第142話 鞭
ローズの遠距離打撃は、ウィップ(鞭)と呼ばれ、その異常な射程は、並の格闘家なら何もできずに敗北の味を知る事となるが、麗奈は並の格闘家ではない。
何度か受けながらも、その射程と威力を身体に覚えさせていく。
一方的に打たれながらも、打点をずらし威力を消していく、削られながらも、好機を伺う。
ローズに賭けた観戦者はいつも通りの展開に興奮し、大穴を狙った者たちは苦虫を潰す顔して、試合を見守る。
時間が1分半を過ぎ、試合が単調になり、緊張感が消えた、その一瞬、麗奈は、間を見切りガードを上げたまま突進。
威を放つ前の鞭では、麗奈の突進を止めることが出来ず、麗奈は右腕でその鞭を押し自分の攻撃範囲へと移動。
(勝機)
麗奈は、そう感じ、左腕でフックで顔面を狙う、その瞬間、視線の下から、『何か』が来るのを感じる。
右の膝蹴り。
(私のタイミングを読んでいた、まずい)
左腕は、攻撃体勢、右腕での防御ら間に合わない、身を捩りダメージを逃がす事選択し、左フック。
左のフックは、僅か頬を掠めただけ、反対に膝蹴りは予想以上に麗奈の身体を突き上げた。
(避けながらも、膝の威力は落としてない)
追撃を警戒したが、ローズは、身を倒しながらそのまま距離を取った。
麗奈は、ダメージを見抜かれないよう、腕を高く構え、表情も隠す。
(このチャンスでも、組まないって事は舐めてるか、打撃主体のどちらかだよね、呼吸を整えたら、まだ、いける)
ローズは、僅かに切れた頬の血を触り、それをじっと見る。
「美しい攻めだが、私には通用しない」
「へぇー、読めてたっていいたいの」
「美は細部に宿る、微かに私の打撃の威力を消していた事も、私の指先が教えてくれた、それに、決意に満ちた目、緊張感が薄くなるタイミングを感じれば、攻撃のタイミングはよめる」
場の空気感を読むスピリチュアル的な発言に、麗奈は、既視感を覚えた。
『相手の筋肉の動きや、視線以外にも、場の空気感や緊張感で攻撃の選択は読めるだろ、流石に画面越しじゃ無理だか、その場に入れば場のオーラは感じるもんだろ』
『何よ、それ、向かい合った相手ならわかるけど』
『俺は言わんとしてる事は理解できるな、お客様の出す雰囲気、オーラといったもので、流れを変えたりする事もあるからな』
麗奈は、兄と弟の会話を思い出していた。
あの時は、そのレベルの人間に相対する事は、ないと思って話半分で聞いていたが、そのレベルの人間と戦う事になろうとは、その時は思っていなかった。
(もっと真面目に話を聞くべきだかな)
苦笑し、戦闘体勢を取り直す。
つよいぞ、無敵の阿修羅ちゃん @nagaresasa
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