初夢

脳幹 まこと

初夢


 コンビニの飲食コーナーで「【口臭オワタ】特濃ニンニク&納豆マシマシつけ麺」を食べていると突然人相の悪い覆面の男が現れて「強盗だ! レジのカネを覆面の中に入れろ!」と叫び出した。


 店内は騒然として、若い店員が「最近世の中が物騒になって困りますね」と私に話しかけた。かき乱してやろうと思って「そうですよね、すぐ近くで強盗やってるみたいですよ」と返した。


 強盗は覆面を脱いでその中にレジのカネを詰めようとするが、目や口からポロポロと小銭が出ていく。舌打ちして「おい、誰かテープかなんかくれ、穴塞がないと入んないよこれ」と手を振った。


 スマートフォンがポケットに入っていたので「ちょっと助け呼びますね」と110番をプッシュ。しばらくすると相手は「もしもし」と声をかけてくるが、その声は明らかに上司だった。店内には「新時代」のサビの部分だけヘビーローテーションしている。


「お前、口の臭いどうしたんだ? すごいぞ?」と電話越しで苦情を申してくる上司に対して「テープとかあります?」と答える私。「テープなんて都合のいいもんあるわけないだろ。3Dプリンタなら家にあるから、それでなんか作ってやれ」と返す上司。


 私は電話を切ると、隣に3Dプリンタがあるのを確認し、「あのー、なんかバッグとか作ります?」と強盗に呼びかける。すると、強盗はナイフを持って内閣がどうだの関税がどうだの言いだした。不況のあおりらしい。失われた30年ローンならぬ牛なわれた30年モーンらしい。


 私は手に持っていたわかばシューターを向けた。強盗は「口が臭い上にクセが凄い」とディスり始めた。もうだめだ、と思った次の瞬間、スーツを着た凄いイケメンが「やめてください! この人は関係ないでしょう!」と強盗の前に歩み出た。


 強盗は「お前に俺の気持ちが分かるってのか? 量子力学では観測していない電子の動きは計算に含めないんだぞ?」と笑う。店内のみんなが笑う。これが初笑いになる。

 そしてそのままナイフがイケメンを突き刺した。すると、イケメンは両手両足を広げて飛び跳ねた。そして地面に着地したかと思ったらすり抜けて消えた。



 驚きのあまり目を覚ますと、実家だった。私は帰省していたのだ。

 お母さんはおせちを作っていた。「お母さんお母さん」と歩み寄って袖をつかむと、お母さんは両手両足を広げて飛び跳ねた。そして地面に着地したかと思ったらすり抜けて消えた。


 これは夢にしても予想外だったので驚いていると、隣にいたお父さんが「まあ、兎年だからな、ぴょんぴょんってことなんだろ」と呟いた。

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