「自分を大切にしていいんだよ」と言ってもらえているようで

読了して一番に思ったことは「読んで良かった」です。沢山の元気と胸キュンをもらいました。

人間世界で仕事につまずき、元気を失くしていたヒロイン・佐和子は、ひょんなことから「あやかし瓦版オンライン」編集部で働くことになります。個性豊かなあやかしたちと触れ合う中で「自分らしい働き方」に目覚めていきます。自分を取り戻した彼女は、人間社会での「実績」にならない今の仕事を続けるべきか悩むようになります。そして、彼女の出した答えは……。

佐和子には、真面目一徹であるがゆえに空回りしてしまうところがあります。作者様は、佐和子のような人たちが「もう少し肩の荷を降ろしたっていいんだ」「自分を大事にしていいんだ」と思えるよう、作品に願いを込められたそうです。その思いの通り、佐和子に共感を感じる私は、読みながら心を洗われたようでした。

特筆すべきは、編集長・笹野屋永徳さんの魅力です。一見、優しそうだけど飄々として何を考えているか分からないキャラクターです。しかし、回を重ねるにつれ、彼の信念や気配り、愛情深さなどが見えてきます。ダラけているようで、実はそれは社員に圧を感じさせないため。しっかり社員を観察していて、いざと言うときには的確に指示を出す、理想の上司です。誰もが振り返るようなイケメンという設定も、彼の魅力を押し上げています。

ひとりで仕事を抱え込んでいっぱいいっぱいになっている佐和子を永徳さんが諭すシーンは、本作の名シーンの一つです。永徳さんと佐和子の二人がどうなっていくのか予想することも、この物語を追う醍醐味のひとつです。

自己肯定感を上げてくれる、読後感の非常に良い作品でした。

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