第56話 林間学校part4
俺たちは山頂へ到着した。
途中、女の子が1人いなくなるトラブルがあったから、俺たちの班が一番最後の到着だった。
「ケータ!」
未来が俺のところへ走ってきた。
「大丈夫?心配してたんだよ。遭難したかと思って……」
未来は俺の手を握った。
「悪かった。途中でいろいろあって」
「いろいろ?」
「あとで話すよ」
田中さんと佐藤さんが、俺と未来を見てニヤニヤしている。
それにようやく気づいた未来は、慌てて俺の手を離した。
「……じゃ、またね。ケータ」
「おう……」
たたたーっと、未来は走って行った。
「ラブラブだねー」
「小川くん、めっちゃ愛されてるね!」
佐藤さんと田中さんからからかわれる。
すげえ恥ずかしい……
「いや、そんなんじゃねえから」
そう言ったところですでに手を遅れだが。
「いいなー!あたしも彼氏ほしい!」
「小川くん。誰か紹介してよ!」
付き合ってないんだけどな……
はあ……信じてもらえるわけないか。
◇◇◇
山頂で班の小学生たちと昼食だ。
ビニールシートを敷いて、みんなでお弁当を食べる。
「あれ?あの子は?」
太田とさっき手を繋いでいた女の子がいない。
「萌ならあそこだよー」
女の子たちが指差した。
いなくなった女の子——名前は桜木萌≪さくらぎもえ≫ちゃん。
すごく大人しい子で、他の誰とも話さない。
少し心配な子だ。
小さな木陰で、太田と萌ちゃんが2人でお弁当を食べていた。
「きっとぼっち同士で気が合うのね」
佐藤さんがボソッとつぶやいた。
ぼっち同士で惹かれ合ってるのかわからないが、太田が萌ちゃんに優しいのは気になる。
太田の奴……いったい何を企んでいるんだ?
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