第100話 お爺ちゃん「わしの冒険はまだまだこれからじゃ!」

「む? イレイザーの船がまた飛んでいくの?」


 通信を終えた源三郎達はゼニス支社のビルに張り付いていたイレイザーの船が大気圏外へと消えていく。


「特にクエストに変化はないですね?」

「ただの演出かな?」


 イレイザーの船が消えていったが、特に変化はなく、源三郎達はゼニス支社のビル地下駐車場へと向かう。


「こりゃ酷いのう………」

「あちらこちら瓦礫だらけだし、車両もほぼ全て破壊されてるね」

「よくみれば武装した警備員と思われる人の死体もあります」


 地下駐車場はかなり破壊されており、地上車両では先に進めないようになっていた。


「仕方ない、ここから歩いていくか」

「妨害電波が強くて私達のレーダーもノイズだらけです」


 源三郎達は車両から降りて地下駐車場を進んでいく。

 鈴鹿が言うように本来は敵の位置などを知らせるレーダーが妨害され、視認だけで敵を探さないといけない状態だった。


「イレイザー!?」

「っ!?」


 ビル側のシェルターを目指してクエストマーカー通りに地下駐車場を歩いていると、哨戒中のイレイザーの小隊と遭遇してしまう。


 双方瓦礫に身を隠すように遮蔽を取ると撃ち合いを始める。


「ハイヴグレネード投げます!」


 鈴鹿が虫の巣のような形をしたグレネードを投げると、グレネードから小型昆虫ドローンが飛び出しイレイザーに纏わりつくと自爆していく。


「ワシは突っ込む!」

「お爺ちゃんお願い!」


 ハイヴグレネードで浮き足だったのをチャンスと見た源三郎が瓦礫をピョンピョンと飛び移っていき、イレイザーの小隊に近づく。


 イレイザー達は源三郎を迎撃しようとレーザーを撃つが、源三郎は自分に当たりそうなレーザーだけガンブレードで打ち返していく。


「私達もお爺ちゃんをサポートするよ!」

「はいっ!」

「うん!」


 彼方達も源三郎を攻撃しようと頭を出したイレイザーに向けて集中砲火して、源三郎をサポートする。


「きいぃぃぃええええいっ!!」


 イレイザー達の陣地に突入した源三郎は猿叫をあげながらガンブレードでイレイザー達を斬っていく。


「敵はこれだけのようじゃな。増援が来ないうちに離れるぞ」

「うん」


 源三郎達はイレイザーの哨戒部隊を壊滅させるとその場からすぐに離れるように移動する。


「む? このマンホールがシェルターに続いているようじゃな」


 クエストマーカーがマンホールの蓋を指しており、源三郎が近づくと開閉のスイッチを見つける。


「中は下水道か」

「臭くないのが助かるね」


 マンホールの蓋を開けて下水道を進んでいくと、入植者達のシェルターと同じ扉を見つける。


「来たのね、今開けるわ」


 インターコム越しに声が聞こえたかと思うと、黄色い回転ランプが点灯してシェルターの扉が開く。


「ようこそ、こんな非常事態じゃなかったら大歓迎してたんだけどね」


 シェルター側から出てきたのは白衣をきた壮年の女性。

 胸のネームプレートには研究室室長アレイアと書いてあった。


「ゼニス支社の研究室室長のアレイアよ」

「フリーパイロットの源三郎じゃ、生存者は?」

「私を含めて50人よ。ほとんどは最初の襲撃で死んだわ」


 お互いに自己紹介しながらシェルター内に招かれる源三郎達。


 シェルター内にいる生存者達は皆憔悴しきっており、無気力に座り込んでいたりする。


「ここまで来れたのは貴方達だけ? よくあのロボットと戦えたわね」

「イレイザーとなら何度かやりあったからのう」

「ふーん、あいつらイレイザーっていうの? どんな奴ら?」


 アレイアは源三郎からイレイザーについてあれこれと聞き出そうとし、源三郎は自分達が知っているイレイザーの知識を伝える。


「まさかそんなエイリアンがいたなんて………」

「所でこの星は何故イレイザーから攻められたかわかるかの?」

「………多分ここで見つかった古代エイリアンの遺物が原因かも。それまで何もなかったし」


 源三郎がマライアにイレイザーが襲ってきた理由を聞くと、遺物が原因だと答える。


「遺物ってどんなの?」

「多分ビーコンと思われるんだけど………これよ。調べた限りでは座標データが分割されてて、あれ単体じゃ意味がないの」


 彼方が質問すると、マライアはブレスレットを操作して遺物のホログラム映像を表示する。

 遺物の形は座標を示すビーコンの形をしていた。


「分割されてる?」

「そうとしか思えないのよ。解析した結果、所々歯抜けでいくつ必要かはわからないけど、これと同じものを集めないと正しい座標がわからない仕組みね」

「そんなものを何故イレイザーが?」

「それはこっちが聞きたいわ」


 室長のマライアは遺物の解析結果を大まかに説明する。


「その遺物とやらはどこに?」

「上の階の研究室よ。そのエリアに対空砲の制御装置や妨害電波を出してる機械があるわ」


 鈴鹿が遺物の場所を聞くと、マライアはにあると答える。


「それをわしらで何とかしろと?」

「ええ、成功したらゼニス本社に掛け合って報酬出すわ」

「まあ、クエストもそこを何とかしろと言う話だし、引き受けるよ」


 クエストにもそこに行かないといけないことになっているので、彼方は室長のマライアの依頼を引き受ける。


「ありがとう。こっちに幹部クラスの部屋につながる直通エレベーターがあるわ。そこから階段で研究室に向かってちょうだい」

「直通エレベーターかあ………何か途中で止まりそう」

「もしくはエレベーター内で戦闘とか」

「ありえますねえ」


 マライアは直通エレベーターまで案内してくれるが、彼方は直通エレベーターと聞いて嫌そうな顔しながらそんなことを呟くと、ノエルや鈴鹿もお約束的な展開を予想する。


「まあ、他にルートもないし、それで行くしかないじゃろ」

「クエストも他のルート示してないし諦めていくしかないね」


 彼方達は覚悟を決めると、直通エレベーターに乗り込む。


「そこそこ広いね」

「今のところ何も問題ないようですね?」


 源三郎達全員が乗り込むとエレベーターは動きだし、かなりのスピードで階層を上がっていく。


 そして、そろそろ目的地である幹部クラスの部屋に近づいたかと思うと、エレベーターの天井に何か重たいものが飛び乗ってきたような衝撃が響いてくる。


「ほらやっぱり!」

「そんなことをいってる暇はないぞ! クエストが更新されてタイムリミット以内にエレベーターから脱出しろだとさ!」


 彼方は自分の予想が当たってはしゃいでいるが、他のメンバーはそれどころではない。

 エレベーターの天井を回転ノコギリで強引に穴を空けようとする存在がいて、源三郎が言うように、時間内に脱出しないとゲームオーバーと言う厳しいクエストが課せられる。


「今の衝撃でボタンが反応しない!」

「ワシがこじ開ける!」


 ノエルが開閉ボタンを連打するが反応しないと叫ぶ。

 源三郎がガンブレードをドアの隙間にねじ込むと、梃子の原理で強引にねじ開けようとする。


「うわっ! 天井壊された!!」

「なんですかあれ!?」


 天井を破壊して現れたのは機械でできた巨大な蜘蛛。

 脚の一部がドリルや回転ノコギリやペンチになっており、複眼のカメラアイが赤く光る。


「開いたぞ! 急げ!!」


 エレベーターのドアをこじ開けた源三郎はそう叫ぶと予備武器のショットガン【花火】で機械の蜘蛛を攻撃する。


「げっ! あの蜘蛛、エレベーターのロープ切断しようとしてる!?」

「急いで!!」


 ノエルが指差して叫び、配信用のドローンカメラがノエルの指差す方向にカメラを向けると、機械の蜘蛛が回転ノコギリでエレベーターのロープを切断しようとしていた、

 ロープはかなり頑丈なのか火花を撒き散らしているが、切断されるのも時間の問題だった。


「お爺ちゃん!」

「よし! ワシも手伝ってやるよ!!」


 彼方達がエレベーターから脱出できたのを確認すると、源三郎はエレベーターのロープを攻撃して切断させる。


「おじ───」

「間一髪セーフ!」


 エレベーターが落下する刹那の瞬間、源三郎はスタントアクションのように廊下に跳躍して、着地と同時にエレベーターと機械の蜘蛛が奈落の底へと落ちていった。


「んもー! ハラハラしたじゃない」

「いやはや、すまんのう」


 彼方は源三郎に抱きついたかと思うと、胸をポカポカと叩き、源三郎は困った顔しながら彼方の頭を撫でる。


「あのー、このエレベーターの底ってシェルターに繋がっていませんでした?」

「………コラテラルダメージだ」

「いや、ダメでしょ」


 鈴鹿がエレベーターシャフトを覗き込みながらそんなことを言うと、源三郎は明後日の方を向きながら呟き、ノエルがツッコミをいれる。

 配信コメント欄では彼方達の漫才みたいなやり取りに笑っていた。


「取りあえず、先に進むぞ」


 源三郎はそう言って先に進もうとすると、配信コメント欄では誤魔化したなど茶々が書き込まれていく。


 道中何度かイレイザーとの小競り合いはあったが、源三郎達は撃破していき目的のフロアに到着する。


「まずは妨害電波の解除と対空砲の制御を取り戻すことだったな」


 目的のフロアに到着した源三郎は目的を再確認し、クエストマーカーにしたがって進んでいく。


「何度か戦闘はあったけど………あっけなく終わったね」

「なんと言うか、拍子抜けじゃの」

「これならレースに間に合いそうですね」


 源三郎達は目的地の妨害電波装置を破壊し、対空砲の制御を取り戻すが、あまりのあっけなさに物足りなさを感じていた。


「取りあえずあとは遺物を回収して終わりかの」

「研究室はあっちだね」


 源三郎達は最後の目的地であるエイリアン文明の遺物が安置されている研究室に向かう。


「………なるほど、ボス戦とかない理由はこういうことか………」


 源三郎は研究室前に到着すると、妨害電波や対空砲の制御を取り返す際にイレイザー側の抵抗が弱かった理由に納得する。


「研究室区画ごと奪われてるね………」

「そういえば、ここに向かう途中イレイザーの船が飛び立っていきましたよね?」

「あの船が遺物を奪って行ったっぽいね」


 本来研究室がある区画は削り取られて外の景色が広がっていた。


「えーっと、このクエストの続きはアップデート待ちだそうです」

「あー、MMOだとたまにあるのう」

「メインクエスト、追い付いちゃった感じだね」


 遺物をイレイザーに奪われたのを確認すると、クエストが一旦クリア扱いになり、続きはアップデートされるまでお待ちくださいと表示される。


「取りあえず昼の配信はここまで、夜の配信は運営のレースイベントを配信したいと思います。お爺ちゃんが出場するから皆応援してね!」

「面白かったらチャンネル登録と高評価してね!」

「それでは皆様、夜のレースでお逢いしましょう」


 ストーリークエストが終わり、現実時間もちょうど良い時間帯だったのもあって、彼方は昼の配信を終わらせる。


「わしはこのままレースの練習してくる」

「お爺ちゃん、頑張ってね!」

「私達も応援するから」

「それではお先に失礼します」


 彼方達は源三郎に声援をかけるとログアウトしていく。


「よし、ワシの冒険はまだまだこれからじゃ!」


 源三郎は自分の頬を叩いてレースに挑む。

 源三郎、彼方、ノエル、鈴鹿、四人のギャラクシースターオンラインの冒険はこれからも続いていくのであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お爺ちゃん、認知症予防にスペオペVRMMO始める パクリ田盗作 @syuri8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ