バトルシーンを書くのが苦手な理由

 前回の「空想貯金」の話でしたように、頭の中で空想することから物語を考える私にとっては、バトルシーンというものが一番の鬼門です。

 なぜだかバトルシーンってヤツは頭の中で空想がしにくく、バトル中の展開や動きといった、バトル開始から終わるまでの一連の映像、具体的な動作が見えてこないからです。


 例えば、連載中の(というか長い間休憩してしまっていますが)長編作品『幽霊船の船長』では、主人公たちにとっての、とある二人の天敵との戦いが船上で繰り広げられました。

 しかしそれらのシーンでも、結局はバトル途中で交わされる会話を間に挟んでバトルの流れをごまかしている部分があって……具体的なバトル描写がちょっと物足りないかなぁと思いつつも、自分の今の力ではこれが精一杯なので、とりあえずそのまま進めています。

 「大鎌を持つ二人が、湾曲した刃をぶつけ合いながら空中戦を繰り広げる」とか「圧倒的な魔法の力を持つ相手に対してとにかく苦戦する」だとか漠然とした戦いのイメージしか浮かばず、バトル中の詳細な動きがどうも見えにくいんですよね……。


 『幽霊船の船長』の執筆時よりは頭の中でバトルの映像が見えていて、バトルにそこまで苦手意識がなかったかなと思えた作品としては、初めて完結させた長編作品『アイラと神のコンパス』が思い当たりましたが、その時も、バトルの始めから終わりまでの動きが明確に想像できたわけではありませんでした。

 その時の書き方を思い出すと、頭に浮かんだ短い映像(静止画に近い?)を繋ぎ合わせる感じで、バトルシーンを繋げて描写していった感じがします。

 例えば一本の短剣を巡って二人が戦うシーンでは、「剣が手から弾き飛ばされ、くるくると宙に舞って落ちてゆき、グサリと絨毯の上に突き刺さる」だとか、大剣使いと短剣使いの戦いでは「降り立とうとしている足場に相手の大剣が振り下ろされて岩が砕け、その破片が飛んでくるので腕を交差させて顔を覆う」だとかは映像として頭に浮かんでいたので、あとは「最後に相手の持つ短剣を奪い返す」だとか「敵から首元に剣を突き付けられる」だとかバトルの最終到達地点に向けて、バトルの流れをなんとか繋ぎ合わせていきました。



 これまでにも散々「バトルシーンを書くのは苦手」と言い続けてきた私ですが、何故苦手なのだろうと考えてみると、二つの理由が思いつきました。


 一つ目は、「バトルをしたことがないから」です。まあ、小説を書く人の大多数がそうだと思うので、バトルシーンの描写に苦手意識がある言い訳にはできないのですが。

 とはいえ自分のできないこと、経験のないことは、やはり書くのが難しいのかなと思います。

 先月のオリンピックを見ていて思ったのは、実際に相手と戦うような競技……柔道やレスリング、フェンシングやボクシングなんかを実際にやっている人なら、相手との間合いが~とか、より具体的に戦闘のアクションが想像できるのかもしれないなと、ふと思ったりしていました。


 二つ目は、思えば「バトルにそれほど興味がないから」です。小説も漫画も映画でも、元来ストーリーの流れや展開を楽しみたいところがある私は、バトル中のアクションにはそこまで特別な魅力を感じない傾向があるようなのです。

 特に小説では、映像が明確に見えてこないようなバトル描写があると、まずは頑張ってどんな状況なのか思い浮かべようとしますが、次第に理解できないことがストレスに感じ、しまいにはバトル部分を軽く飛ばしたくなってしまうこともあります。こうなってしまうのも、自分のバトルに対する想像力が特別乏しいのが原因なのかもしれませんが。

 映像が見えないから、が理由なら漫画や映画では大丈夫……という訳でもないようで、漫画でも少年漫画なんかはバトルシーンが多いのですが、「あーここからはストーリーは一旦お休みで、まーた誰誰VS誰誰、みたいなバトルシーンがしばらくの間続くのか」と内心がっかりすることもあったりします。

 映画は映像があるので、さすがにバトルの状況がわかりにくいといったことはないものの、思えば迫力のあるアクションを楽しむために観るような、いわゆるアクション映画といったものもあまり観ない方かもしれません。


 それでも……小説で、カクヨム上の作品でも映像が目に浮かぶような手に汗握る戦闘描写を見つけておおっと思わず興奮したこともあるし、漫画でも絵やコマ割りから迫力を感じるバトルシーンはハッとさせられたり思わず胸が熱くなる。

 映画でも、例えば剣を使った戦いならパイレーツ・オブ・カリビアンの地形や周りのものまで活かしたバトルは最高にワクワクするうえに思わず笑ってしまうほど面白いし、スター・ウォーズのライトセーバーを使った戦いはブーンと響く音も爽快で光る剣の見た目もカッコイイので思わず見惚れてしまう。魔法のバトルならファンタスティック・ビーストシリーズのバトルは、魔法のスケールが大きくいつも圧倒されてしまいます。

 そんな感じで、普段それほどバトルに特別な関心がない分、なぜだか自分にハマるバトルシーンに出会えると、尚更感動は大きかったりもします。


 そっか、アクション映画なんかももっと観た方がいいのかな……。漫画も小説も、まーたバトルシーンか……みたいにがっかりせずに、バトルシーンこそ真剣に読むべきなのかも……。


 誰かにバトルシーンだけ代筆してほしいレベルで苦手なのは流石にマズいと感じるので、色んな作品から学んでもっと勉強しなければなりませんね。



 そんなこんなで結局、バトルシーンの執筆が苦手な二つの理由のどちらも、「バトルに触れる機会が少ない」という共通点があると感じました。


 これまで自分にバトルした経験がないのは仕方ないですが、思えば読む方、見る方でも、特にバトルシーンの多い作品なんかを、無意識に避けてきがちだったのかもしれません。

 しかし好き嫌い言ってないで、バトルものにもう少し触れたり特別注目したりするべきなのかもしれない、と改めて感じました。


 素人である以上、自分の好きなものを書けば良いはずの小説ではありますが、やはり一切バトルなしは描きたい展開的にも辛いものがあるので、苦手なことにも逃げずに立ち向かわねばなぁと思います。



 今書いているダンジョンものの『宝箱ハンター』でも、今まさにそのバトルシーンで苦労していて、次に書かねばならない部分にラスボス戦があります。

 過去に書いた、勇者なんかの出てくる同じようなダンジョンもの……本作『創作の記録帳』の序盤にも登場した『勇者スターターキット』や、昔KACで書いた『ロイと勇者の日記』、カクヨムコン短編賞で書いた『勇者と研究者』では、時間や文字数の制限からラスボス戦などのバトルシーンを省いた内容になったのですが(内心書かずに済んだことにほっとしつつも)。今作こそは、どうしても書かねばならない。

 キャラクターのもつ能力などの設定は決まっているのですが、その設定を生かしたバトルの一連の流れがイマイチ見えてこず、煮詰まっている最中で……バトルシーンを書くまでにはもうしばらく時間がかかりそうです。


 書いた結果どうなったかは、時間や気力があればまた本作、『創作の記録帳』でもお伝えしたいと思います。


 とりあえず、ラスボス戦をなんとか書ききって、半年前のKACから書き始めた『宝箱ハンター』もそろそろ完結できるように頑張ります……!


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創作の記録帳 ほのなえ @honokanaeko

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