お部屋見学、後編

 次に俺たちが向かったのは宮杜さんの部屋。紅葉さんの部屋は決して地味ではないが、だからと言って派手ではなく落ち着いた雰囲気だったが、果たして宮杜さんの部屋はどんな感じなのだろうか。


「「「お邪魔します」」」


「どうぞ……な、なんだか緊張しますね」


 宮杜さんの部屋は、なんというか「透明感のある」デザインになっていた。家具は白を基調としたものが多く、所々に飾ってあるインテリアもガラス製の物。


「へー、家具に一体感があっていいな」

「これ揃えるのに結構な金額かかったんじゃない?」


「ありがとうございます。あーお金についてはこっちに来てから稼いだお金で……」


「「あー、なるほどね」」


 迷宮攻略だけでもアルバイトよりもはるかに効率よくお金を稼げるのに、さらに宮杜さんはオオクチの一件でそこそこの報酬をもらっているはず。

 で、宮杜さんはそれを家具に使ったと。なるほど、いいと思う。もちろん貯金も大事だが、今現在の生活の質の向上に充てるのも悪くないと言えよう。


「なんだか広く感じるね~」


 七瀬さんがそう感想をつぶやく。確かに、俺の部屋の方が物が少ないはずなのに、なぜかこの空間の方が広く感じる。


「家具を白にすると、広々としたように感じるから……ですかね?」


「なるほど、そうかも。そっか、俺もこういう家具を買ってみようかな」


 家具の色に気を配るだけで、こうも雰囲気が変わるとは、勉強になったな。この発見があっただけでも、ルームツアーをしてみて良かったと思う。


「あら、これってオイルタイマー?」


「あ、はいそうです。好きなんですよ、オイルタイマー」


 紅葉さんがキッチンで何かを見つけたようだ。オイルタイマー……って何だっけ? ああー、これか。内部が油で満たされたガラスの中で水滴がぽたぽたと落ちる、液体版砂時計のようなインテリアだ。


「きれいだな」

「へーかわいいね! ところでこれって時間は正確なの?」


「あーまあそれなりに? きっちり図ったことはないですが、まあそれなりに当たってると思います。例えばこれは3分を測れるオイルタイマーなんですが、これで測ってカップラーメンを作ったら、まあおおよそ食べごろなので」


「なるほどね~」


「こういうおしゃれ要素のある家具はいいわね」

「俺もこういうの取り入れてみようかな」

「いいんじゃない?」


「……そういえばなんですが、紅葉さんに聞きたいことがあって」


「なにかしら?」


「私って水の巫女になってますが、オイルタイマーを持っていて不味いとかあるでしょうか?」


「? ……ああ、水と油だからって事? 大丈夫だと思うわよ。私だって火の巫女だけど、夏にはクーラー入れるし」


「そうですか、良かったあ」



 最後は七瀬さんの部屋。お邪魔します~。


「わお、可愛らしい感じの部屋」

「メルヘンって感じですね」

「凄く可愛らしい部屋ね」


 七瀬さんの部屋は、まるでお人形さんの部屋かのような、とても可愛らしい雰囲気だった。桃色の絨毯やカーテン、淡い黄色の布団、部屋の隅に置いてある大きなぬいぐるみ。


「お姫様が住んでそうな部屋って感じだな」


「そう? ありがとー!」


 小柄で可愛らしい七瀬さんらしい部屋だなあ。


「この洋服ダンスも装飾が可愛いですね!」


「でしょー!」


 ふとそちらを見ると、七瀬さんと宮杜さんが大きな洋服ダンスの前で話していた。


「中のお洋服も、こういうかわいい系統の物なの?」


「それはないかなー。いっつも来てるような普通な感じの服だよ~」


「そうなのね」


 ガタガタドササ!


「? 中で何かが動いた?」「というか……落ちた?」


「え、あーうん。ちょっと散らかってたものを中に詰め込んだから……。あはは……」


「あーなるほどね」「大丈夫ですかね? 割れ物とかは入ってないです?」


「う、うん。その心配はない……あ」


 とそこで、タンスがぱかりと開いてしまった。中からは……大量のぬいぐるみが出てきた! テディーベアとかカピバラとかハムスターとかのぬいぐるみが雪崩のように出てきた。


「す、すごい量のぬいぐるみ……」

「可愛いですね!」

「わ、割れ物じゃなくてよかったわね」


「あー、見られちゃった……」


「? 別に恥ずかしい物でも無くないか?」


「そ、そう? でも、なんか子供っぽくない? 高校生にもなってぬいぐるみをいっぱい持ってるって……」


「そんなことないって。なんというか、七瀬さんらしいと思うぞ?」


「あはは、ありがと」


「ちなみにこれって実家にいたころから持っていたものなんですか?」


「うん、そうなんだ。どうしても連れてきたかったから持ってきたんだ~」


 なるほどなあ。


「それでスーツケース二個も持ってたのか」


「え、あーうん。そうなの。その節は大変ご迷惑をおかけしました……」


「迷惑だなんてそんな。そっか、あれからまだ半年も経ってないのか……。なんだかもっと立ったように感じるなあ」


「そうだね~」






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フォルテの学園~シューティングゲームの世界で恋愛はNG(ダメ)なのでは?~ 青羽真 @TrueBlueFeather

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