動く山脈のごとき巨大龍が、人々を蹂躙する世界。巨大龍災害対策機関の長ヨナタン・エングラーはあらゆる手を尽くしてきたが、万事休すの状態だった。そんな時、突然、巨大龍が死ぬ。残ったのは、山脈のごとき龍の亡骸で……。
巨大すぎる龍の後始末、いったいどうする?
龍の素材は超貴重なものばかりで、どう扱う?
他国との言い争いも出てきて、どう対処する?
龍に破壊された街も、どう復興させていく?
おまけに怪しい団体も現れて……。
問題は巨大龍のごとく山積み! どうする? どうなる?
先の見えない展開に、序盤から釘付けになっていました。
主人公のヨナタンは、特別な力があるというわけでなはい、普通の人間。それでも、巨大龍を研究してきたその知識を活かし、龍対策に立ち向かって行きます。ひとつひとつの問題に、知恵と工夫を総動員して、なんとかしていく様は見事でした。
はたして、人類は巨大龍の厄災に打ち勝つことができるのか……!?
最後まで目が離せない作品です!
世界中を震撼させた怪獣が死んだ。やったね! じゃあ、片付けようか……。
何だか昨年公開された邦画に似たのがあった気もしましたが、こちらは異世界ファンタジー。異世界でもお片付けの大変さは変わりません。むしろ魔法とかある分厄介かも。
怪獣の名は巨大龍。名前の通り大きい大きい龍でスゲー強くて、人類をこれでもかと苦しめた。それが原因不明でぽっくり死んだところから物語が始まります。主人公の名はヨナタン・エングラー。最も被害を受けて、王都傍に巨大龍の死体を抱えることになった国、エルドの巨大龍対策の責任者。ただでさえこれまで苦労させられたのに、死んだ後のその始末まで引き受ける苦労人です。何しろ巨大龍は強すぎて、死んだ後までマジカルパワーの塊。例えば、鱗はスゲー堅いし防具になんかしたら最高。でも、一枚剥がすのもお手上げってぐらいの難易度だし、そんな良いものは他の国も欲しいに決まっています。そんな巨大龍解体の為の難題や、戦後の青息吐息で餓狼のように必死な諸国との駆け引きをどうにかしなきゃいけない、ヨナタン可哀想。しかし良いこともあって、七年前に巨大龍の元に向かい行方不明だったヒロインのエンネアが突然戻ってきたんです。でも、そのエンネアにも秘密があって……というのが、大まかなあらすじ。
あらすじだけで十分魅力的ですが、敢えて本作の素晴らしさを一つ挙げるなら何と言っても「難題登場→快速解決!」の痛快さ。巨大龍は本当に厄介で恐ろしくて、死骸だけじゃなくて色んな災害を残していきました。それらがスマートにヨナタンに立ちはだかっては、スマートに解決されていく。「ダメだ、こいつは大変だぞ……」→「スゲーぜヨナタン!」、この繰り返しが基本形。本当に二コマ漫画のようなテンポで、問題の難易度もどんどんエスカレートで盛り上がっていく。本筋をちゃんと進めることも忘れていない。惚れ惚れするようなグルーヴ感。きっと情報を出す順番や文章のボリュームまで細心の調整が必要であったでしょう、作者様の筆力の妙が光ります。
他にも見所はたくさん。例えばヨナタンとエンネア、それから二人の親友の最強剣士ルドガーとの三角関係。ヨナタンの腹心なのに中々腹の底が見えないルルミ、それから諸国の王達や市井の民草等のサブキャラクター達一人ひとりまでキャラが立ってて生き生きしているのも、読んでいて飽きが来ない良いところ。最後まで読めば長編の映画を観終えた時のような感動がありました。
みなさまも是非、この一流のエンタメ小説を読んでみてください!