第42話

「ねぇねぇ、お父さん、お母さん。このお墓って誰のお墓なの?」


 娘の友梨佳ゆりかがそんなことを聞いてきた。


「このお墓は私のお姉ちゃんのお墓」

「へぇー、そうなんだ。会ってみたかったなぁー。お母さん綺麗だからきっと、お母さんのお姉ちゃんも綺麗だったんでしょ?」

「…………まぁ、そうだね。綺麗だったよ」


 雪奈は友梨佳の質問に誤魔化すように笑みを浮かべてそう答えた。


「じゃあ、お墓参りも終わったし帰ろうか。今日は香織さんが来るからね。早く帰らないと」

「うん!!久しぶりにおばあちゃんに会える!!」


 ニコニコ笑顔を浮かべている友梨佳の手を取る。その反対を雪奈がとりゆっくりと友梨佳のペースで歩く。


 俺と雪奈が付き合ってからかなりの年月が経った。


 その間にいろいろあったりもしたが、俺も雪奈も何事もなく無事順調に交際をし続け結婚するまでに至った。


高校を卒業し雪奈と同じ大学に進学することができたこと、そして雪奈が同棲したいと強く要望したこともあって両方の親の許可を貰い同棲を開始。お互い家事ができるためそこまで苦労することもなく………いや、雪奈が俺に割り振られた仕事までしてどうにか俺をダメ人間にしようとしてきたことは苦労したが、そこまで同棲生活に苦労することもなかった。


苦労したことと言えばバイト先やサークル、そして大学を卒業してから仕事で俺が女性と関わることを酷く嫌っていたことか。


 幸奈とのこともあったから俺も雪奈が他の男性と関わることに多少嫌な気持ちはあるけれど、雪奈は少々………愛情表現が過激というかなんというか。


 高校の時もそれなりだったが、大学生になってから顕著になった。


 愛されていると実感できるから良いが、多少は控えて欲しいななんてたまに思う。俺と話していた女子の目の前でディープキスをされるのは流石にきつかった。


 夜に嫉妬して積極的になるのは俺としてはとてもうれしかったんだけれどね。


 まぁ、なんだかんだありつつ大学を卒業し、プロポーズして結婚し無事に友梨佳が生まれ、五年も経った。


「どうしたの、あなた?何かあった?」

「いや、これまで色々あったなって感慨深くなっちゃってね」

「………そうだね。もしかして、私と結婚したのを後悔してる?」

「いや、そんなこと絶対にないよ。俺は雪奈と結婚したからとても幸せなんだ。それにこんなに可愛い友梨佳がいるんだ。幸せだと思うことは多々あるけれど、後悔したなんて思ったことは今まで一度たりともないよ」

「んふふ、嬉しい。ね、あなた………」

「雪奈」


 と俺と雪奈がいい雰囲気になり顔を近づけていったところで………


「むぅ………」


 と下からじっとこちら不満げな顔で眺めてくる雪奈に気づき、慌てて顔を逸らした。それを見て友梨佳は握っていた手を少しだけ強めに握ってこちらを向くに主張している。


 あぁ………そういえば最近もう一つ苦労していることがあった。


 ちらりと視線を向けると


「お母さんだけずるいなー。私もお父さんとちゅーしたいなぁー」

「あ。あはは」

「ちゅー、したいなぁー」


 くいくいと袖を引っ張ってくる友梨佳。そんな可愛いい天使のような娘に父親が勝てるわけもなく仕方なく膝をついて座り頬にキスをした。


「んふふ、大好き。お父さん」

「俺も好きだよ、友梨佳」

「お母さんより?」

「それは………二人とも同じくらい大好き、だよ?」


 俺がそういうと「おとうさん、いつもそればっかり!!はっきりして」と言われ頬を膨らませる。


 俺がなんていおうか考えているととある場所からの視線にゾクッとして、額から冷汗が垂れる。


 そちらへとゆっくり視線を持っていくと………


「あなた?まだキスされてないんだけれど?友梨佳だけ特別扱いはいけないと思うなー、私」


 ニコニコと笑みを浮かべている雪奈がいた。


 最近の悩みとは………雪奈が友梨佳に嫉妬していることだ。


 幼いからか友梨佳は「お父さんと結婚するんだー」とかつい二人とも熱に浮かされて隙を見せてしまい、友梨佳にキスシーンを見られて私にもしてほしいとかいうので困ってしまう。


 いつかは「お父さんと洗濯物一緒にしないで」と言われる運命にあるのだけれど今はきっとそういう時期なのか俺に好きだとか大好きだとか言ってくれている。


 雪奈には友梨佳もそういう時期なんだよと言ってはいるがどうしても嫉妬してしまうらしい。


「えぇーっと」

「待たされた分の利子と一緒に返済してほしいから、友梨佳みたいに頬じゃなくてここにキスしてほしいかも。それと私にたっぷり愛の言葉をささやいてから」


 と人差し指で唇を指しながら有無を言わさない瞳でそう言い、勿論、雪奈だけではなく友梨佳も一緒になってジィっと見てくる。


 俺は考えた末………


「おばあちゃん、待ってるし早く帰ろうか」


 誤魔化し笑顔を浮かべて二人を置いて先に帰ることにした。


「待って、お父さん。答え聞いてないよ!!」

「あなた、今日の夜はどうなるんだろうね?」


 いろいろあったけれど、俺は今すごく幸せだ。

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 お久しぶりです、かにくいです。


 この話は以上となります。ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。屑先輩と幸菜がどうなったのか詳しく知りたいとか、いろいろあると思いますがひとまずこれで区切りとさせていただきます。


 それと謝罪を。幸奈と雪奈の誤字に関してはミスです。最近、コメントを読んで気づきました。言い訳になりますが作者が天邪鬼なためコメントで話の筋を変えてしまいかねないのでほとんどすべての話を書き終えてからコメントを読むため、気づいたのが最近でした。それと普通に私生活が忙しかったです。本当にすみません。


 コメントでの幸奈の嫌われっぷりとある意味愛されっぷりが凄くて笑っていました。


 最後に告知をさせてもらいます。


『もしヤンデレの高感度が反転して、記憶を保持したまま戻ったら』を出します。興味のある方は是非読んでくれると嬉しいです。


 それでは

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わからせもので最終的に許す展開が嫌いな俺は、彼女を許さない。 かにくい @kanikui

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