第200話 めでたしめでたし

 やがて、夜通しの祝いの宴も夜明けと共にお開きの時を迎えようとしておりました。


「太郎よ」

「はい、なんでしょう」


 神様に話しかけられ、太郎が答えます。


「まあ、こういうのもいいもんじゃな」

「え?」

「ひーろーにも色々あるということじゃ」

「ありがとうございます」

 

 太郎はなんだかうれしくなりました。


「それでもな、おまえの話をそのままひーろーの話にするわけにはいかん」

「はい」

「それでな、こうさせてもらおう」


 神様はおとぎ話リストの「桃太郎」の欄の斜め上に、


「新説」


 と、書き足しました。


「これでおまえの物語も一つのおとぎ話となる」


 神様も満足そうでした。


「それから、転生させるつもりで色々と人には知られてはいかんことも話してしもうた。じゃからな、申し訳ないが、色々となかったこととさせてもらう」

「なかったこと?」

「うむ、こうじゃ」


 神様がするっと立ち上がり、とんっ! と杖を一つつくと、踊り歌い騒いでいたみんながピタっと止まりました。


「これで色々といらんことは忘れてしまうじゃろう」


 神様は止まったままの太郎に、


「おまえはおまえの物語をこれからも作り続けなさい、幸せにな」


 そう言うと、雲に乗ってすうっと薄れ、消えてしまいました。


「あれっ、今、なんだか変な感じが……」


 あまてらす様が美しい眉を不思議そうに寄せてそう言います。


「あたしも」

「俺も」

「なんか、神様がいたような」


 ええ、いたんです。


「まあまあ、そんじゃきっと神様が2人を祝福に来てくださったんでしょうねえぇ?」

「そうだな」

「何しろヒーローの祝言だもんな」

「そうだそうだ!」

 

 ということで、長々と続きましたこのお話、ここにておしまいとなります。


 さて、その後の太郎たちがどうしたかと言いますと、それは、もちろんおとぎ話のことですから、


「みんなはいつまでも幸せに暮らしました」


 とさ。


 めでたしめでたし!

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新説桃太郎 小椋夏己 @oguranatuki

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