第47話 アイリスとデュナミス
ダンジョンに戻った俺達は休むことなく、デュナミスさんの泊まっている宿へと足を運んでいた。宿に入ると、顔を覚えられていたらしく、そのまま席に通される。
どうやら、デュナミスさんから話は通っているようで、すぐに呼んできてくれるそうだ。
彼の言った試験は合格したのだが、ちょっと緊張するな。アイリスはというと……
「うふふ、これでパパをぎゃふんと言わせるんだから!!」
などと得意げに笑っている。よっぽど『エンデュミオンの館』をクリアしたのが嬉しかったのだろうか? いや、違うな。彼女はデュナミスさんに認められる事が嬉しいのだ。
デュナミスさんが来るまで、サービスで出てくる紅茶とジュースを楽しむ。流石は高級宿である。
そして、前あった時と同様にローブに身にまとったデュナミスさんがやってきた。
「すまないね、ちょっと懐かしい知人にあって話が盛り上がてしまったんだ」
「いえ、こちらこそいきなりやってきてすいません。ただ、一刻も早く報告をしたかったので……」
挨拶をかわしながらこの声どっかで似た声を聞いた気がするんだよな……まあいいか。
「その様子だと『エンデュミオンの館』には行ったようだね。思ったよりも早かったけど、何かあったのかい?」
「はい、ちょっと変わった格好ですが、面倒見のよい冒険者に会う事が出来て、その方のおかげでスムーズに攻略できたんです」
「パパが言っていたダークフレイムっていう冒険者に会ったの!! 変な恰好だけど、すごい面倒見がよかったのよ!!」
色々と教わって嬉しかったのか、アイリスも俺に同意する。だけど、どうしたのだろう? なぜかデュナミスさんは険しい顔をしている。
「変な恰好……そうかね、ダークフレイムはの恰好はお洒落じゃなかったかな?」
「ううん、変な恰好だったわ!! だけど、すごい魔法を制御するのが上手だったの。昔憧れたパパの魔法みたいだったわ」
「うぐぅ……」
アイリスが無邪気に答えるとデュナミスさんはうめき声をあげた。何か変なものでも食べたのだろうか?
仕切り直すようにデュナミスさんが口を開く。
「まあ、いいさ。それで……『エンデュミオンの館』をクリアできたんだね?」
「ええ、確かに厄介だったけど、私たちの敵じゃなかったわね。アレイスター!!」
「ああ、わかってるよ。お嬢様」
アイリスはどや顔で『エンデュミオンのメモ』を取り出し、俺も少し自慢げに未使用の『制御の杖』を取り出した。
それを見て、デュナミスさんは一瞬目を細め、メモと杖を手に取った。
「ふむ……確かに本物のエンデュミオンのメモだ。それに制御の杖も未使用だね……どうやって攻略したのか訊いてもいいかな?」
「もちろんよ!! アレイスターのサポートと私の魔法で楽勝だったんだから!!」
得意げに胸を張っているアイリスを可愛らしく思いながら俺は『エンデュミオンの館』での出来事をはなす。もちろん、俺の召喚能力のことはぼかしてだ。デュナミスさんを信用していないわけではないが、あまり広めないほうがいいだろう。
一通り話すと、デュナミスさんは大きく頷いて口を開く。
「そうか……アイリスは自分の魔法使いとしての道を見つけたんだね」
「ええ、私の『暴走魔法』は制御できないから、実験で使ったり、地上の魔物と戦うことを仕事としている宮廷魔法使いとしては役に立たないわ。だけど……強力な敵がたくさんいて、地形を壊しても直るダンジョンなら活躍できるの。ううん、むしろ多少の理不尽も吹き飛ばす私の魔法の方が役に立つ場合だってある。だから私は冒険者を続けて……深層を攻略してみたいと思っているの」
「『エンデュミオンの館』をクリアしたならばわかるだろう? かつての勇者たちが戦った悪魔は強力だ。そんなのが深層にはうじゃうじゃいるんだ。そいつらと戦う事になるかもしれないんだよ」
「そうね……私一人だったら無理かもしれないわ……でも、私には仲間がいるもの。将来英雄になるアレイスターがね!!」
デュナミスさんの言葉にアイリスは力強く満面の笑みで答えた。それを受けてデュナミスさんはどこか寂しそうに、だけど嬉しそうに笑った。
「そうか……それがアイリスの道なんだね。あれを見てなお、深層を目指すと言えたなら私から君にかける言葉はもうないよ。アレイスター君、この子はちょっと口が悪いけど素直ないい子なんだ。面倒を見てやってくれ」
「面倒を見るなんて……むしろ彼女にはいつも助けられていますよ。安心してください。俺もアイリスと一緒ならいつか深層でも戦えるって思うんです、まあ、まだ中層の攻略中なんですけどね……」
途中で現実を思い出して弱音を吐いてしまったが俺の本音だ。アイリスの魔法と俺の召喚があればいずれ悪魔たちがいる深層だって攻略できると思うんだ。
「そうか……あれを見てそう言えるならば問題はない。アイリス……君の夢を応援しよう。ただ、心が折れたらいつもで帰ってきていいからね」
「大丈夫よ、パパ。でも……ありがとう」
アイリスとデュナミスさんはお互いを認め合うかのように頷いた。その光景を少しまぶしく思いながら一つ思い出す。
「そういえば……アイリスの婚約話は……」
「ああ、それならば気にしなくていい。あれは嘘だからね」
「「は?」」
デュナミスさんの言葉に俺達は思わず聞き返す。すると彼はいたずらっぽく笑った。
「まあ、アイリスが王都に戻ったら、デートをさせるって約束はしたけどね。帰らないならばその約束は叶わないから関係ないさ。君達はダンジョンから戻ってきたばかりなのだろう? せっかくだ。私がご馳走するからここで食事をしていきたまえ、君達の冒険譚を話してくれると嬉しいな」
「ようは私の覚悟を試したって事なのかしら……もう、パパの意地悪!! アレイスター、高いものを片っ端から食べるわよ!! エビのソテーと、高いお肉を持ってきて!!」
「いや、気持ちはわかるけど、少しは遠慮しろよ……」
「はっはっは、いいね。ならば高い料理には高いワインだ。アレイスター君も飲むだろう? ワインリストを高級ぶどうジュースを持ってきてくれたまえ」
デュナミスさんもノリノリだった!! 宮廷魔法使いってどんだけ儲かるんだよ!!
そうして、俺達はアイリスの冒険者を始めた時期の事やデュナミスさんの冒険者としての思い出話、を中心にもりあがる。
デュナミスさんとアイリスは今までの時間を埋めるかのように楽しそうに思い出を語っていた。
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これにてアイリス編終わりです。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
レベルダウンから始まる召喚無双〜俺だけ使える『マイナス召喚』は経験値を対価にあらゆるものを召喚するチートスキルでした。『英雄』『神獣』『聖剣』『魔王』を召喚し最強へ至る~ 高野 ケイ @zerosaki1011
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