第23話 プロポーズ

「ボクと、夫婦になってよ!」


 えっ!?……


「……ああ、よろしく頼む。」


 いきなりでとても驚いているが、この生活を過ごしていく中で俺もそういう気持ちが芽生えていたのは確かだし、俺に勇気がなくて言い出せなかったのも事実だ。ほんとは俺が言いたかったとは思っているが、言いだしてくれたアスタにも感謝している。

 アスタの行動一つ一つが愛おしく思えてくる。言ったはいいものの、恥ずかしくなって顔を赤らめる。そして俺の返事に喜びを感じている顔、仕草。俺は気づいたらアスタを抱きしめていた。


「うえっ!? どうしたの!?」


「……あぁ、いや。体が勝手にね。嫌……だった?」


「いやいや! 嬉しいよ!! ほら、おいで?」


 止まった時の中、俺たち二人は唇を重ねあった。そしてどんどん体を寄せていく―


♢♢♢♢♢♢


「あはは、どう……だった?」


「疲れたよ……君と俺じゃ体力が違うのかな。それに魔力がもうないもん……」


 いやぁ、疲れた。だって体力が違うんだもん。5回戦くらいしたよね? そんでMPが切れそうなんだ。あ、もう二桁……


バタッ


「スイ!? スイー!!」


 俺のMPが切れたことで時間停止が解除され、世界が動き始める。アスタは俺が倒れたことにとても驚いているようすだ。


「えっ!? お父さんどうしたの!?」


「お父さん大丈夫!? ……この匂いは?」


「あは、あははは……まずはスイを運ばないと! たぶん魔力切れだ!」


 シーナとグリムは謎の匂いに違和感を覚えつつも部屋へ行き俺を運ぶ準備をした。アスタは俺に魔力を少し譲渡して俺を連れていく用意をした。


「『魔力譲渡』」


「ん……まだ体がだるいな……」


「うん、完全に魔力を渡しちゃうと困るからね。その理由はちょっと後で。じゃあ部屋に移動しよっか。」


「ああ……すまないな。」


♢♢♢♢♢♢


「ふぅー……ありがとう。とりあえず動けそうにはなったよ。」


「いやー、これボクにも悪いところがあるからさ。ははは……」


 アスタは横になっている俺に謝る。うん……かばうことも出来ねーわ。それで俺が部屋に移動する前の魔力譲渡の話なんですが、ちょいと説明をいただきました。


 なんでも、【魔導】に統合されているスキルの一つの【魔力譲渡】の効果であり、自分の魔力を他者に分け与えることが出来るらしい。一気に全部分け与えてしまうと自分自身の魔力が回復しなくなってしまって今後の魔法の使用にも悪影響が出る可能性があるらしい。特にアスタは悪魔で俺は人間だから余計にどうなるかわからないんだとか。それを言うなら俺たちが止まった時の中でしていた行為もあれらしいけどネ。


「そういえばシーナとグリムは?」


「二人は根気強く魔力を感じる練習してるよ。君がおかしいだけで普通はかなり時間かかるんだからね?」


「そうでしたね……」


「はい! ってことでもうスイは寝てて! あとはボクがやっておくからさ!」


 俺はアスタの言葉に甘えてもう少しだけ眠ることにした。疲れでも溜まっていたのだろうか。すーっと眠りに落ちて行った。


♢♢♢♢♢♢


「ふわぁーあ、良く寝た気がする……今何時だ?」


「あ! お父さん起きてる!」


「お、グリムか。ごめんな、倒れちゃって。」


「ううん! お父さんも魔法練習してたんだもんね! お母さんから魔力が切れたらああなるって教わったし、俺はならないよ!」


 どうやらアスタは俺が倒れたのを利用して魔力が切れたときの症状について教えていたらしい。魔力切れを起こす前に魔法の使用をやめることが大事なのだと。昔読んだことのある漫画にMPは使い切ると増える……みたいなのがあった気がするがどうなんだろう? そんなことしなくても増えてる気がするんだけど。


「よく寝たねスイ。もう晩御飯の時間さ。起きれそうなら自分で降りてきて。起きれそうにないなら肩貸すからさ。」


 結婚する、と言ったからだろうか……アスタの行動に新妻感とでも呼ぶべきものが増してきているような気がしなくもない……まだちょっとしか見てないから断言できないが、どこか変わった気がする……まあ悪いことじゃないしいいか。


「ああ、大丈夫だから自分で降りるよ。」


 俺がそう答えるとアスタはぷーっと頬を膨らませる。


「もう! そこは「お願いしようかな……」とかじゃないの!?」


 えぇ……少女漫画読んだ女子みたいなこと言うじゃん……俺だって男なんだからかっこつけたいんだからね! まあアスタの望みらしいので応えてみますか……


「あぁー……じゃあお願いしようかな。」


「うんっ! 任せて!」


「……お父さんとお母さん、イチャイチャしすぎ……」


「「あ。」」

 

 グリムがこの一連の流れを見ていた。そりゃ親代わりとは言え親がイチャイチャするのを見るのはどこか嫌だというか……そうだよなぁ。


「あー、お父さん起きたんだ! 聞いて! 私ちょっとだけど魔力が感じられるようになってきたの!」


「そうなんだよねぇ……天才の子は天才ってことなのかなぁ……実子じゃないけど。」


「すごいなシーナ! ―どうなんだろうなぁ……もしかしたら大魔導士の子かもしれないぞ?」


「どうだろうねぇ。」


 そんな何気ない会話を交わしながら全員が椅子に座る。そして全員でそろって合掌をした。


「「「「いただきます!」」」」

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パワー・グリード ~他者の力を奪う特異体質のオレは魔物の力を奪って頂に上る~ 辛味の視界 @yozakuraice

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