第9話 その後の工房
「マスター球磨。お茶が入りました」
「肩をお揉みしましょうか」
「今日のおやつは何にしましょうか」
「マスター球磨。お風呂にしますか? お食事にしますか? それともワタシ?」
結局、晶子は球磨に引き取られる事となった。彼女は球磨から離れようとせず常に球磨の世話を焼いている。
霧島咲の相続人であるレオンは晶子を譲るなら有償と主張していたし、咲の死に関する責任を問うとして法廷で争う構えを見せていた。しかし、咲の遺言が見つかった事で晶子は球磨へ譲渡された。
「だからって調子に乗り過ぎなのよ。あのブルジョワ御用達の成金ボディが」
「おや? マスター球磨渾身の作品であると常々自慢しているユズハは超高級品の晶子に嫉妬しているのですか?」
「うるさい。ポンコツは黙ってろ」
「ポンコツとは何の事ですか?」
「人の心を理解しないお前の事だ。この屑鉄野郎」
「その言葉は聞き捨てなりませんね」
「やるか?」
「後悔しますよ」
ゴルディアスの赤い三つ目が点滅し、胸の装甲が開いてレーザー砲がせり出す。ユズハはスカートの中からレーザー剣を取り出し、光る刀身を伸ばした。それを見かねた晶子が仲裁に入る。
「そこのお二人。いつまで経っても厨二病が抜けませんね」
「な……」
「おお……」
「お仕事の依頼ですよ」
晶子の操作でモニターに製作依頼書が表示される。
「依頼者はアケローン沿岸警備隊。既存のコアユニットを再利用した新規ボディの制作です」
「客が来るぞ。準備しろ」
球磨の指示に従い、ユズハとゴルディアスは応接間の準備を始めた。程なく工房に依頼者が訪れるはずだ。これがこの工房の日常である。
球磨のアンドロイド工房 暗黒星雲 @darknebula
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
公募玉砕記/暗黒星雲
★35 エッセイ・ノンフィクション 連載中 139話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます