第5話 お久しぶりですな
「......」
「......」
十分ほど前に反応を示さなくなった少女とその母親の左半身と右半身を縫い合わせているのは長身痩躯の優男シシルである。
男はどこからともなく取り出した縫い針と糸でチクチクと並縫いを繰り返しているが、その縫い跡はどこかチグハグであった。
「ふむ、これが半分こ怪人というやつですな」
完成したそれをしげしげと眺めると、もう満足したのか馬車の上から投げ捨ててしまう。物悲しく落ちていくそれは、地面に激しくぶつかりバウンドした後体積の大きい母親の側が少女を押しつぶした。
シシルは今馬車に乗って移動している。元々は仲睦まじい三人の家族が小旅行のために借りていたものであったが、その途中おなかを空かせてうずくまっているシシルを乗せてしまったことが過ちであった。
最初は食料を分けてもらい涙ながらに感謝していたのだが、やがて満腹になったシシルは食後の運動がしたくなったのだ。それからの動きは迅速であり、にこやかにこちらを見ていた母親を頭頂部から正中線に沿って真っ二つに引き裂くと、そのまま左半身を武器にして娘の体も二つに切り離した。
唖然としてこちらを見ていることしかできない少女の両目が、切り裂かれた時の威力によって勢いよく飛び出し馬車の車輪にぷちゅりとつぶされる。
理解不能、といった表情の父親は大量の返り血を浴び口をパクパクとさせ馬を操ることしかできない。父親を見るシシルの表情が無表情から耳から耳へと不気味なほどに大きな弧を描いていくと、
「それにしても、馬車というものに初めて乗りましたがなかなか快適ですな。お馬さんのパカパカという蹄の音も心地よいですし、潮風と違い緑茂る街道を吹く風は爽やかで気持ちがいいですぞ」
それに潮風は丁寧に手入れしている武器を錆びさせることからシシルはどうにも、昔から好きになれないらしい。
前世界では海に囲まれた町に好んで住んでいたはずだったが、そんなことはもう記憶にないのかもしれない。
「して、御父上殿はこれからどこに行かれる予定だったのですかな?」
「は、はぁ。最近は忙しくしていたこともあって、偶には家族サービスも必要だろうとまとめて休みを取っていたんです。その時間を使ってオウ都で開かれるというサーカスを観に行こうと思っていました」
まあ、もうサービスする家族はこの世にいませんが。と消沈気味に話す父親に、流石に気の毒に思ったのかシシルは明るい調子で言葉を返す。
「ふむ、サーカスですか。実は私、生まれてこの方一度も見たことがありません。と言うわけで一緒に観に行きませんか?」
何が悲しくて何よりも大切な家族を殺した殺人鬼と一緒にサーカスなど観に行かねばならぬのだと父親は思ったが、無邪気に話しかけてくるシシルの長い前髪に隠れた両目が次第に昏く、底冷えするほどの冷たさを帯びてきたことに気づきブンブンと首がちぎれそうなほどの速度で首肯する。
「行きます。行かせていただきます!」
「おお、そうですか。いやあ楽しみですな。サーカスですか、どのような惨劇が繰り広げられるのでしょうな」
「はぁ。サーカスというのは恐らくそういうのとは縁遠いものだと思いますよ」
「え?」
「え?」
何を勘違いしているのやらシシルはサーカスを奇妙奇天烈な殺人集団だとでも思っていたようで、オウ都に向かう道すがらに聞く父親の説明にがっかりしたように肩を落とすのだった。
☆
「ほう、ここがオウ都ですか。外壁が見えてきた時から薄々感じてはいましたが随分と大きな町ですな」
興奮気味に馬車から身を乗り出し辺りを見渡すシシルの視線の先には、見渡す限りの大小さまざまな建物が並んでいた。
丁寧に舗装されている道は微塵の揺れも感じさせず、馬車の乗り心地を確かな仕事で高めており、優雅に伸びをしたシシルの両手が両脇を走っていた通行人の首をもぎ取る。
「おっとと......シシルさん、あまり暴れられると危ないですよ。あぁ、また通行人の首が取れたぁ!? まったく、それはそうと。そうですね、この大陸で一番大きな都市はどこかと聞かれたらほとんどの人間がこのオウ国にあるオウ都だと答えるでしょうね」
目の前で人が死ぬことになれたのか、もはや何も感じないのか、今や血みどろの馬車の御者席で通行人の生首からサッと目を背けながら、父親はオウ都について話し始める。その後ろでシシルはちぎれた右腕がくっついたアイスクリームをなめていた。
「この都市はオウ城というお城を中心に辺りを十二の地区で囲い。それを更にグルっと囲んでいるとても大きな城壁があるんです。それが先ほどシシルさんの言っていた来る途中に見えていた大きい外壁の正体というわけです。因みにここは十二の地区の内の第一地区になりますね。都市の中でも一番人口が多い部分で様々な人種、思想の人間が入り乱れる活気あふれる場所なんですよ」
交易や催し物なども多く開かれており、目的であるサーカスもこの地区の中央広場で行われるらしかった。
「ほほう、御父上殿は随分とこの町についてお詳しいようですな? 先ほどからとても饒舌ではないですか。いや、お元気になられたのならば重畳ですがな」
この町に入ってから父親が何やら次第に顔を赤らめ興奮し、口が回るようになってきていたのを腰に巻き付いた委員長の背骨を撫でつつ微笑まし気に眺めていたシシルだが、何となく、あるいは長い話の腰を折りたくてか、疑問に思ったことを聞いてみる。
「おや、これはお恥ずかしい。今は亡き妻にもよく注意されました。あぁ懐かしい。いえ、実はこの第一地区。私の生まれ故郷なのですよ」
「ほうほう、なるほど。とすれば、今回の小旅行は半ば里帰りも兼ねていたというわけですかな」
「そうなんです。といっても私は小さいころに親に捨てられ孤児院に拾われたので、その孤児院があるということなのですがね」
「なかなか険しい幼少期を過ごされていたのですな」
神妙な顔を大量の返り血で染めたシシルは、元気出してくだされと父親の背中を右手でポンポンと叩き、左手で近くを歩く少年の頭を押さえつけ肩、腰、地面と順々に折り畳んでゆき肉染みにする。
「まぁ、最愛の妻も娘もあなたに殺された今が一番険しいですがね。ははは」
「ははは」
傑作だとばかりに大笑いしあう二人を怪訝な目で眺める通行人の目を一つも残すことなくくり抜いてゆきながら、赤に塗れた馬車はゆっくりと第一地区の中央を目指して進む。
☆
この大陸で一番大きい都市であるオウ都、その中でまた更に一番大きい第一地区。そんな場所で何年もサーカスという隠れ蓑を用い、その裏側で大量に人攫いや殺人をこなしてきた自分たちは、最強だと疑っていなかった。
毎週土日限定で午後五時ごろから第一地区中央広場で開催されるサーカス。行うはゼンメツ雑技団である。彼らは表向きは大衆に大人気のサーカスを行う者たちだが、一たび裏を返せば殺しから人身売買までおおよその黒いことは何でもやる超犯罪者集団であった。
団長は相手を呪い殺すことを得意とするジュサツという男。副団長は日々のサーカス業で鍛え上げられた軟体で側溝の中から、果ては配水管の中にまで入りこみ諜報活動を得意とするグネルという男が勤めており、さらにそれらを支える構成員約二十五名で活動していた。
「ヒヒヒ、今日の公演も客の中にいい女が来てるといいなぁジュサツ。前のは腹ん中いじくってると二時間ともたずに自分で舌を噛み切って死んじまったからなぁ。つまらねぇぜ」
「望むのは自由だ。だからそこは問題にしねぇ。でもな、グネル。お前の視線は濁ってる。それじゃあいずれ見抜ける人間に出会ったときに一発でばれちまう」
本日開かれるサーカスの練習をしながら二人のトップは話し合っていた。
一人は今日の獲物への興奮を、もう一人は僅かな風の揺らぎを。
「なんか知らねぇが、今日はすげぇ寒気がすんだ。鼻をかんでも緑色じゃなかったから風邪じゃねぇはずだ。それに今日は呪いの調子もわりぃ。何時もは念じれば五十人くらいの首をねじ切れるんだが、今日は上手くいかねぇ。手ごたえがねぇんだ。まるで殺そうと思ってる人間を全部先回りして殺してるヤツがいるみてぇに」
「ああ? なんだよジュサツ。お前震えてんのか? ヒヒ、いつも傲岸不遜なくせに珍しく可愛いじゃねぇか。ま心配すんなって俺ら二人が揃っている以上失敗はねぇし、敵もいねぇ。だろ?」
「......ああ、そうだな。一先ずは今日の公演を成功させるとするか」
「おう!」
サーカス団の団長と副団長はどこまでも愚直に信じていたのだ。
自分たちが最強であると。自分たちは絶対的な捕食者であり、被食者にはならないと。もう少し、あとほんの少しでも危機感を維持できていればまた違った結末もあり得たかもしれないのに。
ゼンメツ雑技団の全滅は目前に。
☆
シシルたちは中央広場近くにあった繋ぎ場へとここまで運んでくれた馬車を繋ぎ、今は歩いて街の中を散策していた。
サーカスの開催時刻まではまだ一時間ほど猶予があったが、辺りはもうすでにかなりの人ごみと人だったもので溢れており馬車で進むのは困難だったのだ。
「いやあ、それにしても都会というのはどの世界でも沢山の人が集まってくるものなのですな。これが殺人のバイキングというやつですかな」
「絶対に違うのでこれ以上殺すのはやめてくださいよ! さっきから僕たちをみる通行人の目が冷たくて冷たくて......まだ夏なのに体の震えが止まりませんよ」
額の辺りから上が無い頭を抱え込み、脳みそをコネコネしながら出店を無邪気な顔でキョロキョロと眺めるシシルを必死に窘める父親。シシルの身長が二メートル近くもなければ、傍から見れば親子のように見えたかもしれない。
と、そんな時。何かを見つけた風のシシルはおもむろに、傍に立っていた街灯を引き抜くと前方へと思い切り投げつけた。
飛んでいく街灯は音速を越え、辺りに壊滅的な被害を巻き起こしながら一つのテントへと突き刺さり、水風船が割れた時のような血しぶきを吹き上げさせる。
次いで、なにやら男の声でだんちょう~というような涙交じりの声が聞こえてきた。
「言ったそばから何してくれてるんですか!? ってどうしたんですか、そんな神妙な面持ちで」
まさか自分の言葉がこれっぽっちも届いていなかったことに目玉を向くほどに驚いて、父親はシシルのほうを凝視するが何やら様子がおかしいことに気づく。
「いやあ、先ほどからこの中央広場付近でつまらないことをしている輩の気配を感じていたので、探していたのですがやっと見つけましたぞ」
「見つけた瞬間に肉片に変わってしまったような気もしますけどね。......というかあのテントってサーカス団のテントじゃないですか!?」
つまらなさそうな顔でテントへと走っていくシシルの初速に全く反応できなかった父親は、数舜遅れて後ろからどたどたと追いかける。その間にシシルは勢い余ってつんのめった姿勢でテントに突っ込み、また血しぶきを上げる。
嗚呼、第一地区名物であったゼンメツ雑技団によるサーカスは今日で店じまいだろうなと漠然とした無常観を感じながら、テントの中へと消えていったシシルの元まで駆け寄り手を引っ張り起こす。
「ありがとうございます。御父上殿」
「それで、説明してくれますか? あなたと私はまだそんなに長く一緒にいたわけではありませんが、少なくともこれまでの期間にあなたはずっと楽しそうにのほほんとした顔をしていました。......私をいびる時以外。まぁそれは今は置いておきましょう。そんなあなたが今、とてもつまらなさそうにへの字に口を曲げている理由。結構気になりますよ」
今朝からの付き合いであり、時間でいえばまだ出会ってから十時間ほどだろうか。一生を考えれば刹那の時間。だが一日の分量で考えればほとんど半日一緒にいたことになる。短いようでいてその刹那はこれまでのどんな経験よりも濃密で血なまぐさいものだった。そう、この父親ことパパン・ギョシャナンデスはシシル・イルイへと奇妙な友情のようなものを抱きつつあったのだ。
そんな感情の機微に気付いたのか、シシルは何やら照れ臭そうに頬を掻きながらもしかし確固たる思いを込めて話し始める。
「人を......人を殺すのに......呪いは......ナンセンスでしょうがあ!」
実にどうでも良い話であった。
それからもどれだけ呪いで人を殺してしまうということが、つまらないことかというのを懇々と語り続けるシシル。
周りの人間は唖然である。白目を向いてピクピクと痙攣している者もいる。が、それはシシルに頭ごと脊髄を抜き取られたからだろう。例外はパパンであろうか、彼はうんうんと激しく首肯しながら、時には涙を流しつつ阿保の殺人鬼の話に聞き入っている。
「.......であるからして~」
「......だからこそ、拳で~」
「......一番いいのはナイフですな。あれは肉の中に張り巡らされた繊維一つ一つをプチプチと断ち切る感覚が、命を奪っているという感覚を強く感じさせて~」
シシルが実演交じりに語り始めて一時間ほどだろうか、ゼンメツ雑技団の団長があっけなく殺されたと情報を聞き入れた団員がぞろぞろと彼らの周りに集まってきていた。その中には副団長のグネルの姿もある。団長であるジュサツがこんなふざけた奴にあっけなく殺されたという事実に涙を流し怒っていた。
「おいてめぇ!! ジュサツはなぁ、ジュサツはなぁ! てめぇみてぇなちゃらんぽらんのヒョロガリ野郎に簡単に殺されていい奴じゃねんだよ!」
「ははあ」
泡を飛ばしながら目を血走らせ叫び続けるグネルに話を中断させられ若干悲しんでいる様子のシシルは、気のない返事を返す。
「あいつはまだやれる奴だったんだ。幼いころから俺らは二人このゼンメツ雑技団で育ってきて、将来それぞれのやり方で沢山の人を殺して殺して殺しまわろうって約束をしてたんだ! それなのに......それなのに......」
登場してから好き放題ずっと叫び続けているグネルのほうを冷めた目で眺めていたシシルだったが、何かに気づいたように一度ぴくりと視線を副団長の肩越しに向け、突然耳から耳へと大きく弧を描く悪魔のような笑顔を浮かべ上げる。
「おいてめぇ! さっきから聞いてんのか! どこ見て......ゴブフォ」
「さっきからぐちゃぐちゃうるせぇんだよ。お前」
何かに気づいてから話を聞く素振りを全く見せなくなったシシルへと怒鳴り散らし、尚も言葉を続けようとしたグネルの上半身が唐突に破裂した。
いつの間にか、グネルの背後に立っていた身長百八十センチメートルほどの偉丈夫が蹴り飛ばしたのだ。
ふと、辺りを見渡せばさっきまでシシルたちを囲んでいたゼンメツ雑技団の残党たちは軒並み内側から破裂して地面に血の水たまりを作っていた。ゼンメツ雑技団は全滅した。
男は気怠そうにぼさぼさのごま塩頭をガシガシと掻きむしると、タバコに火をつけてゆっくりと肺に煙を入れてから、咽て血を吐く。
「ゴボッ、ゴボッ......あーやべぇ。医者にしばらく禁煙だって言われてたの忘れてた」
「ほほう、相変わらずですな刑事殿」
「お、お知り合いなんですか? シシルさん」
尚も血の混じった激しい咳をし続ける男は、ふらふらとした足取りでシシルに近づいてくると手を差し出す。
対するシシルは旧友に出会ったことを懐かしむかのような雰囲気で握手をしようとこちらも手を差し出す。
固唾を飲みその状況を見守るパパンが瞬きをしたその瞬間。
パスパスパスという何かが切れる音が聞こえると直後シシルの体がみじん切りになっていた。後に残ったのは委員長の背骨だけである。
目を見開くパパンの視線の先では、男の手にいつの間にか刃渡り三十センチほどのアーミーナイフが握られていた。驚くことにその刀身に血は一滴もついていない。
「ゴボッ......ふぅ、楽になった。っと挨拶が遅れたな。お前を
地面にどこがどの部位かもうわからないほどに粉みじんにされているシシルに向かって男が話しかけると、散らばった肉片たちがもぞもぞと動きだしノイズ交じりの声で返す。
「し、しつれいな。わた......しはいまはし......しると、なのっていますぞ」
「ほう、そうかい。それならば俺も一つだけ訂正しておくがな。お前がいなくなってから約三か月経った今、俺は刑事から警部に階級があがってんだよ」
「な、なんですと! それはおめでとうございますニコラス刑事殿」
再びパパンが瞬きのために目をつぶる瞬間と、ニコラスが血交じりの咳をして目をつぶった瞬間が重なった直後、目の前には五体満足でにこやかに拍手しているシシルが立っていた。が、そんなことはもう慣れているのかニコラスはシシルの頭を指でツンツンしながら気だるげに怒鳴る。威力が強いのか差されたところが陥没していくが、シシルはどこ吹く風である。
「だーかーらーもう刑事じゃなくて、警部なんだよ! それに名前と役職をくっつけて呼ぶな馬鹿、色々グレーなんだよそこんところ」
「な、なな。馬鹿とは酷いですな」
「なにやらお二人ともの言っていることがよく見えないのですが......ナナシサツジンキ? ニコラス・ケイジ?」
「おい、お前ワザとやってんのか
シシルもニコラスも異世界から飛ばされてきた身、こちらの世界には馴染みのない言葉を聞いたパパンは頭がこんがらがってきたようだ。
「といいますか、そうです。なぜ刑事殿がこちらにいるのですかな?」
「だからもう刑事じゃねぇって......ったく、まぁなんだ。知ってるか? ナナシという殺人鬼がいなくなってから
「それはおめでたいですな。後、私はナナシではなくシシルですよ」
「うるせぇ。それにこっち来るときに修学旅行生まで殺してんだろお前。証拠にその腰に巻き付いてる娘、背骨原骨娘って言う委員長やってた娘だな。親御さんにさんざ捜索してくれって言われて名前覚えちまったよ」
「そんな失敬な。私はどちらかというと巻き込まれた側なのです。修学旅行生の方はこちらの世界に召喚されただけで、そこに関しては私は関与していませんぞ。まぁ、その後皆さん殺しましたが」
「殺ってんじゃねぇかよ。でだ、話は戻るがそのビッグニュースがほかの地域に流れた途端にそれはもう凶悪犯の濁流が押し寄せてきたんだよ。皮肉にも
「そ、そのあとどうなってしまったんですか?」
「お? おう、そこからはもう俺がぶち
「おお、それはすごいですねニコラスさん!」
「ふむ、で。どうしてこちらに来たんですか?」
「あ?」
「ふむ?」
二人の間に微妙な沈黙が流れる。
間でオロオロするしかないパパン。
「だから言ってんだろ。お前を
「ふむ、なるほど。それでは早速やりますかな?」
方や最強の不死身殺人鬼、方や最強の警部。お互いがお互いになにやら因縁があるようで、見つめあう二人の表情は対照的だった。
シシルののほほんとした笑顔、ニコラスの気だるげなしかめっ面。どちらともなくゴキリと肩を鳴らしいざぶつかり合おうとしたその時。
「ま、まま待ってください。お互いの再開を喜んで殺し合いたい気持ちはわかります。でもここはあなたたちの元居た世界ではなく、異世界です。ですからせっかくですし、ここは一時だけでも手を組んでみませんか?」
「ふむ」
「あ? なんのために」
「それはもちろん――」
パパンが言いかけた言葉を引き継いでシシルが言う。
「ふむ、魔王惨殺......ですな」
こうして不死身の殺人鬼、被害者の背骨、最強の警部、強運の御者という四人の魔王討伐パーティが結成された。
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