第13話 冒険らしくなってきた!

 

 朝食を終えた頃、シーマとマチルダが家に来た。

 ここはシーマの家でもあるのだが、基本的に職場に泊まり込んでいるらしい。ブラックな労働環境だ。

 シュウとエミリオはスライムおしゃぶりをちゅぱりあい、笑っている。ちゅぱスラと名付けられたこの商品、正直爆売れらしい。


「今日は一つ、提案をしに来ました」

「提案?」

 リンの疑問に、シーマが真剣な顔で頷く。マチルダもいつも真面目な顔をしているのに更に輪にかけて真面目な顔になっている。

「チョウ様のやり方に我々は疑問があります。こんな幼い子達を違う世界から呼び寄せ、さらに何年もこの世界で……なんて胸が痛みます。なので私泊まり込みで色々調べました。そうしたらですね、なんと元の世界に戻れる方法を見つけたのです!」

 えっへんと胸を張るシーマに、マチルダは頷き誇らしげだ。

「ママのところに戻れるの?!」

「はい!ただし、すぐじゃないです」

「すぐじゃないの!?」

「はい……調べたところ、元の世界に戻すためには大量の魔力が必要です。ですがこちらはシュウ様がお持ちです。それに私やサラの魔力も使えば、なんとかなりそうなんです」

「じゃあ何が必要なの?」

「三つの異物と呼ばれるものを集める事です。これは大昔、他の世界から来た勇者達がこの世界に残したモノです」

「つまり、それを探しに行かないといけないってこと?」

 リンの言葉に、シーマはこくりと頷いた。

「異物の一つはこの国にございましてチョウ様がお持ちです。ですからそれは最後にすればよいかと思います。残りの二つのうち一つは、魔の山にあるらしいのでまずはそれを取りに行こうと思うのですが……」

「何か問題があるの?」

「正直なところ、リン様たちを連れて魔法師が私一人では心細い場所です。あの場所にはドラゴンがいるのです」

「ドラゴン!強そう!」

「強いです。とても強いです。だからサラの力が必要なのですが、サラはエミリオの世話があります……これをどうすれば良いのか……」

「その魔の山までの距離は?」

 俯いたシーマに、サラの質問が飛んできた。

「サラ……まあ早朝に出れば日帰りでなんとか」

「分かったわ。エミリオ連れていくわ」

「そんな、赤ん坊を戦いの場に出すなんて!」

「リンとシュウも連れていくのでしょう?」

「まあ、一応……」

「じゃあ問題ないじゃない!ね、ユーリも行きましょう!」

「お、俺も?!」

 

 朝食の片づけをしていたユーリが驚いて目を丸くする。

 全員でのおでかけは初めてで、リンはちょっと楽しみになった。

 

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幼い弟と目指す異世界脱出! 花田トギ @hanadatogitogi

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