プランターのミニ紫陽花 🌺

上月くるを

プランターのミニ紫陽花 🌺





 かあさん、元気ですか、大切な、大切な、わたしのかあさん。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

 もう枝や葉は枯れているでしょうけど、地底にしっかりと根を張っていますよね。


 おかげさまで、わたしは暑い夏も秋も越え、無事に冬を迎えることができました。

 外からは見えないと思いますが、土中深く根を伸ばし、来年の春に備えています。




      🪟




 振り返れば、かあさんから引き離されたのは、まだ梅雨の真っ最中のことでした。

 剪定され過ぎたかあさんが萎れているというので、挿し木用に摘み取られて……。


 それからキッチンの出窓で水栽培され、ときには日に当てられて発根を促されて。

 大丈夫そうというので玄関のプランターに移されたとき、本当にうれしかったな。


 だって、久しぶりにかあさんに会えたんですもの、ほんの数秒、ちらっとだけど。

 亡き犬・クロさんの遺骨の上に、かあさん、きれいな花を咲かせていましたよね。


 例年より花房の数が少なく、なんとなく弱々しい感じではあったけど、それでも。

 プランターに移されながら「かあさん、かあさん」って呼んだ声、聞こえてた?


 あっという間に土に植えられて、まわりを見まわしたら、高い壁に囲まれていて。

 かあさんの場所とわずかしか離れていないのに、顔も見られないなんて……。💧




      🌞




 いっときは、そんな現実にがっかりしたけど、いいえと思い直したのよ、わたし。

 来年の春になったら、必ず土の上に丈夫な芽を出して、ぐんぐん成長するつもり。


 そうしたら、かあさんの顔を見られるでしょ? ずうっと見ていられるでしょ?

 それまでわたし、なるべく土の深くまで根を伸ばし、丈夫な身体をつくるからね。


 なんといっても、わたしたち植物は根が命ですもの、長年の風雪に堪えて来た辛抱強いかあさんのむすめとしてきびしい冬を乗り越え、立派な花を咲かせるつもりよ。




      🐦




 あ、そうそう、かあさんの場所からも見えるかしら、真っ赤に鈴なりの南天の実。

 野鳥が運んでくれた一粒が芽を出して、なんと今年初めて実が生ったんですって。


 縁起がいいと聞く南天が今年を選んでくれたこと、ご縁を感じずにいられないわ。

 きっと、かあさんとわたしを見守ってくれているのよ、四百粒あまりの艶々の実。


 あ、それから、大事な報告をもうひとつ、独りじゃさびしいよねって、オバサンがパンジー&サクラ草を一緒に植えてくれたから、三人で仲よし家族になっているの。


 だからね、かあさん、際限なしの心配性(笑)そろそろ、やめてもらっていいよ。

「ああ、今日は幸せだ」と思ってもらえることが、わたし、一番うれしいんだから。




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