第7話 はじめましてと久しぶり
病院の中を散歩していると、15歳くらいの女の子が泣きそうな顔でベンチに座っていた。周りには看護師さんがいて慰めているけどなかなか泣き止みそうにはなさそうだ。
「隣いい?」
「はい……」
看護師さんにアイコンタクトをすると、少し離れて心配そうな顔をしてこちらを見てくれていた。
その子の目は、まるで生きる目的を失ったような目をしていた。
「どうしたの?」
「病気の治療が苦しくて、でも全然良い方向に行かなくて。それで……」
なるほどね。治療が辛くても治る病気か。
「君が持っているのは治る病気。絶対に治らない病気を持って一人で死んでしまう人もこの世にはいるのよ。だから治療、頑張りなさいな」
「はい……」
こう言うのってどうしたらいいのかな。
「辛いことがあったらいつでも聞くわ。私は姫乃凛。普段は東棟2501号室にいるわ。あなたは?」
「私は
こうして私とくるみちゃんは出会った。
あの日から私とくるみちゃんは毎日話すようになった。そして、次第にくるみちゃんに笑顔が増え、彼女の病気も治っていった。
くるみちゃんは退院した後も私の病室に遊びにきてくれた。何でも命の恩人には何か恩返しがしたいらしい。命の恩人だなんて大袈裟だ。
私はそんな大層な人間じゃないのに。
「じゃあまた明日ね」
「はい!」
この日はくるみちゃんと折り紙をしていた。くるみちゃんが病室から出て行って少し経った後、病室のドアがノックされた。
「は〜い。どうぞ〜」
今の時間帯ならお父さんかな。そう思って返事をすると、入ってきたのは優だった。
「凛、久しぶり」
「へ……?な、なんで……嘘……」
すごく驚き、混乱してすぐに話せなかった。
「なんで……ここがわかったの……」
「このざまで病院に来たら凛のお父さんがいてね、頼み込んだんだ」
「あはは……病院に来るとは想定外だったなぁ」
優の左腕には包帯が巻かれていた。多分骨が折れてるんだろうな。
「腕はだいじょ————」
「聞いたよ、病気のこと」
「……そっか、やっぱり話しちゃったよね。お父さん」
「うん。すごく凛の事を想っていて、優しそうな人だね」
「いいでしょ」
「すごく」
何も言わずに優の前からいなくなったから気まずいな。
「映画を見に行った時さ、告白してくれたでしょ?」
「うん」
「あの時すごく嬉しかったんだ。私も好きだったから両思いだー!って」
「うん」
「でもね、私はこんなだから迷惑かけちゃうって。悲しませちゃうって。そう思ったんだ」
私は優が悲しむ顔を見たくなかった。だから振った。
あの時言えなかった理由を言うと、優は———
「凛。僕はそれでも君がいいんだ。たとえそれが一日だけだったとしても」
優は優しいな。
私は涙を流し続けた。夕日の光に染められながら、私は気が済むまで泣き続けた。その日から優は毎日病室にきてくれて、私たちは何気ない話で笑い合って過ごした。
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