第6話 さよなら
秋になって辺りは夕日と紅葉で紅く、そして橙の色で溢れていた。
夏は色んなところに行って楽しい思い出を作った。そして今日、お父さんにあるお願いをする。
「お父さん、お願いがあるの」
「どうした?」
このお願いを言うのは少し勇気が必要だった。
「もう私は後悔のないように十分生きた」
優たちには病気のことは言っていない。急に私が死んだって聞いたら、すごく悲しんでしまうだろうから。
だから————
「友達が私と会えないようにして」
お父さんは困った顔をした。多分私の考えがわかっているんだろう。
「本当にいいんだな」
「うん。お願い」
「なら、そうだな……。家のことで急に転校が決まったことにする。いいんだね」
お父さんは何度も聞いてくれる。
でも、私の気持ちは変わらない。
「うん!お願い」
私は涙を耐えながら答えた。
お父さんと話した後、自分の部屋で思い出に浸っていると、優からTINEが来た。
優『ずっと学校休んでるけど大丈夫?』
その言葉にどう返そうか迷った。実際に面と向かって話している時に聞かれなくてよかった。
凛『大丈夫だよ』
優『そっか。よかった。進路は決まった?』
凛『うーん。まだかな』
優『僕もだよ……。そろそろ決めないとまずいよね」
みんなと大学でも仲良くしたい。三人で集まって大学合格を祝って。髪を染めて、一年たったらまた集まってお酒を一緒に飲んで。
凛『そうね。そういえば、最近学校どんな感じ?」
優『いつも通りだよ。強いて言うなら、皆凛の事を心配してるかな」
学校に行ってもっと友達と話したい。服の話や好きな俳優さんの話もしたい。
凛『なら早く学校に行きたいな』
優『うん。早く体調治して学校きな?』
凛『頑張る!!』
ないものねだりばかりだ。そんなことばかり考えながら枕に顔をうめて目を閉じた。
数日後、私は学校を転校するという名目で高校を中退した。
高校の先生たちは私の事情を知っているため、事情を話すとすぐに許可をくれたらしい。私に少しだけでもと話をしに家まできてくれた先生もいた。
優を筆頭とした家の場所を知っている友達が来ても困るから引っ越しもした。次の私の家は病室だ。
龍くんには高校をやめる日に、私のことを優には内緒でと電話で教えた。そして、優のことをよろしくって言って返事を聞かずに切った。
これから私は一人だ。あとは最低限、誰にも知られずに死んで忘れさられるだけ。
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