第三話
三話
あの場所、というのは、近所にある
桜の咲く頃に、不幸を味わうような人生だけど、やっぱり日本人だからか。堂々たる美しい桜を目にし、嫌な気分になることはあまり無い。むしろ、少し落ち着く。例え桜の咲く頃、という季節に嫌な思いをしたからと言って、桜を憎むなんて、それは
私がお気に入りなのは、その桜の木の下。なんて皮肉なことだろう、桜の時期によく泣かされた私の落ち着く場所が、桜の下、だなんて。
でも、私は好きっていう感情に素直でいたい。昔の祖母が、古宵家の話を「御伽話」と言ったことに共感は出来なかった。けれど、大好きな祖母が好きな話だから、私も祖母の「御伽話」が、好き。その影響もあるのか、私は本を読むことが好きになって、よく桜の木の下で、読書をする。
そうすると、本当に落ち着くんだよな――。
と、考えながら、古ぼけた神社の中を進む。
――が。
神社の奥、桜の下まで足を進め、ピタリと止まった。
何故かって? いや、こっちが聞きたい。
だって、桜の下には先客が居て、しかも……倒れている。恐る恐る近づくと、どうやら着物のようなものを身にまとっていた。髪の毛はその大きな身体の腹部に届く程長く、そして……白い。
……いや、何コレ。豆腐? それとも白滝? え、警察呼んだ方がいい……?
急いでスマホを起動し、11、まで数字を打ち、その手を止めた。地べたにのっぺりと張り付いていた豆腐がうぅ、と呻き声を上げながら、起き上がったからだ。そして、起き上がった豆腐の顔に付いている狐面を見て、ようやく理解した。
――コイツ、妖だ……!
その豆腐みたいな妖は、着物に付いた砂を落とし、ふと私を見た。お互い数秒固まる。そして数秒後、妖は私目掛けて飛んできた。
「こ、こっち来んな〜っ!!」
すべての始まりは、この桜の下だった。
これは、神様に嫌われた私が出会った、私だけの神様との記憶の物語。
私にとって神様は貴方しかいないので 友愛希 @kureopatora
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