リマスターだから全部連載版のコピペなんだろうなといつから錯覚していた?



「リマスターですか…」


「リマスター…と書いてありますな…」


「りますたぁってなんですか?」


異世界転生物に95%近い確率で登場するバーなんだかバルなんだかレストランなんだかわからない冒険者的な人達がたむろする【例の店】で、雄一・伊藤さん・シャロンの3人が卓を囲んでいる。


「えっと…リマスターと言うのはですね、過去に発表された映像等の作品を、発表当時はなかった現代の最新技術で再録・編集した物の事を指します…」


シャロンの間の抜けた問いかけに雄一は少しわざとらしくため息をついて見せると、【異世界の住人に伝わるのだろうか】という疑問を解消できないまま、リマスターと言う言葉の意味をシャロンに説明した。


「ですから…」


「アウト…ですかな?」


「アウト…ですね…」


「何がアウトなんですか?」


「リマスターを謳ったこの小説なんですけど…何一つリマスタリングしてないんですよ…やった事と言えば連載中の【全裸のおっさん】の序盤をコピペしたくらいなもんです…リマスターを謳うならせめて新規ムービーの挿入やシナリオの微妙な改変位はしないと…」


「いやいや麻生氏、これコンテンツが文章ですので…そんな最終回で【おめでとう】を連呼した挙句、劇場版ですらなんの真相も明かされなかった国民的厨二アニメのリマスターみたいな事は不可能ですぞ…」


「あれはもうリメイクですからね、心がポカポカしちゃうし、マ◯ロスも真っ青な宇宙戦艦出て来ちゃってますし…」


「にも関わらず有線で電源供給する設定はそのままという懐古厨ホイホイを裏切らない安心仕様…違いますなぁ大手はやはり…」


「私なんて加入のシーン削られてますもん…この先連載版でも短編版でもずっとこうなんだ…【なんか居る人】扱いなんだ…きっと…」


「そ、そんな事ないですよ!仕方ないんです、一万文字以内って規定が有るので苦渋の決断なんです!別にカクヨムコンのメインスポンサーがカ◯カワだった事とはなんら関係無いんです、【さすがにカド◯ワを擦るネタでカドカ◯系のコンテストに応募するとかやばすぎるから前後丸っと削ったろ】とかそう言う事は一切有りません!断じて!」


「ゆ、雄一どの…それは最早アウトでは…」


「そ、そうですね…だ、大丈夫ですよ!日本のライトノベル界隈の先駆者ですよ?舞浜から送り込まれる黒服のエージェントや音楽教室にまで集金かける某権利団体より寛容で有ることを信じましょう?」


「で、ですな!シャロン殿!気を落としてはいけませんぞ!【心が読めるみたいな設定どこいったの?】とか考えないでくだされ?」


「うぃ」


「どうにしろ残りの文字数は死活問題です…普通のファンタジーやミステリーなら壮大に展開させておいて敢えてアンサーしないという今どきっぽい手法も取れますが、コメディですからね…ギャグ小説にも関わらずオチまで書き込めなかったらそれは最早、有る意味ホラーですよホラー…」


「じゃ、じゃあいっその事ジャンルをホラーに変更するとかどうでしょう?」


「シャロンさん…どこの世界にブリーフ姿の小太りのおっさんがレギュラー出演するホラーが有るんですか…」


「ブリーフ姿の小太りのおっさんが登場する異世界冒険譚も無いと思いますけどな!全然冒険してませんしな!はっはっはっは!」



【え?今アンタの話してんだよ?大丈夫?わかってる?】



突っ込みたい気持ちとコンテストの規定文字数の残りを天秤にかけ雄一は後者を優先する事にした。

雄一は確実に少年だった頃に成りたくなかった大人になっていた…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小説家を目指していたのに無理やり異世界に転生させられた俺は美しい女神が与えてくれた半裸のおっさんと異世界ライフを送っています… まど @madn_0714

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ