温かくはない。けれどしみじみとできる、味わい深い掌編。

この物語に、ハッピーエンドという言葉は不適でしょう。しかし、誰もが老いていき、人生の伴侶を失うことはあり得るわけで、その事実をしっとりと丁寧に描いています。現実と、それに向かい合う老婆。その姿と心境に、誰しもが穏やかな悲しみ、とでもいうべきものに包まれます。これはこの人物配置、状況、描写力でなければあり得なかった。素晴らしい、という素敵な作品でした。