長野のとある高校で弓道を頑張る影二は、学校のマドンナ・桜奈(おうな)と付き合っています。
その桜奈が死ぬ運命にあることを知り、何度もタイムリープを繰り返すたびに彼女を救おうとあがきます。
タイムリープを示唆する映像が浮かぶときに、的に矢が中(あた)る音が重なるのが印象的な作品です。
何度も絶望の淵に立ちながら、彼は「ある一つの決断」を下します。
桜奈と一緒に旅するシーンもあるのですが、ロードムービーを見ているかのようで、私はとても好きだなと思いました。
タイムリープものなのでSF要素もありますが、内容は青春ラブストーリー。
「有限である時間を、大切な人のために使いたい」と日々思って過ごしておりますが、この作品はまさにそれを感じさせてくれるものでした。
時間の大切さと爽やかな青春の恋の切なさを味わいたい方は、ぜひ一度読んでみてください!
タイムリープで、本当は死んでしまう運命の彼女を救う……という恋愛物語なのですが一筋縄では行きません。
読んでいるうちにこれは恋愛ミステリーなのか、或いはホラーなのか?と感じさせる『え!』や、『え?』や、『ええ……』があり、私は実際第四章の一節で『え?』と声を出してしまいました。
個人的な見解なのですが、四章のその先は何か怖いものを見ているような気持ちになりました。この出口を見失ったような感覚は、意図的に演出しているなら恐るべき手腕だと感じます。
(作者様の意図と違ったらすみません)
次が気になって思わずページをめくる感覚があります。
そんな謎の魅力ある作品です。
はっきりって前衛的な作品ですので「好き・嫌い」は分かれると思います。ただ、私は好きです。確かに「視点」や「人称」、「場面」の変化が速いので戸惑うことはありますが、それは「物語のミステリー」を深める為の仕掛けなのです。
この小説を「好き」になるか、どうかはここ次第だと思います。叙述トリックが好きな人には「間違いなく」オススメ。作者の至る所に張り巡らされた伏線を存分に堪能することができます。
ただ、ストーリーの美しさとか、流れとかを遵守することを尊いと感じる人はツライかなぁ。私は、いいと思うんですけどね、こういう挑戦があったからこそ、文学は発展してきたので、新しい文学を模索している「チャレンジスピリット」にあふれた小説だと思います。