第4話 悔いがないように
「お疲れ様でした。明日から夏休みだけど、あまり弾けすぎない様にね。それでは……解散!」
「「「「よっしゃーーーー!!!!!」」」」
今日は終業式。明日から私たちの学校は夏休み。
「ねぇねぇ!明日から二人はどうするのー?」
優とは変わりなく友達のまま過ごすことができていると思う。
「俺は明日から一週間沖縄に旅行だぜ!」
「いいなぁ。僕も行きたかったよ」
「向こうで写真撮って送るわ」
「ありがと」
「私にもお願いね」
「おう!」
私はどうしようか。夏休みは検査に一度来てくれって言われてるんだよね。それ以外は何も予定は入ってないし。
「凛は何か予定あるの?」
「えっ、あ、ううん。実は何もないんだよね。ずっと家でごろごろしてるかな」
「どうかした?」
「ううん、何もないよ」
病気のことばかり考えてるからかな。急に聞かれるとすぐに返事を返せない時が多くなってる。ダメだな……。何か悩み事があるってことは、多分もう優には気づかれてると思う。
「じゃあさ、再来週三人でどこか行こうよ」
「いいね。龍君は?」
「俺も再来週なら大丈夫だぜ」
「おうけい。じゃあ、続きはまたTINEで話そうか」
「そうだね、そろそろ帰ろう!」
再来週は予定空けとかなきゃだね!楽しみ!
「ただいま〜」
「おかえり。学校はどうだった?」
「再来週に水族館に行くことになったよ」
「いつも言ってる優君と龍君とかな?」
「うん!」
お父さんには毎日学校であったことをたくさん話してる。お父さんはその話をいつも微笑みながら聞いてくれる。
「精一杯楽しんできなさい」
「もちろん!」
多分、お父さんは検査のことを話したかったんだと思う。でも私が学校の話をしているからかな。お父さんはその話はここでは出さない。
だから、私から言う。
「検査は来週にお願い」
「……そうか、わかった」
お父さんが少し心配そうな顔をする。
「大丈夫だよ。ちゃんと楽しく生きれてる。お父さんのおかげでね」
「そうか……そうだな。悔いのないように、な」
「うん!」
その言葉はお父さんが自分に向けて言っているようにも聞こえた。
検査が終わった。結果は何も変わらず、余命は伸びも縮みもしなかった。心の中で寿命がちょっとでも伸びてないか、もしかしたら奇跡的に治ってないか、なんて期待していた自分がいたからだろうか。何かに裏切られた気分になった。
「凛、ごめんな」
「なんでお父さんが謝るのよ。『悔いのないように』なんでしょ?」
「あぁ」
お父さんは医者なのに、娘の病気も治せないのかって思ってるんだろうな。
「こんなことを本当は言っちゃダメだってわかってるけどさ、私はこんな感じの人生で良かったと思うよ。多分ね、余命がなかったらこんなに一生懸命生きようとなんて思わなかったと思うの。毎日ダラダラと過ごしていただけだと思う」
「そうか」
「ほら、お父さんも。『悔いがないように』ね」
「あぁ、『悔いがないように』」
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