短編エピソード⑥ 晩餐
アキバの片隅にあるパーソナルトレーニングジム。
ここはボディビル全国大会でトップ3常連の男が運営しており、ジムに通う者たちも、男に教えを請いたいと願う筋肉自慢たちであった。
そんなジムの奥にある、会員たちを招いてパーティーを行うリビングで、とある会食が行われていた。
そこでは男たちが食卓を囲んでいる。
創作系のキャンドルが照らす明かりの下、食卓には沢山の肉料理が並んでいた。
食卓を囲む男たちは筋肉隆々であった。
運営の男が口を開く。
「タカシ君、全日本一位おめでとう。最近の君のトレーニングを見ていて、絶対に優勝できると信じていたよ。僕は及ばず二位だったが、君から色々と吸収したいと思ってこの場を設けたのさ。君のお友達のに~くん、だいちゃん、こうちゃんも凄い喜びようだったね」
男はワインのグラスを持ち上げながら、揚々と話し続ける。
「どうした、いつも煩いぐらいに会話をしているじゃないか。お祝いの席だ存分に楽しんでくれ。今日は豪勢に肉料理尽くしだ!」
男は一枚のさらに手を伸ばす。
「これはシンタマかな? 赤身だがミディアムレアでなかなか美味しいなぁ。なあ、だいちゃん」
「さて、これはリブロースか。わずかに霜降りが入っていてよく引き締まった肉だな。口の中で脂が溶けて旨い。こうちゃん、最高だな」
「おう、これはニノウデか! 流石に筋肉質で引き締まって噛みごたえがあるな。にーくん、なにか感想はないか?」
返事はなく、食卓は静まり返っている。
男が使う食器の音と咀嚼音だけが部屋に響いている。
「タカシ君、いつもお友達とよく会話をしているのに今日は寡黙だな?」
男の対面に座るタカシ君はうつむいて微動だにしない。
その足元には深紅の染みが広がっている。
「君がトレーニングを頑張りすぎるからいけないんだよ……」
男はナプキンで口を拭うと立ち上がった。
「君の大切な
注釈:
シンタマ=タカシ君の大腿四頭筋=愛称だいちゃん
リブロース=タカシ君の広背筋=愛称こうちゃん
ニノウデ=タカシ君の上腕二頭筋=愛称にーくん
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