第4話 ポーラの力
俺たちは今、ケルマさんの案内の元、近くの街へ向かっていた。
「そういえば、君たちは一体どこから来たんだ?あまりこの辺りでは見ない格好をしているが。」
いきなりちょっと困る質問がきたな・・。
どう言うべきかポーラさんへ確認しようとチラッと顔を向けると
ポーラさんは任せてください!と言わんばかりにウィンクを見せ━━
「私と陸歩さんは異世界から来たんですよー!」
バカ正直にそう言い放った。
いやいやいやいや!!いきなりそんなこと言われても困らせるだけだろ!?
俺はそう思い、慌ててフォローしようとした。が、
「あぁ。なんか聞いたことがあるな。確か・・・今から4000年くらい前、君たちと同じように
『俺は異世界からこの世界を救いにきた。』
と言っていたやつがいたと。」
俺たちと同じように?
どういうことだろう。ポーラさんに説明を求めると
「ここへ来る前に説明したこと、覚えてますか?
あなたはディケイド様が就任されてから、100万人目の死亡者と伝えていましたよね。
つまり、ディケイド様の前の神様が就任されていた時の、100万人目の方もいらっしゃるのですよ。」
あー。なるほど。転生者は全員、この世界に飛ばされるのね。
なんか、特別感ないなあ。
てか待てよ?ということは、その前の人やまたまた前の人もいる可能性があるというわけか。
「そもそも、今私たちが話してる言語は、その方が我々の祖先に伝えてきたものなんだ。作物などの育て方も、書き物も全て。
だから我々にとっては、本当に救世主が現れた!と伝説になってるな。」
ケルマさんは感慨深そうにそう呟いた。
「その後にも同じような転生者を名乗るものが、一定の周期で現れてその全員が今も我々と共に危険な魔物討伐に力を貸してくれている。
もし機会があったら会ってみるといい。」
話を聞く限り、やっぱりいるようだな。転生者。
「やっぱりそういう人ってすごい力を持ってたりしたんですか?」
「あぁ!全くその通りだ。転生者を名乗る者たちは皆、我々の見たことのない力や、尋常ではない強さを誇っているんだ。」
そう言うと、ケルマさんは興奮したように話し出した。
「ある者は・・植物を操る力を持っていた。それを利用し敵をとらえたり、切れ味の良い葉を飛ばし、相手を切り裂いたりと色々と応用が聞くように感じた。
ある者は・・・とにかく身体能力が高かった。
敵を視認すると同時に、一瞬で距離を詰め敵は気付く間も無く吹き飛ばされている。
また、その者が拳を振えば地面は抉れ突風が巻き起こる。とも言われている。
ある者は・・・剣の才が特出していた。
その者は、誰にも斬ることのできなかった大岩を一刀両断したり、敵からの数万にも及ぶ魔弾を全て切り払ったりと、我々剣を扱う者たちの憧れでもあるのだ。
ひとまず、この3名が私が実際にこの目で見た者たちだな。」
・・・。
3人ともすげぇな。全員なんらかの特殊能力を貰って、しっかりと異世界で無双してるじゃないか。
羨ましいな・・・。
「そうだ。君たちもニホンから来たのだろう?ならば何故あんな小物に苦戦していたのだ?ポーラ殿の力はなんとなくわかったのだが、陸歩。君の力はなんなのだ?」
くっ・・・。返答に困る質問をされてしまった。
しかし、俺の能力は自分でもわからないんだよ。ここは正直に打ち明けるしかないよな、、。
「あの、それなんですが、、、。実は自分でもよくわかんないんです。俺がどんな力を持っているか。」
「ほう。そういうものなのか。誰しもが強大な力を持つわけじゃないと。これは悪いことを聞いたな。」
「いえ。気にしないでください。」
はぁ・・・。ほんとに、俺の能力ってなんなんだよ。それさえわかれば俺だって、、、、。
〇〇〇〇〇〇〇〇
あれからしばらく歩き、俺たちはまたモンスターと戦闘を繰り広げていた。
今度は猿みたいなやつで、木の上にたくさんいる。
体長は小さいが、とても数が多い。
「ハァッ!」
次々と襲いかかってくるモンスターを、ケルマさんは綺麗な太刀捌きでどんどん倒している。が、流石のケルマさんでも一度に相手することは厳しそうだった。
俺も、模造刀を突き刺したり横薙ぎしたりとどうにか戦っているが確実に殺すことができない為、押され気味だった。
それに加え、あまった残党がポーラさんに襲いかかる。
「キャァァァ!!!」
今にもモンスターたちの鋭い鉤爪がポーラさんを引き裂こうとしたその瞬間、ポーラさんは前のめりに倒れてしまった。失神したのかもしれない。
そのことで、かろうじて攻撃を免れたものの、危険なことに変わりはない。それなのに、俺もケルマさんも動くことはできなかった。
ポーラさんが死んでしまう━━━
と思っていたのだが、何故かモンスターたちは目の前で倒れたポーラさんを見失ったかのように、周囲をキョロキョロと見渡し、諦めたのかやがてこちらに加勢してきたのだ。
クッ・・!それの影響でこちらもピンチになってしまった。
どうする?どうすればこの状況を打破できる?
その時、両断されたモンスターの死骸が俺の足元に転がって来た。
これだ!
「ケルマさん!一瞬だけ時間を稼いでください!お願いします!」
「クッ・・・!一体何をするかわからないが、了解した。それぐらいなら十分に稼いでやる。」
「感謝します!では、今から3秒後に実行します。いきます!3、2、1ッ!」
俺がその死骸を取ろうと身を屈ませたその瞬間、ケルマさんが赤く光り、周囲のモンスターを一気に薙ぎ払った。
対する俺は、モンスターの死骸を持ちあげ、その鉤爪を利用し、残ったモンスターと戦闘を再会した。
元々、模造刀で相手を横薙ぎにすることはできたのだが、殺すに至らず苦戦を強いられた。しかし、この鋭い鉤爪を武器とすることで、同じ動きで今度はしっかりと殺しきることが可能になったのだ。
「うぉぉぉぉ!!」
「ハァァァァ!!」
あとは気合いと根性だ!そのまま俺たちはモンスターと戦い続けた。
それからは無数にいたモンスターも、徐々に数が減っていき残り十何匹といったところで、リーダーらしきものが雄叫びをあげ、退散していった。
「ハァ、ハァ、ハァ。」
2人とも節々に切り傷があり、息切れもひどい。
しかし、ちゃんと生き残ることができた。
「ハァ、ハァ・・・。どうやら、このままでは子孫が残せないと諦めてくれたようだな。とりあえず、良いアシストだった。」
「ハァ、ハァ。ふぅ。ありがとうございます。手助けできたなら良かったです。」
疲れた。猿みたいなモンスターは知性があるのか、なかなか厄介だった。マジで一歩違えば死んでいたかもしれない。
「そう言えば、ポーラ殿はどこだ?急に消えたように感じたが。」
あ、やっぱり見えないんだ。
ポーラさんは3メートルほど離れた茂みで倒れている。しかし、俺からも視認できるくらい丸見えなのだがケルマさんには見えていないようだ。
「うーん、、、。・・・ハッ!モンスターは?!」
ちょうど良いタイミングでポーラさんが起きる。すると
「あぁ。いたのか。全く。その力は便利だな。敵から身を隠すときに。」
どうやら、見えるようになったようだ。
・・・・・確信した。ポーラさんは能力を持っている。
ポーラさんの能力は
『意識がない間だけ、姿が視覚から遮断される』
だと、俺は考えた。
何故か俺には見えているが、出会った時と先ほどのケルマさんの反応と、モンスターがポーラさんを見失ったことからも、確実といえるだろう。
それにしても、どうしてポーラさんに?ここへ来てから力が使えないのでは?自覚が無いだけで、元々そのような能力を持っていた?
謎は深まるばかりだ。
新しい神が就任してちょうど100万人目の死亡者らしいので能力貰って転生した。〜しかしなんで条件なんか付けた〜 S@YU @sayu_animezuki
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