本作は一時幾度となく読み返したもので、またぞろ数年ぶりに読んだ。
中島敦の作品で一等好む作で、ふたたび触れ、それはかわらなかった。
そして受ける印象は、さらに深く鮮烈になっていた。
子路、という快男児をあつかった着眼点からしておもしろい。およそ中島敦、そのひととかけ離れた人物のようにおもわれてならぬからだ。さりとて、中島敦という人物像をさまで熟知してあるわけでもないのだが。
おそらく、中島敦とはかけ離れたもので、中島敦の理想というのだろうか、憧れ、そして好ましい人物像なような気がされてならぬ。
最後は、潸然と泪下る、というまではなかったが、胸に哭いた。子路というひとをおもい。
我もまた子路を愛し、その最期を悼むものである。
孔子に師事し、終生忠誠を誓った弟子、子路についてのお話です。
孔子が仕官先を求めて諸国を移動してる中間までは、ロードムービーを観ているような描写でした。(『イージー・ライダー』みたいな)
子路が大成して衛国の相談役を勤めるようになった後半で、生来の気質(他者の思惑、いわゆる空気を読まずに真っ直ぐぶつかってしまうところ)によって命を落としてしまうことを孔子は既に予感していたのが、寂しくなります。
子路の欠点を何度も注意していたけど、「これは直らないだろう。そしてそれが彼の魅力でもある」と弟子の未熟さを含めて孔子は愛していました。