捨てられたからこそ
広間に行くとアルが執事のクロースさんとメイド長のメリッサさん、ロンと一緒にテーブルを囲んで座っていた。全員何かを考え込んでいてとても静かだった。
「戻ったよ」
私が声をかけると四人とも私の方を振り向いた。全員少し驚いた顔をしていたので、どうやらかなり真剣に話していたようだった。
「おかえり。ミシェルさんの件を話していたんだ。三人の意見も聞きたくてね」
「なるほどね」
「で、三人も何か裏があると言っている」
私はアルに促されて空いている席に座った。
「三人ともエリにもさっきの意見を聞かせてくれないか」
アルがそう言うとまずはロンからということになった。
「カニエル大臣がエリーナ妃にしたことは許せないですが、事情を聞くと納得はできました。だからこそ、今回の件にも大臣なりの理由があるんだと思います」
次にメリッサさんが話し始めた。
「奥様であるミシェル様を不安にさせるようなことをするのは許せませんが、話を聞く限り不倫ではないのではないかと私は思います」
最後にクロースさんが言った。
「私も同じ考えです。カニエル大臣は、やり方には賛同しかねますが、大臣なりに女性を大事にしていることは話から伝わってきます。だからこそ、何か裏があるかと思います」
皆んな同じ考えに至った。カニエルはやり方は不器用すぎるが人のことは大事にしているのだ。そんな人だからこそ、なんらかの理由を考えてしまう。
私が考えているとアルが私の方を向いた。
「エリ、僕は明後日カニエルに会いに行こうと考えている。エリは、どうする?」
カニエルに会う。しばらく顔を見ていない私は、彼と面と向かって話ができるのだろうか。アルは続ける。
「一緒に来て欲しいとは言わない。それを決めるのはエリ自身だからね。行く気が沸いたなら明後日の朝までに伝えて欲しい」
正直、今の私でカニエルに会うのは怖い気がする。だって、いくら理由が有ったとはいえ私を捨てた男なのだから。
いや、むしろ、だからこそだ。本当の理由も告げられずに捨てられたからこそ、私は彼と話をしたい。話をしてちゃんと別れたい。そして、ミシェルの分まであいつを怒ってやるんだ。
「わかった。私も一緒に行く。一緒に行って、アイツとちゃんと話がしたい」
アルは少し微笑んでから頷いてくれた。
「うん、エリがそう言うのなら僕は止めないよ」
他の三人も頷いてくれた。
そうと決まれば、あとは直接カニエルに会うだけだ。私は意を決してこう言った。
「アイツとの関係にちゃんと決着をつけてやるわ」
婚約破棄されたので幼馴染のイケメン王子と契約結婚!〜愛してくれるのはあなただけだから〜 石嶋ユウ @Yu_Ishizima
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