心を乱してしまうと、国に災厄を呼んでしまう娘は、一人きりで変わり映えの無い日々を過ごしている。そこへ、一人の青年が、旅の話をするために訪ねてきた。訳ありな男女の距離が近付く様子を、じっくり描いた恋愛系異世界ファンタジー。異国情緒のある美しい光景も細やかに描写されていて、物語世界に深く入り込んでいきます。事情が事情だけに、一人きりでしか過ごせない娘の孤独に胸が痛くなり、この子のが幸せになってほしいと心から思います。だからこそ、最終話でのあるシーンが、この上なく胸を打ちました。
この物語の何が、と言われれば色彩が印象的でした。どんな色をしているのか、どんな景色なのか、主人公と一緒になって想像してしまう。読者が主人公に重なってしまうのです。流れる時間は早くて、ゆっくりで、読書体験にある独特の時間軸を辿るよう。紡がれる言葉は優しく、頭で音読をしても耳に心地よい。優しい気持ちになれる素敵なお話です。心穏やかになりたい方へ、ぜひに。
負の感情が国に災厄をもたらす。百年に一度生まれるという災厄の娘。孤独に生きる彼女に旅人が語るのは——。 とてもやさしい読後感のお話です。色、音、姿、景色、旅人が話して聞かせる不思議な花や鳥がいる光景を、気がつけば娘と一緒に想像していました。 うつくしく幻想的で、だけどとても素直でやさしい。心が疲れたとき、眠るまえにそっとひらきたくなる物語です。ぜひ、読んでみてください。
1万字弱の短編です。まったく先が読めませんでした。美しい文章でつづられ、読み終えるのが勿体ないほどでしたし、どんなラストになるのか、祈るような気持で読み進めました。よく「情景が目に浮かぶよう」といいますが、この作品の素晴らしさは、情景を「想像させる」所にあるように思いました。読みながら、「どんなかな……」と想像してしまって。文章の可能性という点でも、素晴らしいです。落ち着いた筆致で丹念に物語を綴り上げた傑作です。是非読んで!
言葉一つ一つが綺麗で、とても素直に良い話だなあと思いました。旅人の語りが面白くて、浮かぶ情景もとても綺麗でした。作中の娘と同じように、多分上手く想像しきれていないと思いますが。国と娘に一番必要だったのは緩和というか、受け取り方というか、そういう柔軟な考えとそれを得るためのキッカケだったのかもなあ……と感覚に変化の見えるラストを見て思ったりなどしました。グラントさんいい男だなあ。
西洋の古い童話を思わせる短編。災厄の娘と呼ばれている娘は、生まれ持ったその不思議な力のせいで孤独に暮らしています。でも彼女はなるべく感情を動かさないようにしていて、それは国の平穏に直結してしまうから。物語はファンタジックな設定からくる切なさや寂しさが美しく重なっていく進み方をするのですが、最後にほっと笑顔になる展開が用意してあって優しい気持ちになります。けっして悲しい物語ではない。その後、国の人たちが噂する冗談にもほっこりしました。