不安にさせるようなこと
ミシェルは手帳を私とアルに差し出した。アルが手帳をめくって確認すると暁と書かれた日は他にも複数有った。大体週に一回から二回という頻度だった。日付を遡ってみるとどうやら二ヶ月前の始め頃が最初のようだった。
「気になってここ三ヶ月のスケジュールをこっそり見たら先月からこの文字がいくつもあって、もし本当の不倫なら嫌だなと思うんです」
アルが頷く。
「確かにそうですね。でも、あなたは本当の不倫ではないのだろうとも思っているのでしょう?」
「そうです。だから余計にわからなくて……」
カニエルはいつもそうだった、何を考えているのか少しわからないところがあるのだ。多分、彼なりに何か理由があることは理解できるのだけれども、私から見れば正直言って少し不安になるような感じだった。だからこそ、私は突き止めなくちゃいけない。今のカニエルが妻を不安にさせるようなことをする理由を。
ミシェルは話を続ける。
「ただ、わからないなりにこの手帳を見たら例の人と次に会う日の目処は立っています」
彼女は手帳を指さした。指し示された日付は明後日で、時刻も書いてある。それ加えて、やはり暁と書かれている。
「なるほど……」
アルは考えているような仕草をする。やがて、アルは視線をミシェルに向けてこう言った。
「あとは私たちの方で調べてみます。こうなったら、本人に理由を聞いてみるしかなさそうです」
ミシェルはすぐに頷いた。それからすぐにお辞儀をした。
「何卒よろしくお願いいたします」
それからすぐにミシェルは帰ることにした。帰りの準備を整えて、彼女は城を出ようとする。私は彼女を見送ろうとそばをついていた。すると、彼女は私の名前を呼んだ。
「……エリーナ妃、最後に一ついいですか。私のせいで、あなたは婚約破棄をされてしまいました。それについて、私はあなた様に謝らなくてはならない。大変申し訳ございませんでした」
彼女は頭を下げる。
「ミシェル、頭を上げて。もう良いのよ。確かに婚約破棄された時はどうしようと思ったし大変だったわ。だけどね、今の暮らしがとても楽しいの。理由はうまく言えないけど、カニエルと居た頃よりもなぜかのびのびとやれてるわ。だから、気にしないで」
彼女は頭を上げた。それから少しだけ微笑んだ。
「それなら、良かったです。やはり、カニエルの言った通りでした……」
「言った通りってどういうこと?」
「いえ、なんでもないです」
「そう、まあいいわ。そういうことだから、あなたもカニエルと仲良くやってくださいね。多分、カニエルにはあなたが必要だから」
「はい」
そう返事をしたミシェルは今日一番嬉しそうだった。
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