胸に哭く
- ★★★ Excellent!!!
本作は一時幾度となく読み返したもので、またぞろ数年ぶりに読んだ。
中島敦の作品で一等好む作で、ふたたび触れ、それはかわらなかった。
そして受ける印象は、さらに深く鮮烈になっていた。
子路、という快男児をあつかった着眼点からしておもしろい。およそ中島敦、そのひととかけ離れた人物のようにおもわれてならぬからだ。さりとて、中島敦という人物像をさまで熟知してあるわけでもないのだが。
おそらく、中島敦とはかけ離れたもので、中島敦の理想というのだろうか、憧れ、そして好ましい人物像なような気がされてならぬ。
最後は、潸然と泪下る、というまではなかったが、胸に哭いた。子路というひとをおもい。
我もまた子路を愛し、その最期を悼むものである。