東京心中(とうきょうしんじゅう)

@k0905f0905

第1話

水口冬馬(みずぐちとうま)は近頃、体調がすぐれなかった。

咳が止まらない。

「大丈夫か」

麻薬取引現場で同僚の赤崎啓二が冬馬に缶コーヒーを

手渡した。

「ありがとう」

冬馬が赤崎に感謝の意を述べた。

「来るかな、やっこさん」

赤崎が冬馬に耳もとで囁いた。

やっこさんというのは麻薬組織の№2茅ヶ崎篤のことだった。

「たぶん。ネタ元に間違いはないはずだ」

冬馬がまた咳込んだ。

「帰るか、何なら後はオレが」

「バカ野郎。そうはいくか」

「そりゃ、そうだな」

二人が笑いあった。

「来た」

赤崎が口元に人差し指をあてた。

冬馬も身構える。

「女だ」

赤崎が少し大きな声を出した。

赤崎の言う通りだった。

24,5の薄命そうな色白の美人がフラフラと

やってきた。

冬馬は赤崎と顔を見合わせた。

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