姫路城から大阪城を経て道頓堀で年越しして大阪天満宮で初詣〜徒歩は過酷だけどバイクなら楽勝だろ
明石竜
第1話
「こんなん絶対無理だろ。十キロでもきつい」
ある秋の日、姫路城から大阪城までの約100キロの道のりを
まる一日かがりで夜通し歩き通す、関西エクストリームウォークの開催概要を見て、
姫路城近くに住むとある大学生が呟いた。
「でも、100キロくらいならバイクなら楽勝だよな」
そう思った彼は、バイクでその道のりをなぞっていこうと計画したのだった。
ただ、それだけだとあまりに簡単過ぎるので、走行距離が限られている電動バイクを使い、途中、各地の名所も訪れるというマイルールものちに課した。
そして2022年12月31日お昼過ぎ、彼は姫路城へ。
電動バイクで姫路城から大阪城を経て、道頓堀で年越しして元旦に大阪天満宮で初日の出を拝めて初詣。
そんな10月22日から23日にかけてあのイベントで実施された距離プラスアルファの計画を企て、彼は例のコースをなぞるように、姫路城から出発した。
「けっこう寒いけど、まあ余裕」
明姫幹線沿いをシュイィィィーンと特有の走行音を立てながら走っていると、
後方から、ブォン! ボボボボボォン! ブォォォォーン!
と爆音を立てたバイク集団が彼を猛スピードで追い抜いていく。
マフラー改造して、騒音出しまくって迷惑な奴らだよな。国道沿いって、
ああいう連中の遊び場になってしまってるし。その点電動バイクは
マフラーついてなくて走行音静かで環境にも優しいし、メリット尽くしだよ。
まあ、冬に乗る時は電動でも防寒用のマフラーは巻いてた方がいいけど。
得意げに走っていると、あっという間に18キロほど先の鶴林寺に到着。
藤井聡太に公式戦無敗かつ彼に勝利した最年長棋士(2023年末時点)、井上慶太九段をはじめとして、ゆかりのプロ棋士を数多く輩出している将棋のまち加古川市の名刹で、加古川青流戦決勝の舞台に使われることもあり、過去には王将戦と竜王戦も行われたことがある。
ここで少し休憩をとって、明石方面へ。
鶴林寺から西に三キロほど進んだ別府の辺りは、故安倍元総理が1980年代前半、神戸製鋼所加古川製鉄所に勤務していた頃に住んでいたことがあるらしい。
加古川市のお隣、播磨町と明石市との境に近い交差点で突き当たる、人工島から明石西インターにかけて南北に延びる二見港土山線。普段は車の通行量は多いものの、歩いている人はまばらな沿線ではあるが、令和四年十一月十三日午後、天皇皇后両陛下の車列が通過された時には多くの人々が沿道から声援を送った。
沿道沿いの明石西高校は、数々の暴言発言騒動で自ら辞任を決めた泉房穂明石市長さんや、気象予報士の蓬莱大介さんの母校である。
例のコースでは東二見付近で海沿いの道へ降りて行ったが、バイクで走っている関係上、彼はそのまま明姫幹線沿いを突き進むことにした。
ちなみに明姫幹線から逸れて、二見港土山線から県道718号明石高砂線の方へ進むと山電東二見駅までの間に、元大関琴奨菊(現年寄・秀ノ山)も訪れたことがある御厨神社や、蓬莱さんのご実家の不動産屋、蓬莱さん&泉市長さんの母校、二見小学校もある。
明石市内の明姫幹線沿いをずっと進んでいると見えてくる江井ヶ島中学は、ワールドカップでもご活躍された長友佑都選手の妻で女優の平愛梨の出身校である(在学中に上京)。
ここまで特に大きなトラブルもなく進めていたが、約30数キロ地点付近で
あっ、ヤバい。バッテリそろそろ切れそうだ。どこかで充電しないと
ついにそうなってしまい、彼は少し焦る。バイクを押して歩くことにし、
近くのお店で充電をお願いすることにしてみたのだった。
「あの、今、電動バイクで大阪の方へ向かっておりまして、バッテリーが切れて
しまいまして、もしよろしければ、少しの間、コンセントを貸していただいて
充電させてもらえないでしょうか?」
「申し訳ないんですけど、うちでは対応致しかねます」
即、やんわりとお断り。
そうですよね~。あれはテレビだし、出川さんだからやってもらえるわけであって。まあカットされてるところで散々断られまくってるかもしれないけど。放送されるのって、ロケ全体のほんの一部だけだし。それにしてもバイク押して歩くのって、普通に歩くよりもきついぞ。出川さん的にヤバいよヤバいよ状態だよこれ。このペースのままだと予定通りにゴールに辿り着けないかもな。
二件目もお断りされた。
現在の気温十度以下ではあるが、重い乗り物を押しているので汗も出て来た。
数十分押しているとさすがにきつくなって来たので、
「けっこういっぱいあるじゃん」
スマホ検索で見つけた公共の充電スポットに頼ることにしたのだった。
出川さんも公共のスポット使ったらもっと楽に充電場所見つけられるだろうけど、
それだと番組としてつまらないから使わないんだろうな。
フル充電し、電動バイクで再出発。
約40キロ地点の明石公園を経て、東経135度の日本標準時が通る天文科学館を通り過ぎたあとは、神戸マラソンのコースをなぞるように進むことに。
明石海峡大橋、関西の湘南とも呼ばれる須磨海岸、新長田駅前の鉄人28号モニュメントを立ち止まって写真を撮りSNSに上げるなどして楽しみ、大阪へ向けてどんどん近づいていく。
約63キロ地点の神戸市震災復興記念公園に辿り着いた頃には、辺りはすっかり真っ暗に。
「まだ六時前だし、あと40キロくらいだしこの調子でいけば予定通りゴール出来そうだな」
近くのファミレスで夕食を取り、その後も特にトラブルなくどんどん進んでいく。
約77キロ地点の芦屋市付近で三度目の充電を終え、
「もう充電なしでもゴールまで行けそうだ」
引き続き順調に進んでいたが、
あっ、ヤバい。
バッテリーは余裕なものの、タイヤがパンクしてしまった。
買ったばっかなのにこれは想定外。出川さんの番組でもこんなトラブルないよな。
いやカットされてる部分で何度かしてるかもしれないけど。
修理は大目に見て一時間くらいかな。それくらいで直れば間に合うな。
一縷の望みをかけ、付近のバイク店をスマホ検索で見つけそこへ向かってみたが、
「やっぱ閉まってるし、年末なのも不運だな。あと20キロくらい押して歩く
しかないか」
時刻は今午後八時過ぎ。年内に道頓堀まで辿り着くには、厳しい算段となった。
「バイク押してなければ、ちょっと早歩きするだけで何とか間に合うんだけどな」
バイクを押しつつも、なるべく早歩きで進んでいくことに。
涼宮ハルヒシリーズの舞台でもある夙川河川敷や、福男選びで有名な西宮神社も散策したかったが断念。
23時を過ぎた頃には、大阪府内へと入ることが出来た。
そして、
「人生で最高に疲労した年越しだった」
無事、道頓堀で年越しの計画成功!
そのまま徹夜で過ごし、早朝、大阪天満宮付近で初日の出を拝め、
初詣も果たせたのであった。
年内に大阪城を経由する計画も叶わなかったが、八割以上は計画通りになり、彼にとって最高の学生時代の思い出として残ることになったのだった。
姫路城から大阪城を経て道頓堀で年越しして大阪天満宮で初詣〜徒歩は過酷だけどバイクなら楽勝だろ 明石竜 @Akashiryu
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