やってみせろよカクヨムコン! なんとでもなるはずだっ! 伸びないだとっ!? ウケナイハナシヲモ-イチドエガ-イテェ-

「いやぁ、これからよろしくお願いします!麻生氏!」


「…」


2人の男が街道を重い足取りを隠さず、スゴスゴと歩いていた。


男の名前は麻生雄一、異世界に転生して目的がよくわからんまま冒険する事になったしがない会社員。


隣を進むのはブリーフ一丁、小太り、中年の男、伊藤秀治、神話級装備【聖天子の白羽衣】(ブリーフ)を装備する幻獣で、雄一の最初にして唯一の仲間だった。


【うん、どうしようこれ】


雄一は酷く蝋梅していた、何せ右も左もわからん異世界に突然召喚され、女神から授けられたチートスキルは蓋を開けてみればブリーフのおっさんだったのだ…


「不幸だ…」


降って湧いたパートナーがブリーフのおっさんの異世界転生冒険譚とはなんなのか…10万3000冊の魔導図書館がパートナーの彼とは不幸の重さが違う、絶対に異論は認めない。


「伊藤さん…」


「やや?なんですかな麻生氏!」


「ここに来る前、貴方何処で何をしていたんですか?」


「いやいや、これは失敬…私とした事が、身の上話もせぬままで、私が召喚される前のお話しに、つゆぞご興味が?」


「いや、無いです…申し訳ないぐらい少しも無いんですけど、本当に何処から手をつけたら良いのか分からないんで…教えておいてもらって良いですか?」


「はっはっはっ、麻生氏、気を落とされる事は有りません!この私が召喚された以上、大船に乗ったつもりていてくだされ!さて…私の召喚前の経歴でしたな…」


伊藤さんは大きく息を吸い込むと腰に両手を添え、ちょうど仁王立ちの様な姿勢を勇ましく作り上げると雄一の方にグルリと向き直りこう続けたのだ




「わかりませんっ!」




中年の低く、嫌に艶があり、そしてよく通る声が街道に響いた


「いや、いらないんで、本当イケボとか出そうとしなくて良いんで…」


「はっはっは、恐縮ですっ!」


【この人…人生楽しいだろうな…】


雄一は空よりもずっと遠く、果てしない先を見据える様な目で宙を仰ぐと、また少し泣いた。





ーーーーーーーーーーーーー





大きな石垣がグルリと辺を囲い込む街の入り口に、2人の男が立っている。


2人は満身創痍だった、痩せほそり、体には真新しい傷があちこちに付いている。酷く汚れた衣服はその所々が破け、2人の旅路が壮絶を極めた物だと言う事を物語っていた。


「着きましたな麻生氏」


「ええ…着きましたね…」


「しかし、なかなか大変な道のりでしたな…」


「ええ、まぁ、四日ですからね…」


「街道を進む事、四日…強大な敵に襲われ何度も死にかけましたな…」


「強大な敵ですか…」


「さしもの私も一時はどうなる事かと…」


「強大な敵…出てこなさすぎでしたよね…」


「はて…」


「我々が戦ったのは1に【飢え】、2に【乾き】、3に【橋のかかっていない崖】、4に【悪天候】こんなもんじゃないですか!」


「はっはっは、特に3番は参りましたな!落ちましたし!」


「落ちましたし!じゃないですよぉ!!!ファンタジー異世界の街道を4日ですよ?4日!4日も歩いてモンスターやら野党やらとエンカウントしないってどう言う事ですか!?」


「安全なのは良い事ではございませんか!はっはっは!」


「何のために居るんだぁぁ!あんたぁぁ!」


「さて、何故でしょうな…」


「誰か変わってくれ…誰か…」





ーーーーーーーーーーーーーーー





「とにかく、宿を取りましょう!冒険者が街に着いたらまずは宿です!」


「いやいや、麻生氏、普通は冒険者ギルドとかでは?」


【チッ】雄一の舌打ちが響く


「あのですね、限界なんです、限界!わかります?死んで、蘇って、こちとら四日間、どんぐりと野草(と言うか雑草)しか食べてないんですよ!そもそもね、スポーンする場所おかしくないですか?移動魔法とかアイテムとか無いのに街まで徒歩で永遠4日の距離に転生させます?あの女神マジで湧いてるんじゃないですか?大体この街から街道を通って我々がスポーンしただだっ広い草原まで完全に一本道でしたよね?」


「はぁ、確かに…」


「我々が歩いてきた道は一体何処と何処を繋いでたんですかっ!!途中に民家も商店も無い永遠と4日の道のりを!街道整備した奴計画性無さすぎるだろ!誰ともすれ違わなかったぞ!この世界に税制システムあんのか知らんけどとんでもねぇ金と労力の無駄遣いだよ!」


「我々は助かりましたが…」


「助かってないですからぁ!落ちてますから!崖から!ならせめて橋掛けといてくれよあの崖……とにかく!宿です!宿を取りに言って飯を食いましょう!話はそれからです!」


「致し方ありませんな!その様に致しましょう!」





ーーー宿屋ーーー





「え?」


「え?」


宿屋の店主と雄一は揃って目を丸くした。


「と、泊まれないんですか?」


「あ、当たり前てもんでしょう旦那ぁ!、だって無一文なんでしょう?慈善事業でやってんじゃねぇんですから…無茶言わないで下さいよぉ!」


「え、なんかこうシステム的に泊まるを選択するだけでセーブと回復が出来る的な…ポ○モンセ○ター的なアレは…」


「なぁに言ってんのか分かりませんけどねぇ、こっちも商売なんで!悪いんですが帰って貰えますか?客がつかえちまう!」


【ば、ばかな…】


雄一は額に冷や汗が浮かび上がるのを感じた


【つまり要約するとこうだ…この世界は生前の世界とほぼ変わらない社会システムが構築されている。金が無ければ寝れないし食えないし飲めないのだ…つまり俺はあれか…異世界に無一文で投げ捨てられたと言う事なのか!?異世界じゃなくて外国でも普通はそんなの発狂するぞ…あのクソ女神どうしてくれんだコレ…】


狼狽する雄一の後ろから伊藤さんが肩に手を乗せてきた。


「仕方がありませんなぁ、麻生氏、ここは私が!」


「伊藤さぁん!まさかお金をもって…」


「精一杯頼んでみましょう!」



【頼むから帰ってくれ】宿屋の店主の言葉は愛想もクソもなく火の玉ストレートだったが、雄一は通報されないだけマシだったと思う事にした。

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