「墓参り」のその後について

惟風

狂った弟のその後

「もももの庭の物語」の企画に参加させていただいたおかげで、沢山の方々に読んでいただくことができました。

 主催のもももさん、お読みいただいた方々、本当にありがとうございます。


 ハッピーエンドなお話を書こう、仲良し兄弟が出るのなんかどうだろう……と書き出した結果、思った以上に血なまぐさいお話になってしまいました。

 大切な人と死に別れてしまって悲しみにいる中、幽霊となった大切な人と再会できてハッピー!幽霊も悪霊じゃなくてめっちゃ明るくて優しくてほのぼの!コメディ!良かったね!と途中までは思っていたのですが。

 私、「パッと見普通そうだけど実はやべーーー人」が好きで、ついつい手癖でやべーーー奴になってしまいました。自作品の中でもトップクラスのキル数を誇る殺人鬼が爆誕し、とても満足しました。


 ただ、狂っていても愛着はそれなりに出てきてしまって幸せになってほしいなあとも思ったのです。

 なので、後日談を書きました。


「真夜中、忍者と死体を埋める」

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650251773808


 カクヨムコンがスタートしていたので、それに参加することをモチベーションにして書いてみました。

 なら、なるべく多くの人に読んでほしいので間口を広げよう、続編ということを全面に押し出すより「わかる人にはわかる」くらいの方が良いかなあと。

(私自身が「あー、これ何かの続編か…前の話も読んだ方がええんやろけどそれはちょっとな…」となるタチなので)

 するとほとんど風味の残らない全く別のお話になってしまいました。

 一応、作中で「村人を皆殺しにした」とは語っているのですが、墓参りのことがわかるのはその一文だけになっています。

「真夜中〜」のお話に、墓参りであれだけ入れ込んでいた兄ちゃんのエピソードが全く出ないのは主人公の視点が別人であることが大きいのですが、本当に兄ちゃんの存在が彼の中で“無かったこと”にされているせいでもあります。

 その理由として、「墓参り」の直後に以下の出来事が起きています。


「墓参り」の翌日に兄ちゃんに雨が降ったことを報告する(血の雨ということはさすがに伏せて)→

 それを聞いた兄ちゃんはとびきり嬉しそうに、「もう兄ちゃんのことは綺麗サッパリ忘れて、お前は自分の幸せのために暮らせよ」とその場で成仏する→

 弟、大好きな兄ちゃんの言いつけを守りホントに“綺麗サッパリ”兄ちゃんのことを忘れ、これまで以上に自身の思うままに生きるようになる→

「真夜中〜」の話に続く


 となります。

 ただ、完全にタグを勘違いしていたため「真夜中〜」は「もももの庭の夕暮れ」に一瞬出したもののすぐに取り下げました。

 タグに“忍者”って無かったんですね、あるとばっかり思い込んでいました……。確認、大事。


「墓参り」は「あの時ああすれば別の結果になってしまったかもしれない…」というようなifは全く無いと思っていて、どうしたって兄は自ら生贄になろうとしただろうし村人もそれを歓迎しただろうし、弟もどうすることもできず震えていただろうと思います。

 そしてどうやったって惨劇は防げなかっただろうなと。

 村のために同胞を犠牲にできる人々の中で、弟を引き止められる人も理由も存在しません。

 狂うことを避けられなかった弟にとって、幽霊となった兄との再会は唯一の幸福で、私にとってはハッピーエンドの一つだなと思っています。

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