第57話……最後の地球人

――あれから5年後。


 マーダのミサイル分析から、現人類側の戦局は次第に有利になっていき、ついには反攻がはじまる。

 現人類は次々に版図を取り戻し、むしろ拡大していく勢いであった。


 セーラさん率いるライス伯爵家は、対マーダ戦の功績により公爵家となった。

 そして、対マーダ戦は一応の落ち着きを見た。



「……もう、大丈夫だろう!」


 その後、私はセーラさんに退職願を出し、慰留されたのちに受理された。

 私の後は、レイやトムが軍務を務めてくれている。

 老いるも未だフランツさんは健在である。


 なにより、私にはやるべきことがあった。

 それは現在に残りし、ただ唯一の地球の人間。


 この世界の戦乱の火種こそ、古の地球人の存在なのだ。

 私はそれを探さねばならないと思っていたのだ……。




☆★☆★☆


「次はどこの星系に行こうか?」


「……そうですねぇ?」


 私はブルーとウーサを伴い、クリシュナにて果て無き旅に出ていた。

 今日はウーサが、美味しいサンドイッチを作ってくれたのをブルーと食べる。



「あの青白い銀河はどうかな!?」


「いいねぇ、旦那。いってみましょう!」


 私の提案にブルーが明るく答える。



「クリシュナ機関始動!」


『了解!』


 船員の汎用ロボットコンポジットがきびきびと働く。

 そこには青春と呼べる宇宙があった。


 クリシュナの対消滅機関が唸る。

 真空の宇宙から無限のエネルギーを汲み上げて……。




☆★☆★☆


――遠い未来。

 大きな博物館にて。


 これは唯一残された地球という星の人間、カーヴが織りなした日記である。

 彼が人間であったことは、彼が生きた時代には、決して判明することは無かったという……。



 さらに、古の時代に繫栄したと伝わるライス大帝国のコーナー。

 その一角には、古い旧式艦が展示されていた。



「お母さん、このオンボロの宇宙船なんていうの?」


「クリシュナというらしいわよ。昔の人たちはよくこんな船で戦ったものね……」


「……ふぅん」




――END――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師―― 黒鯛の刺身♪ @sasimi-kurodai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ