最終章:素敵な誕生日プレゼント

「お会計は、一〇二六円です」


 どうやら牛子の食材費がかからず、調理費用だけしか払わなくて済むそうだ。


「またのお越しをお待ちしています」といってレジの店員は丁寧に挨拶をしてくれた。


 そして、井口一家は、『お腹マックス牛カルビ店』を立ち去ろうと店の外に歩み出てくる。


 暖かい春の風が吹き渡ってきた。ノボルは鼻で深呼吸する。


「焼き肉を食べた今、お前の気持ちはどうだ、ノボル」といって父親のセトシがノボルの顔を見た。


「あの綺麗な空のようだ。雲一つも浮かんでいないせいか、清々しいよ」


「きっと牛子も、天国があったら私たちをあの高い空から見守ってくれてるわよ」といって母親のタエコは素敵そうに微笑みを浮かべた。


「母さん……牛子のおかげで、親しいものの命に食らいつく勇気をもらえた」


「その通りだな。どうだ、ノボル、素敵な誕生日だろ?」


「そうだな……。ちょっぴりワイルドだけれど、素敵な誕生日プレゼントだ」というノボルは、車を止めてある遠くの場所に向けて遥々と歩き出す。



「ありがとう、美味かったぞ、牛子」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誕生日プレゼント マコ @ideazin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ