル様のぉ、ことが、大、好きですぅ…。だから、だからぁ…ふぇぇ…」


もあちゃん、泣き崩れる


舞「もあちゃん…」


舞宙、反射的に駆け寄ってしまう


藤「主様。守ろうとしてくださったこと、私も竜胆も、心より感謝申し上げます」


言い終わってから藤宮と竜胆、お辞儀する


顔を上げてから

藤「ですが…私共はあくまで召使いです。本来ならば、貴方をお守りする立場…。貴方様が守ってくださるのなら、私共も、貴方様を守りたいのです」


竜胆、藤宮の隣で頷く


傑「(ため息)…皆…ボクをここに残らせてはくれないようだね…」


美「傑さん。私たち五人、誰一人として貴方の死を願っている人はいません。全員、貴方に生きてほしいと思っています」


美晴、傑に歩み寄り、肩にぽん、と両手を乗せる


美「それにほら!危なくなったらその時はその時ですよ!!たぶんまた舞宙さんが魔法で助けてくれますから!」


舞「え、俺!?」


傑「はは、その時って…随分と軽いな、美晴クンは…」


美「はぁい!それくらいじゃないと、顔も心もずっと暗いままですよ。その時が来るまでは、明るく楽しくしてた方がお得じゃないですか!」


も「あんたは人生楽しそうね…」


美「うん!でも私がいるから、私の周りの皆も楽しくさせるよ!私の名前、美しく晴れるって書いて美晴だからさ、『百点!満点!笑顔は晴天!』ってね!」


藤「たしかに、木五倍子様がいらっしゃると心なしか少し楽しい気がします」


竜胆、笑顔で頷く


傑「美晴クン…すごいね、キミは。本当に太陽のような子なのだよ。……ありがとう」


美晴、美晴クン…で振り返って傑を見る


美「傑さん…!」


美晴、傑の手を握る


も「ちょっとあんた手ぇ!!!」


舞「うわびっくりしたぁ…!?」


美「傑さん!ここから脱出しましょ!!一緒に、六人で!!」


藤「主様!」


傑「ふっ…あぁ、そうだね」


美「やった…!!…舞宙さん!」

舞宙を見る


舞「あぁ!それじゃあ皆、手を繋いで!」


美「傑さん!」


傑「大丈夫、分かっているよ」


全員手を繋ぐ


舞「それじゃあ今から全員で、あの崖から飛び降りたいと思いまーす!」


全員「はぁ!?」


舞「さぁ行くよー!」


全「わぁぁああぁぁ!!!!」


皆で叫びながら走ってはける

また叫びながら出てくる


美「えっ…わっ!!」


も「すご…」


藤「外だ…」


美「よかったぁぁ…!!」


傑「…皆」


一同、傑の方を見る


傑「もう一度、生きるチャンスをくれてありがとう。皆の説得がなければ、ボクはここにいなかっただろうから」


美「傑さん…」


も「スグル様ぁ…♡…でも、もあは…なんも出来なかったです。第一、一緒に助けに行こうって言ったの、この女だし」


藤「木五倍子様が…?」


美「いやいや!先に救出計画練ってたのはもあちゃんだよね!?」


も「それはそうだけど…!」


舞「そうだね。今回は二人のおかげだよ」


傑「馬鹿。自分を忘れてる。そこにお前の魔法が合わさったから、ボクたちは助けられたんだろ」


藤「本当に、ありがとうございました」


も「…まぁとにかく、助けられたことはよかったわ」


美「うんうん!これで歴史も変わ…あっ」


傑「歴史?」


美「いえ!!なんでもないです!あ、えっとほら、皆でやりましょ!」


舞「やるって何を…」


美「百点!満点!笑顔は?せーいてん!!!」


一同笑う


傑「はは、全くキミは本当に…」


美「へへっ」


傑「よし、もう一度やろう」


美「え!?」


も「もあはやらないわよ…」


傑「おや、もあクンやらないのかい?」


も「スグル様が言うならやりまぁーすっ♡」


藤「私はパスで…」


美「そんなこと言わないでくださいよー!」


舞「俺はやるよ♪」


傑「さぁ!」


美「百点!!」

全「百点!!」

美「満点!!」

全「満点!!」

美「笑顔はー?」

全「せーいてんっ!!」


一同笑う


藤「主様、これお気に入りですか?」


傑「もちろんだ!実に面白い!」


も「まぁ…ちょっとは面白いかもだけど〜…」


美「これ私の持ち芸です!」


も「持ち芸って言うのこれ…?」


舞「どちらかと言うとキャッチコピーみたいだよね」


美「キャッチコピー!?」


傑「wonderful!!とてもいいではないか!」


美「ほんとですかぁ!?嬉しいです…あ!!」


も「何よ、大きい声出して」


美「皆さんに言いたいことがあって」


一同、美晴のことを見る


美「私、元いた場所に帰ろうと思って」


傑「元いた場所…?」


も「きゅ、急に何よ、帰るって」


美「皆さんには初めて言うんですけど…私、この時代の人間じゃないんです」


藤「それは…一体…?」


美「私は…今から八十年後の世界、西暦二千百三年の日本から来ました」


傑「時を超えて来た、ということかい?」


美「はい!」


藤「ということは、私たちは未来人の方に助けていただいたということですね」


傑「美晴クンが八十年後の人だというのなら…八十年後も生きていれば、また会えるということだね」


も「やぁね、もあたちはおばあちゃんになるのにあんたは今と何も変わらないなんて」


傑「ということは…八十年後もまだ元気に生きてなければならないね!もう今から楽しみだ♪」


藤「そうですね」


竜胆、うなずく


も「で、あんたは今から帰るの?」


美「うん。私がここに来たのは皆さんを助けるためだし…」


も「そ。まぁいいわ。とっとと帰りなさい」


美「ひ、ひどい…!」


舞「待って。帰るってどうやって?魔法が必要なんじゃ…」


美「はい!でも私、魔法具持ってるので大丈夫です!」


舞「え?」


美「ここに来る前に、花屋さんからもらったんです!」


傑「花屋?」


美「そうです!舞宙さんそっくりの、花屋さんに!」


舞「え、俺?」


美「傑さん!藤宮さん!竜胆さん!もあちゃん!舞宙さん!私、帰ったら皆さんに会いたいです!だから…だから!絶対!長生きしてください!!」


同時↓

傑「約束しよう」

藤「がんばりますね」

も「当たり前でしょ」


美「それでは、皆さん、また!!会いたいです!」


傑「またどこかで!」


美晴、はける


も「…行ったわね」


藤「はい」


傑「…彼女が未来で待ってるというのなら、それは必ず生きなければいけないという理由になる」


も「スグル様の言う通りですぅ♡あの女のために生きるのは癪ですけど」


藤「まぁ…できるところまでやりましょうか」


↓はけ始める

傑「さて、ボクたちも帰ろうか。あの屋敷に帰っていいのかいささか不安だが…まぁ何かあればその時だ。あの子が言っていたからね」


藤「はい、主様」


も「もあも久しぶりに実家帰ってみようかな…」


全員、はける

舞「まぁ、これでよかったのかな」


舞宙、はけて行く皆の後ろ姿を眺めてからはける




2103年。


美「歴史は…何か変わったのかな」


スマホを取り出して調べる

『』内は暗記不要


美「…キゾク葵…検索っと。あ、出てきた。えっと…『海外で起きた反乱を発端として突如行われたキゾク狩りでは、全てのキゾクが樹海に連れ込まれ、命を落とした。しかし、葵家六代目当主である葵傑とその使用人は樹海から脱出したと記述された書物が近年発見された。今もなお家系は続いているのかもしれない』…!歴史が…変わってる!!」


少し泣きそうになりながら

美「歴史が変わった!未来が変わった…!あ!そうだ!」


美晴、はける


舞宙、登場

自分のローブと、もあちゃんが持ってたピンクのモンスターを持っている


舞「はぁ…つい買っちゃった…あの子が持ってたやつ…」


スマホに電話がかかってくる


舞「もしもし」


舞「はは、ごめんごめん。ちょっと用が長引いちゃってね」


舞「うん、上手く行ったよ。俺の人選がよかった」


舞「はーい、今屋敷へ向かってるよ」


舞「あ、そうなの?」


舞「花屋…?」


舞宙、足を止める


舞「木五倍子の花と葵の花の束をお祖父さんにって?」


舞「ふっ、ははは」


舞「いや、あの子も粋なことするなと思って。じゃ、待っててください、八代目の当主様」


舞宙、ローブを羽織って


舞「急いで帰りますか!」


下手にはける


と同時に音響で流す↓

(メッセージカードの内容)

美「百点!満点!笑顔は晴天!私の名前、覚えてますか?」


fin



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我楽多の花はユメを詠う。 緋川ミカゲ @akagawamikage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ