分かっていても

死者を呼ぶ香り、まじないの類が一般的であってもなくても、それはどこか紛い物と感じてしまいます。それは主人公も一緒。しかし、分かっていても、使ってしまう。その死者が自分にとってかけがいのない存在であればあるほど、その紛い物は本物を上回ってしまうでしょう。自分の好きな人も自分を愛してくれている一面性を切り取ってるだけかもしれません。その一面性のみを取り出されるなら、それほど完璧な存在はいないでしょう。それは人ゆえだと思います。その点を男の愛と悲哀で描いている。いい読後感でした。