3話 最近どうなの?

「なあ、なんであんな奴とつるんでるんだ?」

 飲みの席で特別親しかったわけでもない友人に聞かれる。

別に好き好んで関わってもいないが、特別嫌ってるわけでもない彼。

 話が合わない、空気が読めない。まあ、そんな理由で孤立していた。最も彼自身は全くそんなことを気にした様子もなかったが。

 そう。理由なんて全くなかった。何かの授業で組んだのがきっかけだったような気はする。

「さあ?なんでだろ。」

「さあってお前…大変じゃないのか?全然話通じないじゃん。アイツ。」

「まあね。自分のことしか話したがらないし。」

 でも、僕はそっちの方が楽だった。相手の意図を探るのは苦手だった。彼なら心のままに話す。目の前の男はそれで僕に何を求めてるのか、想像はつくが、たまに思いもよらないことを考えるから、あまり得意ではなかった。

「でも、わざわざ相手に合わせることもあまりしなくていいから。慣れさえすれば逆に楽だよ。」

「お前も変わってるな…。まあ、無理すんなよ。」

 いい人、と言えばいい人なんだろうけど、そもそもいい人は人様の交友関係にあまり口を出さないものだ。

 飲みの席だからか遠慮せず、ずばずばと言ってくる男。

「ところで、君、子供は最近どうなの?」

 顔が喜びに変わり、男は饒舌にしゃべり始める。

「おお!めっちゃかわいいぜ!最近は猫が好きみたいでずっと猫の真似をしてるんだ。」

 父の顔になる。充実した人生なんだろうか。僕や彼とは大違いだ。少しだけうらやましい。

けれど、僕は僕だし、彼は彼で。この男はこの男なんだ。

 同窓会なんて、行くんじゃなかった。呼ばれない彼と僕はどっちがついてないだろう。

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エロ本の欲しい彼と、どうしようもない僕 チャッピー @Kchappy

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