第22話 新魔法

「さて、スイ君。君もそろそろ最後の魔法に挑戦するときが来たみたいだ。」


「おぉ……!」


「えー? お父さんとお母さん魔法の練習するの?」


「俺もやりたい!!」


 俺が家に帰って少ししたあと、アスタがこんなことを言ってきた。最後の魔法、というのは古代属性、空間・時間魔法、のことだろう。俺が残しているのはこの三つと無魔法、神聖魔法のみだ。無魔法も少しづつ練習していけたらなと思っている。


「よーし、じゃあみんなで魔法の練習しよっか! 『空間転移』!」


 アスタは俺たちがここに来たのと同じ魔法を使って、俺たちを森の中へと移動させた。これが俺がこれから習得する空間魔法の一つだ。これがあれば移動だけじゃなくて戦闘もかなり幅が広がる……!


「んっ……ここどこだ?」


「うわぁ……きれー!」


 シーナとグリムは見たことのない場所にかなりはしゃいでいる様子。二日ほどしか経ってないがかなり懐かしい気がする。俺は大きく息を吸って吐き出した。


「二人とも! こっちおいで!」


 アスタが二人を集めている。これから魔法を使うための基礎を教えるんだろう。それか適正を測るとかかな?


「はーいこっちに背中向けて。……ふんふん、なるほどなるほど……シーナは水、氷、植物、空間魔法が使えるみたいだね。グリムは火、土、雷、時間魔法か。いい魔法使いになれそうだ!」


「私魔法使える!? ……でも四大属性一つしかない……あとはハズレ属性……」


「やったー! 俺四大属性二つもある!」


「「四大属性?」」


 アスタの伝える魔法適正を聞き、すごいなと感心していると、二人から聞きなれない言葉が聞こえた。


「え? 二人ともすげー魔法使いなのに四大属性しらないの?」


「だって四大属性が一番強いんでしょ?」


 ん???? 強くないとは言わないが一番強いとは言い切れないと思うが……だって使い勝手の面でも雷とか氷の方が上だと思うし。速度の雷、範囲攻撃の氷って感じで。あとかっこいいから多用してるんだけど。


「それ誰から聞いたの?」


「え? 普通じゃないの?」


 おっと……いや、待てよ?


「これさ、魔力量と消費魔力量が釣り合ってなくてみんな使えてないんじゃないか?」


「あ……ああ! そういうことか! 道理で街で見た魔法に違和感があったわけだ!」


 なるほど、魔力の操作が上手くないから魔法を一つ使うにも魔力をたくさん消費し、魔力操作による最大MPの増加がないからMPが多くなく、数発撃つだけでなくなってしまうんだ! はえー、人間の魔法にそんなデメリットが……ほんとここに来れてよかったと思うわ。


「その辺は気にしない! とりあえずは基礎練習からね! スイ、こっち来て!」


 アスタは二人にやるべきことを伝えると俺を自分の下に呼んだ。


「じゃあ古代属性からやってみよう。まずはちょっと前にも言ったけど『鑑定』は古代属性の魔法だからね。他には……身体強化とか結界とか魔法の複合とかかな? はるか昔に使われていた魔法なんだよね。悪魔やら天使やらがたーくさんいた時代さ。」


 なるほどなるほど……まずは鑑定が気になってるから使ってみたいよな。


「古代魔法には詠唱がないんだよ。なんなら魔法名を言うことすら必要ないんだよね。『鑑定』はステータスを読み取るイメージだよ。」


「わかった。やってみるよ師匠。」


 魔法を教えてもらっているから師匠呼びに戻す。敵のステータスを映し出すイメージ……


 ……『鑑定』


「うおっ、見れるようになった!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:アスタロト レベル:999

スキル:【魔導ⅩⅩⅩ】

HP:5000/5000 MP:99999/99999

STR:1000 VIT:1000 AGI:1000

INT:99999 MIN:99999 DEX:5000

称号:【稀代の魔導士】【悪魔への転生者】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 はえ? なにこれ、バグか? ぶっ壊れたか?MPとINTとMINが99999だし。それに……称号の【悪魔への転生者】って? 元々悪魔じゃなかったってことですか?


「お? 見えたかな?」


「み、見えたけど……」


「あぁ、称号のこと? ボク元々悪魔じゃなかったんだ。言ってなかったっけ?」


 うーん、言ってないねぇ。意外とあの国のこと知ってたのは人間のころに住んでたとか?

 そんでこのスキルですよ。【魔導】? そんでそれ一つだけ? 複合スキルとかいうやつか?


「今気にすることじゃないよ! 次は空間魔法! やってみよー!」


 空間魔法、瞬間移動って夢だよね。学校行くのとかで使ってみたかった。あの寝坊寸前のときね。ああ、瞬間移動出来れば……って何度思ったことか。あるあるだと思います。瞬間移動ではなくてもどこでも扉を使いたいと思った人は多いはず。


「イメージは出来た。《我が体に満ちる魔力よ、空間と空間を繋ぎ我が道を作れ!》『空間転移』!」


ヒュンッ


 詠唱を完了した後、俺が目を開けるとそこは先ほど立っていた場所とはまるで違う場所だった。これが空間魔法か……まじで楽しい!!


ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 どんどんどんどん転移しまくる。やっべー、楽しすぎるだろ。もっと試してぇ! けどそろそろMPが尽きそうなんだわ。時間魔法を試さないとだからMPを残さないといけないんだよ。


「あははは、気に入った? かなり楽しそうだね。―でも時間魔法をする時間だよー。」


 俺が思いとどまろうとした時間と同じタイミングで帰ってこいとの通達がなされた。


「はいーっす。次教えてください!!」


「おっけーだよ。時間魔法はその名の通り時間自体を操る魔法なんだよ。時間を止めたり対象の時間を巻き戻したり進めたり……過去や未来を見ることも出来るはずさ。ちょっと使うのが苦手だからボクはあまり使わないんだけどね。」


「わかった! やってみるぞ!」


 イメージしやすいよな。日本にはそんなファンタジー小説とかファンタジーバトル漫画とかたくさんあったしな。日本最高! 日本最高!


「《我が体に満ちる魔力よ、我の望みに応えて世界の時を止めろ!》『時間停止』!」


ピタッ!


 世界の時間が止まった。その中で動けているのは俺とアスタだけ。いや、どこかにいるのかもしれないけど、俺の確認できるのは俺たち二人だけだ。


「おっ、出来たじゃん! これでほとんどの魔法を覚えられたね!」


「ああ、師匠のおかげだよ。」


「ふふっ、もう師匠じゃないよ。これで君は一人前さ!」


「うっ……うぅ、ありがとう……ございました……!」


 なんだか泣きそうになってくる。なぜだろうな? この気持ちが言い表せない。嬉しいような、寂しいような。そりゃ魔法を覚えて一人前になれたのはうれしい。けど師匠と弟子の関係が終わるっていうのが寂しいんだ。


「ご褒美がわり……じゃないんだけどさ。一つ言いたいことがあるんだ。」


「な、なんですか……?」


「―ボクと、夫婦になってよ!」

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