皇帝と悪魔の対話 その4

 いかがでしょう?

 物品にかける税は、最初の専売制を除けば国が安定し、都市化が進み、商業が発展すればするほど国家に益をもたらしてくれる税なのです。

 また、為政者が主宰する国の物品の、生産力と物流を知り、かつその生産力と物流をどの程度支配する実力があるかについて熟知していればこそ、導入できる制度であるとも言えます。

 まさに『彼を知り己を知れば百戦あやうからず』というものですよ。

 その言葉はいったいなんなのかと仰る?

 古代の戦略家の遺した名言でございますよ。

 地租の話を致しました折に、私は申し上げました。

 徴税を行うためには、国土と民に通じねばなりません、と。

 いま付け加えて申し上げるなら、

 自身の実力……すなわち、みずからの手足となる軍隊と官僚団の実力を冷徹に量る必要があり、それを見誤れば徴税は上手く行かない。

 まあ、そういうことでございますよ。

 なにはともあれ叛乱の鎮圧が最優先でございますな。

 ……そうは申せど人手が要る、と?

 農民を、いままさに起きている戦場に投入しても、物の役には立ちませんよ。せめて農閑期に動員して兵士としての振る舞いをたたき込みませんと。

 兵士としての振る舞いの身につかぬ兵卒など、敵の兵士よりも始末に負えぬ代物なのは……騎馬民族を率いてこの国を征服された陛下なら、おわかりでしょう?

 むろん、分かっている、と。

 なるほど、それならば次回は賦役についてご説明いたしましょう。これもまた陛下のお役に立つ税でございますよ。

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ファンタジー世界で税金を徴収する方法 塩税ほか 宮田秩早 @takoyakiitigo

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