第5話 水族館
「おはよ!」
「おはよ、早いね」
「それ先に来てた優言う?」
「ははは、確かにそうだね」
今日はみんなで約束してた日。水族館に行く。学校の最寄駅に待ち合わせで、最後に龍君が来た。
「水族館まで何分かかるんだっけ?」
「1時間くらいだったと思うよ」
「じゃあさ!トランプしようぜ」
「いいね」
「やろうやろう」
トランプなんていつぶりだろう。最後にやったのは中学の修学旅行の時かな。
「龍君、いくら何でも弱すぎない?」
「しらねぇよ!次は勝つ!」
水族館の近くの駅に着くまで続けたけど龍君は一度も勝てなかった。
「着いた!」
「思ったよりも近場だったね」
そう会話しながら水族館に入って行く。
「「「おおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」
水族館の中は青色で満たされていた。水槽から入ってくる光が、床に水面の揺れている影を映している。それぞれの水槽の中では様々な魚たちが元気に泳ぎまわっている。
「美味しそうだな!」
「水族館でそのセリフ本当に言う人初めて見た」
「そりゃ良かったな!人生初体験だ!感謝しろよ!」
「「褒めてない」」
「ありゃ?」
入ってすぐのところには映画のスクリーンのような大きさの水槽があった。
「見ろよ!ジンベイザメいるぜ!」
「子供か!まぁ、気持ちが分からないでもないけど」
私たちはジンベイザメを見た後、すぐにイルカのショーを見に行った。
「はあぁぁぁぁぁ!楽しかったね!」
「うん!満足満足!」
「楽しかったな!」
「それじゃあもう帰ろうか」
「そうだね」
「また夏休み中に遊びに行こうな!」
「もちろん!」
私たちが水族館を出ると、すっかり辺りは暗くなっていた。
遊び疲れていた私たちは、そのまま帰ることにした。
「じゃあなー!」
「うん!」
「またね」
ここからはしばらく優と二人だな。
「楽しかったね」
「うん。また三人で行けるといいね」
「夏休みが終わるまでにあとどこに行けるかな」
「動物園とか行こうよ」
「そうだね!」
この夏休みは最後の夏休みになるな。思いっきり楽しもう。
新学期に入ってしばらくたった今日、少し体調が悪かったから、お父さんに車で学校に送ってもらっていた。
「あ、優だ」
「例の友達かい?」
「うん、そう。一緒に行くからここで大丈夫だよ」
「……わかった。車、止めるぞ」
お父さんは少し悩んでから車を止めてくれた。ドアを開けて車から歩道に出る。
「ありがと、お父さん」
「大丈夫か?」
「うん!行ってきます!」
「あぁ、行ってらっしゃい」
幸せな朝だ。
「優、おはよ!一緒に行こ」
「うん、いいよ」
そういえば優と一緒に学校に行くのは初めてだな。もう出会ってから半年は経つのに。
「車の中から優が歩いているのが見えたから、一緒に行こうと思ったんだー」
「そうなんだ。いつも自転車だけど、どうかしたの?」
「ううん。たまたまだよ、たまたま」
「そう?」
そう、たまたまだ。
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