ポニーテール女子、安藤ひより、二十七歳。

Y.T

 私の胸は、Gカップ!

「安藤くん、この間の事なんだけどね——」

 私、あんどう、二十七歳!

 皆んなはアラサーアラサー言うけど、四捨五入すれば二十五歳! つまり私はまだまだピッチピチ!

 ほら見て見て? 目の前のかつら部長だって、私のGカップに釘付けよ!

「安藤さん? 話の途中で申し訳ないけど——」

 その声はまさみちくん!

 中途入社で、韓国風の、イケメンくん

 きっと彼も私の美貌にメロメロなんだわ!

 私はくるんって振り返る!

 そう! くるんっ、てね?

 ってアレ? 将道くん、私の胸を見ていない?

「安藤さん、ぶ、部長が、……」

 え? うそうそー! ああ! またやっちゃった!

 私のポニーテールは切れ味抜群!

 きっと将道くんに振り向いた時にバッサリいっちゃったのね!

 部長の頭の上半分が、なくなっちゃった!! テヘッ?

「あ、安藤、さん。将道くんも……」

 この声ははたさん? 

 え? 将道くんが? どういうこと!?

 あらやだ、いっけなーい!

 将道くんが首チョンパ!

「小幡さん! ちょっと安藤さ——」

 なになにー?

「うわ、あんど——」

 え? コッチも?


 ズバッ、ズバッ、ズババババーッ————!


 そして私は今、宇宙に居た。

 何がいけなかったのだろう。

 私のポニーテールで切れて、そのまま一緒にここまで来た、逆さまになったオフィスの上半分に、体育座りしながら考える。

 ポニーテールは、ただの髪型だ。

 それでも、物凄い破壊力を秘めている。

 一見何気ないものでも、色々な顔を持っているのだ。

 私の目の前で青く輝く、この地球もそう。

 丸く、美しいこの球体にも、私達という醜い存在が住んでいる。

 つまり醜さとは、美しさの、ほんの一部に過ぎない。

 私はこれからもこのと共に、歩んでいこう。

 何故なら私も、この惑星の、一部、なのだから————。


 でも、ちょっと待って? 私どうやって帰れば良いの!? 

 いやー! ヤバイヤバイ!

 帰れなかったらちょーヤバい!!

 ってキャー!! またやっちゃった!!

 つい首をぶんぶん振ったら、地球が、斬れちゃった! あはっ?


 半分になった地球の割れ目の奥、そこに閉じ込められていたマグマが、勢いよく外へ、飛び出している。そら宇宙ソラの境目など関係なく、ぶきを上げて、気化している。

 そんなマグマも、やがて固まり、割れ目の隙間を埋めて、地球は再び一つになった。

 そう、それはまるで、壁と床の隙間を埋める、コーキング材の、ようだ————。

 

 終わり。 

 

 

 

 

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 ポニーテール女子、安藤ひより、二十七歳。 Y.T @waitii

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