戦火の踊り子。気高さは滅びない。

かつて舞台に立ち、筆頭プリマとしてスポットライトを浴びていた踊り子。
その舞台を見つめていた青年。
戦火の収容所で辛酸を舐めながら、熾火のように静かな闘志を消さずにいる二人の姿に、人間の強さと気高さを感じさせられます。

個性を剥奪され、集団に埋没させられ、理不尽を押し付けられても、一人の人間の持つ研ぎ澄まされた芸術性が、時にはどんな武器よりも強力で獰猛な、美しい獣となる。
その一瞬を見た思いです。

重厚で端麗な文章を堪能しているうちに、いつの間にか緊張感の走る展開となり、最後は希望の一滴を胸に落とされる。
そんなドラマティックな物語をぜひ見届けてください。