第60話 突撃!仕事場見学
「今更なんだけど勝手に行っていいの?」
「基本、幹部クラスの人たちは昔からの顔馴染みだしお父さんの秘書さんには伝えたから」
豹牙さんのクランはゲートから少し離れた位置にあるらしい。
特に有名なクランは少し離れた位置でゲートを囲むように置かれてるって話みたい。
「それにしても……【黒貓】を使いすぎるくらいって何かあったのかな」
「日向のお父さんの武器だよね?使いすぎると良く無いの?」
日向は説明するのが難しいのか唸ってる。私の原初覚醒みたいなデメリットがあるのかな?
「この武器はかなり捻くれてて、逐一流す魔力の量を調整しないと威力がガタ落ちするの。逆に武器が必要とするだけの魔力にすれば何倍にも威力が高まるんだけどね」
「かなり強そうだけど前の時は使ってないかったよね?」
赤狼の時はこの武器は使えなかった気がする。
「あーお父さんってテキトーだから常に魔力量を気にしないといけないのがストレスで使わないんだよね」
「なるほど」
そんな話をしていたら正面に大きな建物が見えてきた。多分アレがクランの建物なのかな。
「それじゃ中に入ろうか」
「うん。………緊張するなぁ」
中に入ると雰囲気はギルドと似てるかな。人がいっぱいいて多分パーティーっぽい人達が話してる。
「ん?日向ちゃん!いらっしゃい」
クランの中にいた人が気がつくと他の人もどんどん日向に挨拶していく。やっぱり日向はこのクランでも人気者なんだなぁ。
「新しくクラン作ったんだって?マスター寂しそうだったよ、珍しかったー」
「その子がパーティーのメンバー?日向ちゃんをよろしくね」
クランの人みんな優しくてびっくりした。日向の明るい性格はこの人達のおかげなのかな。
「お父さんいる?」
「クラマス?たぶん部屋にいるだろうけど……」
「じゃあ行ってみるよ、ありがと!」
豹牙さんのいる部屋に行くと何だか前にもこんなことがあったような気がしてきた。何処でだっけ?
「入るよー」
日向がノックもしないで部屋に入ると秘書?のような人に豹牙さんが説教されていた。
「良いですか?どんなに可愛くても魔物なんですからさっさと倒してくださいよ、黒豹まで壊して」
「だって肉球だぞ、触りたいよな?」
「気持ちはわからなくも無いですが」
「だろ?」
「遠征中にやることじゃ無いでしょ!?全くこのバカ猫何でクラマスなんだろ……」
「「………」」
これアレだ、ギルマスさんが怒られてる時と同じだ。
話を聞く限り猫型の魔物の肉球を触りまくっていたらしい。
うーん、私にとっての日向ぼっこみたいなものかな。
どうしよう、私も日向に怒られる未来が見える。
「ほら、日向ちゃん来たんですからギルマスの威厳を取り戻しなさい」
「お前が貶めたんだろ……よく来たな日向、それと白さん」
さっきまでのことをなかったことにするつもりの豹牙さんは威厳たっぷりな様子で話を始めた。
「はい、少しお邪魔します」
「日向の友人だからね、我が家のように気楽にいてくれ」
「は、はい」
「今更繕ってもしょうがないでしょ?はい、黒豹」
日向は机の上に持ってきた武器を雑に置いた。良いのかなぁ。
「お、ありがとな。わざわざ持ってきてもらって」
「頼んだんなら自分で取りに行ってよね」
「ちょっと説教が長引いてな」
机に置かれた武器をしまった後、豹牙さんは「クランを作ったんならうちを見学して行くか?」と言ってきた。
正直なところかなり嬉しい。クランのマスターになったけどどんなことが必要なのかわかってないから見学できるのはありがたい。
「お願いします!」
「よし!じゃあまずはーー」
「あなたは貯まった書類整理です、日向ちゃんがいれば問題ないでしょう」
それからクランの中を案内されて色々みることができた。
基本的にはギルドと変わらないらしい。
違うのはギルドからクランに対して依頼される物や魔物を間引いて欲しいという【遠征依頼】がある事くらい。
クランに所属している探索者はクランの掲示板から依頼を取って行くみたい。
日向が言うにはクランハウスを作るにも許可がいるらしい。つまり、クランハウスがないクラン所属の人たちは今まで通りギルドの依頼を持っていくらしい。
「クランって言っても色々なんだね」
「こことか紫藤さんの所みたいな大所帯以外はまぁ大して変わらないよね」
「お、二人とも見学は終わったか?」
見計らったように現れた豹牙さんは「ちょっと時間あるよな?」と言って私たちを地下に案内した。
「広い!」
「ようこそ!うちの地下訓練場へ」
地下に体育館数個分くらい広い空間が広がっていた。
「最近は日向の面倒も見れてなかったしな、ちょうど良いから二人まとめてかかってこい!相手してやる」
「日向どうする?」
「やろう、新しい装備の試運転にちょうど良い」
日向ぼっこしたい吸血鬼〜日光耐性を手に入れるためにダンジョンに潜る〜 怠惰るウェイブ @4shiya
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