最終話 絆を紡ぐ者

「「「おかえり~!」」」


 復興が始まったエルフの里にようやく戻ることができて、帰ってきてすぐにアリサさん達が笑顔で出迎えてくれた。


 アザトースを倒すことができたのだが、その反動で僕はしばらく動くことができなくて、母さんに看病される日々を送った。


 大体十日くらい経過している。


 念のために心配しないように精霊さんにお願いして手紙を送っているので、村まで乗り込んではこなかった。


「あら、可愛い娘さん達だね。君がアリサちゃんで君がセーラちゃんで君がステラちゃんね?」


「えっと……?」


「初めまして。私はユウマくんの――――母です」


「「「お母様!?」」」


「うふふ。まだ・・お母様と呼ばれるのは早すぎるかしらね~」


 か、母さん……急に怖いよ!?


「こちらは僕の母さん。こちらは父さんだよ」


「「「初めまして!」」」


 それぞれ自己紹介をした。


 ちょうど自己紹介が終わった時、男女二人がやってきた。


「母さん。父さん」


 やってきたのは、兄さんとリシニアさんだった。


「グレイ……」


「兄さん。ただいま」


「…………」


 次の瞬間、兄さんとリシニアさんが腰を真っすぐ九十度曲げて頭を下げた。


「ユウマ。今まで酷い扱いをしてしまってすまなかった!」


「兄さん……気にしないで!」


「そうはいかない。けじめは付けなければいけないから」


「それなら――――これから定期的に会ってくれたら嬉しいな!」


 兄さんが驚いた表情で頭を上げた。


「だって、僕達家族なんだし、喧嘩くらいするよ。それくらいで目くじら立てるなんておかしいと思うんだ。それより、兄さん? 彼女を紹介してくれないの?」


「あ…………ああ。ユウマには勝てないな…………父さん。母さん。ユウマ。こちらはリシニア。聖女であり――――俺の妻・・・だ」


「初めまして。挨拶が遅れまして申し訳ございません。リシニアと申します」


 それから経緯を話した兄さんは、なんと十日前にリシニアさんと結婚の誓いを交わしたそうだ。


 式はまだあげてないということで、村であげることが急遽決定した。




 ◆




「お久しぶりです。セリア様」


「お久しぶりです。プリムローズ様」


 やっぱり二人って知り合いだったんだね。


「プリムローズ様。その姿はまさか……」


「はい。世界樹が燃えてしまった現状、次の世界樹が必要になります。私はその――――苗となりましょう」


「えっ!? プリムさん! 苗ってどういうことですか!?」


 あまりにも突然なことに驚いてしまった。


 プリムさんを見守るフェン先生も悔しそうに拳を握りしめる。


「ユウマくん。世界を救ってくれてありがとう。今度は私が返す番ね。私は〖大地の巫女〗。世界樹がなくなった場合、私の体を新しい世界樹に変えて世界を保たせる必要があるの」


「そんな……」


「これは生まれてからの定め。私は永遠に生きる世界樹となり、みんなを見守っているわ」


「くっ……プリム……」


「フェン。そんな表情をしないで? 笑顔で送ってほしいな……」


 大地の巫女プリムさんとそれを守る聖騎士フェン先生。きっと二人はこうなる運命を知っていたのかもしれない。


 その時、ふと、僕のスキルの中に〖大地の巫女〗があることを思い出した。


 これはプリムさんと絆が繋がった時に手に入れたスキルである。


「世界樹って〖大地の巫女〗が苗になるんですよね? つまり、〖大地の巫女〗が他にいれば、それが苗になれる?」


「えっ? それはそうだけど……」


「それなら――――グラハムじいさん!」


【なんじゃ、ユウマや】


「グラハムじいさんの力で〖大地の巫女〗を普通の木に与えることはできないんですか?」


【うむ? できるんじゃないかのぉ?】


「…………それを早く言ってください!」


 僕は急いで燃えた世界樹の下にやってきた。


 燃えてしまって痛々しい姿だったけど、まだ全てが絶えたわけではない。


「グラハムじいさん! お願いします~!」


【あいわかった~!】


 僕の中にある〖大地の巫女〗の力が聖剣を伝わって具現化・・・する。


 聖剣には持つ者の力を具現化する能力があり、焼けた世界樹に二度目の命の息吹を吹きかける。


 淡い翡翠色の光が広がっていく。


 どんどん広がった光は――――世界樹に広がり、焼けた断面から新しい枝が溢れ出た。


 無数の枝は一本になり、どんどん上空に登り始め、やがて一本の木となる。


 その枝には無数の葉っぱが咲いて、僕達を祝福してくれるかのように立派な世界樹の姿を取り戻した。


【――――ありがとう】


 どこからか優しいティクルくんの声のような声が聞こえた気がした。


「ユウマ! 世界樹を……世界樹を取り戻してくれてありがとう!」


「ふふっ。フェン先生? 僕がいうのもあれですけど、ちゃんと思いは伝えないといけませんよ?」


「ああ……! ユウマの言う通りだ」


 フェン先生が一目散にプリムさんの前に跪いた。


「フェン!?」


「プリム。俺はこの先も君を守り続けていく。だから――――俺の妻になってくれ!」


「フェン……私……ずっと年上だよ?」


「構わない」


「フェンがよれよれのお爺ちゃんになっても、私は変わらないんだよ?」


「ああ。構わない」


「私……ずっとこんな小さなままなんだよ?」


「俺が好きなのはプリム自身だ。姿が変わらなくたって成長しない体だとして、なんの問題がある。それより世界樹の苗となって、もう二度と会えなくなる方がずっと辛かった」


「フェン…………うん。こちらこそ……よろしくお願いします」


 見守っていた僕達から割れんばかりの拍手を送ってあげた。






 世界樹が復活してから一か月後。


 田舎村では小さな結婚式が開かれた。


 美しいウェディングドレス姿の聖女リシニアと、タキシード姿の勇者グレイの結婚は、やがて世界に大きな光となり、その日を平和の象徴として記念日となり、世界中が祝う日となった。






「ユウくん。私もウェディングドレス着たいな~」


「えっ!?」


「わ、私もよ!」


「私は着る。卒業したらユウと」


「ええええ!?」


「「「なにか?」」」


「いえ……よ、喜んで送らせていただきます……」


 ようやく平和が訪れた異世界。


 現在帝国と他の国での平和のための話し合いが続いている。


 それは大人達と勇者である兄さんが頑張ると言ってくれたので、僕は何もしていない。


 ただ毎日学園に通いながら仲間達とかけがえのない時間を過ごして、いつも三人と一緒に楽しい時間を過ごしている。


 学園を卒業したら三人と結婚することが決まったり、色んな国からうちに来ないかって毎日ように手紙か届いたり、兄さんのイタズラで貴族のパーティーに誘われて色んな女性から言い寄られたりと散々な目にも会ったりしながら、僕は楽しくて平和な毎日を送っている。


 異世界に転生して十五年。


 辛い事もたくさんあったけど、それも今となっては愛おしい過去になって、今をより彩らせてくれている。






――【完結】――

 魔王種だらけの田舎村に異世界転生したようです~才能なしと言われて過保護に育ち、学園ではスキル0と蔑まれても実は最強です~を最後まで読んでいただきありがとうございました!


 絆を題材にした物語で、最後のユウマとグレイの関係を描きたかった当作品ですが、途中で色々脱線があったりと思い通りに書けなかった部分も多いですが、最終話にたどり着いてみると、書き終えて本当に楽しかったと思えました。


 ここまで読んだ皆様の心にも絆というものを今一度振り返るきっかけになってくれたら嬉しいなと思います。(もうランキング的なものは厳しいですが、★を残してくださると、モチベが上がるので面白かったと思った方はぜひ入れて頂けると嬉しいです~!)



 御峰が別の作品を多く描いておりますので、連載作品や完結作品など、ぜひ覗いてみてください!


 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!!

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魔王種だらけの田舎村に異世界転生したようです~才能なしと言われて過保護に育ち、学園ではスキル0と蔑まれても実は最強です~ 御峰。 @brainadvice

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