猟奇的なシーンから始まる本作品は確かにホラー。しかし耽美な筆致がホラーであることをしばし忘れさせます。印象的に現れる“椿”、そして主人公と妖しげな女主人との背徳的な関係も相まって退廃的な雰囲気が漂い何とも言えず良いです。大正ロマン溢れる歪んだ愛の結末を是非見届けてください。
そこはかとない美しさが恐ろしさを増幅させますがラストは物悲しくなります
美しいホラー短編。冒頭が衝撃的で、息を呑んで読み進めました。私には、この作品を言葉で表すのは難しい。ですが多くの方にぜひ読んで欲しいと思います。個人的に、字幕付きのサイレント映画を想像しました。モノクロームあるいはセピア色の映像の中で、特別に白と赤がくっきりと際立つような……ああ、やっぱり上手く伝えられない。
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鮮烈で衝撃的、もっと言うならば猟奇的な場面で始まる物語。これは、ホラー?でも、最後まで読み終わると、これはむしろ、鮮やかな絵物語。咲き乱れ、散り乱れた椿の樹の、一瞬の情景に、物語をつけたよう。登場人物たちは、皆、収まるべき場所に収まった静止画のパーツの様。文章は流れるように滑らかで、読者を美しい陶酔の世界に導きます。
椿の花が、目の前に現れる様な素敵な文書です!そして、椿の花言葉人の気持ちは本当に本人にしか分かりません。それを、どうするのかは本人次第です!ただ、ただ考えさせられる作品でした。ありがとうございます。
ただのホラーと一掃出来ないのがこの話の妙で、恐ろしさを伝える反面、絶えずそこには得も言われぬ美が存在する。決して長編ではないが読みごたえは十分。人目に付こうと長いタイトルが蔓延ってる昨今だが、簡潔なタイトルにこそ簡潔な文章が宿っている。そんな見本とも言える一作だ。
この短さの中に濃密な空間がつまっていました。グロテスクな光景とあでやかな椿のイメージがねっとりと絡み合う作品。紛れもなくホラーでありながらも、ゴシック感漂う美しい言葉たち。さらに真ん中を貫くストーリーのしっかりとした感じがたまらなく素晴らしい。SFの短編も読みましたが、とてもいい作品を書かれる方だなと。すっかりこの作者のファンになりました。ぜひ読んでみてください!
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(235文字)
椿が咲き誇るお屋敷で、人体の一部が落ちてくるという衝撃的な始まり方を迎える本作。毎回異なる部分が落ちてきて、それに触れる度に主人公は忘れていた記憶を取り戻していきます。作中にも登場するアレクサンドル・デュマ・フィスの「椿姫」の物語や、大正時代の持つ独特な空気感も重要な要素となっています。ホラーであると同時に、ノスタルジックや神秘性も感じられました。椿屋敷で何が起きているのか。ぜひその目で見届けてください。